©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

公開日、再設定の訳とは

1月23日より、『許された子供たち』『ミスミソウ』の内藤瑛亮監督・脚本を務めた新作映画『ヒグマ!!』が全国公開される。

当初25年11月公開として準備が進められていたが、頻発する熊被害に関係各社との調整を行い、「スリラー描写や都市生活に潜むリスクといったテーマを、観客の皆さまにフィクションとして適切な距離感で受け止めていただける時期について慎重に検討を重ねた」という。

内藤監督もコメントを公開。「熊による被害によって多くの方が傷つき、ご苦労を強いられていることに心を痛めております。一日も早く平穏な暮らしを取り戻されますよう祈っております」と被害を受けた方々に配慮しながら、『ヒグマ!!』の公開延期を受けて、「フィクションと現実の距離感について改めて考えた」と明かす。

「フィクションは現実に起こりうる問題を掬い取り、物語を紡ぎます。観客は主人公を通じて苦しみ、悲しみ、笑って泣いて、絶望に打ちのめされ、希望を見いだし、社会が抱える病理に気づき、自分とは全く異なる立場の人の背景に思いを馳せ、自分だけが抱えていると思い込んでいた痛みが他の誰かも抱えていたと驚き、形容できない感情と出会い、フィクションにしか浄化できない鬱屈とした感情があることを知ります。フィクションがあるからこそ、僕らは正解のない現実とも向き合って生きていける。そう思っています」

鈴木福が闇バイト!?

ここから先は、様々なリスクを覚悟しながら、スタッフ、キャスト、製作委員会が一丸となって真摯に創り上げた映画『ヒグマ!!』を紹介したい。

美大受験生の小山内(鈴木福)は、念願の大学合格を果たすも、特殊詐欺にあった父親が自殺。多額の借金が残され、入学金の捻出が絶望的となった小山内が選択したのは闇バイトだった。参加者は番号で管理され「66番」となった小山内。受け渡しから拉致工作へと内容は次第にエスカレート。受け渡しの宝石を奪って逃走した「28番」(丸井わん)を確保した小山内たちは、監視役「9番」(岩永丞威)の命令で深い山中へ。「28番」の殺害、遺棄を命じられたその時、巨大なエゾヒグマの一撃が!!

支配する側と支配される側という、絶対的な価値観が全ての世界へ踏み込んだ小山内の運命は?

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

主演を務めたのは、”国民の甥っ子”鈴木福。1歳でデビューを果たし、子役時代から親しみやすさと確かな演技力で人気を集めてきた。近年は『仮面ライダーギーツ』、ドラマ『科捜研の女』、映画『カラダ探し THE LAST NIGHT』などに出演。現在情報番組「ZIP!」の木曜パーソナリティを務め、活躍の場を広げている。

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

そして、鈴木演じる小山内とタッグを組むことになる凶暴な「28番」に円井わん。映画『獣道』、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』、『KONTORA-コントラ-』など着実に評価を高め、現在はNHK連続テレビ小説「ばけばけ」に出演中だ。本作では初の本格的なアクションに挑戦。空手の経験を活かし、野性味あふれる演技で小佐内と共に生存闘争に身を投じる。

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

小山内の母親に『バッシング』『偶然と想像』『サユリ』の占部房子。『孤狼の血 LEVEL2』、Netflixドラマ『離婚しようよ』の宇梶剛士が謎の闇狩猟者を不良感性全開で演じている。

また、公開を前に情報解禁となったのが闇バイトの指示役エンジェルにはんにゃ・金田哲。映画『ヘルドッグス』、NHK大河ドラマ『光る君へ』などに出演し、俳優としても存在感を高めている。

G指定となった映画『ヒグマ!!』

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

内藤監督といえば、作品の世界観を表現する為の容赦なき描写で知られている。今回の『ヒグマ!!』は意外にもG指定。しかしぬるい描写に甘んじた訳ではない。

内藤監督が公式インタビュー(インタビュアー:イソガイマサトさん)で「『神々の復讐』『慟哭の谷』等のヒグマによる獣害を記録した文献を読んで、クマに襲われた人たちの惨劇が想像以上に凄絶だったので、そこは映像でちゃんと表現したいと思いました」と語るように、期待を裏切らない行き届いた残酷描写が造形で行われている。

『トマホーク ガンマンvs食人族』(15)のS・クレイグ・ザラー監督の造形を堂々と見せるスタンスが好きという監督。ヒグマについては8、9割が造形で表現されており、シーンに応じて、1人が演じる二足歩行のヒグマと、獅子舞のように2人が演じる四足歩行のヒグマを使い分けたという(※公式インタビューより)。

『ヒグマ!!』では、造形によって残酷でありながら一周回って笑いさえ生み出している。また、過去の傑作ホラー映画やSFホラーなど数々のオマージュカットも盛り込まれ、アトラクション的モンスターパニック映画の仕上がりに。

特殊メイク・造形を担当したのは映画『シン・ゴジラ』、『シン・仮面ライダー』、『宝島』の百武朋。『先生を流産させる会』から全ての内藤作品に参加してきた。

VFXスーパーバイザーに映画『木の上の軍隊』、Netflixドラマ『地面師たち』のオダイッセイ。内藤作品は映画『毒娘』に続いての参加となる。

現実を直視させる一撃

一歩間違えると自分にも起こり得るかも、というリアリティを支えるのは、鈴木の演技だ。仲が良い両親の元、自作のオンラインゲームを公開して才能を発揮している明るく気の良い好青年。しかし美大の入学金の他、合格祝いにハイスペックのゲーミングPC(廉価版とは言え)が軽く出せる実家の経済状況なのか想像したこともないのん気さは、小山内=幼いのダブルミーニングかと思わせるほど。

そんな彼が切羽詰まって飛びついた闇バイト。初めての取引に向かう小山内を捉えたショットでは、彼の後ろで早送りのように背景が飛び去っていく。その浮遊感は、ヤバいと焦りながらもどこか現状認識ができていない小佐内の甘えと現実の解離として的確に表現されている。

丸井が演じる 「28番」は、男性を圧倒する身体能力を誇る。しかし 後にやはり小山内と同様に現実から逃避している面も明らかになる。

内藤作品名物の嘔吐のシーンは、現実の実感に乏しい 登場人物たちを身体性を持って現実を突き付ける表現として働いている。

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

闇バイト参加者として内藤監督の前作『許された子供たち』で主演を務めた 上村侑が「84番」、住川龍珠が「75番」として出演している。彼らのあり得たかも知れない未来としてみるのも一興だ。

監視役「9番」から「28番」の腹を裂けと一喝され、武器を手にする「75番」。逆らうと自分が殺されるという極限状況で思考を放棄する生々しいシーンとなっており、特に加害者側を記号で描かない内藤作品の魅力が現れていた。

本作は、佐藤圭一朗プロデューサーから内藤監督に「闇バイトがヒグマに襲われる映画」を提案されたことから始まったという。

©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会

モンスター映画やホラー映画、いわゆるジャンル映画の魅力は、社会的不安や、人間の狡猾さも怖さも弱さをケレンたっぷりに描かれること。そしてそこには人生をサバイブする教訓のようなものが微量含まれている。

人生において役立つ時が来るかどうかは分からない。取り敢えずひとりでも仲間とでも、ワーワーギャーギャーと観るのが正しい楽しみ方だ。観客の皆さんの生還を祈る。

(Text:デューイ松田)

映画『ヒグマ!!』作品情報

出演:鈴木福 円井わん 岩永丞威 上村侑 住川龍珠 占部房子 清水伸 / 宇梶剛士
監督・脚本:内藤瑛亮 主題歌:「knuckle duster」the bercedes menz
企画・プロデュース:佐藤圭一朗 プロデューサー:伊藤聖 三宅亜実 
音楽:有田尚史 撮影:伊集守忠 照明:金子康博 録音:高島良太 美術:小林楽子 編集:冨永圭佑
音響効果:佐藤恵太 VFXスーパーバイザー:オダイッセイ 特殊造形・メイクデザイン:百武朋 スタントコーディネーター:吉田浩之 後藤健 
スタイリスト:キクチハナカ ヘアメイク:高橋亮 助監督:中村洋介 制作主任:駒宮永恵
製作幹事:NAKACHIKA PICTURES VAP 制作プロダクション:Lat-Lon 配給:NAKACHIKA PICTURES
©2025映画「ヒグマ!!」製作委員会
公式サイト:https://higuma-movie.jp
公式X: https://x.com/HigumaMovie @HigumaMovie 
公式Instagram:https://www.instagram.com/higuma_movie  @higuma_movie
公式TikTok: https://www.tiktok.com/@higuma_movie @higuma_movie