『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)や、現在もネットフリックスで配信中の『ガス人間』(片山晋三監督)のエグゼグティブプロデューサーを務めるヨン・サンホ監督が『新感染 ファイナル・エクスプレス』以前から構想していた最新作『顔 -かお-』。商業映画で注目を集めたヨン・サンホ監督が原点に帰り、自身のグラフィックノベルをインディペンデント(独立系)映画として実写化に挑戦。これまでの作品で監督と縁のあった俳優が顔を揃え、予算も撮影期間も限られた中で制作され、第50回トロント国際映画祭「スペシャルプレゼンテーション」部門のワールドプレミアで大反響となり、韓国を代表する映画賞、青龍映画賞では作品賞、監督賞をはじめ10部門でのノミネートを果たした。

8月28日(金)の公開を前に7月29日都内で試写会が開催され、ヨン・サンホ監督と主演のパク・ジョンミンが来日し舞台挨拶に登壇した。

(写真左より)穂志もえか、主演のパク・ジョンミン、ヨン・サンホ監督

大きな拍手に迎えられて登場したヨン・サンホ監督とパク・ジョンミン。
監督が「こんばんは、私は韓国映画監督ヨン・サンホです」と日本語で挨拶。続いてパク・ジョンミンが、前日の熊本での地震に触れ「日本に悲しいニュースが流れていると聞きました。皆さんぜひ力を出してください。僕たちも声援を送り続けたいと思います」と気遣いをみせた。

自身が発表したグラフィックノベルが原作となっている本作の制作についてヨン・サンホ監督は「この作品は漫画という形態で発表した、その時規模の大きな作品に取り組んでいて、このような大きな規模の作品で作ることはできなかった。その時に『ガス人間』の片山晋三監督にお会いして、監督の以前の作品をみていたら、小さな予算にも関わらず立派なものを作っていて、それだったら自分も低予算の映画を作ってみようと。それからジョンミンに「一緒にやろう」連絡をしたところ快く応じてくれたので、今この場に立っています」と映画化の経緯を明かした。


今回、初めて一人二役の難役に挑んだパク・ジョンミンは「俳優というのはそのキャラクターをうまく表現しなければいけない。そのために悩むのは常に同じ悩みだと思う。この映画で特に大変だったことをあえていうなら、短い時間の中で、二人の人物を行ったり来たりしながら演じなければならなかったこと」と振り返った。

また、本作では視覚障害を持つ篆刻家(てんこくか)も演じており役作りのため、時間の無い中3日ほどハンコ彫りの技術を学んだ。現場では監督や他の出演者のハンコを作ってプレゼントした心温まるエピソードも披露したが、「彫ってあげたのはよかったのですが、監督の名前をヨン・サンホと彫るところをヨン・ホサンと間違えて彫ってしまいました」と明かし、監督も「一番やりたくない契約の時に使います」と返し、会場の笑いを誘った。

ここで、ハンコを題材にした本作にちなんで、印章彫刻師の伊藤睦子さんが、監督とパク・ジョンミンの似顔絵の入った手彫りのハンコをそれぞれに贈呈した。思わぬプレゼントにパク・ジョンミンは「家宝にします。今度お店にも行きます」と感激した様子。監督も「普段あまり喜ばないほうですが、これは嬉しいです。作品の契約に使います」と嬉しそうに話した。

印章彫刻師の伊藤睦子さんのプレゼントに驚くヨン・サンホ監督。

さらにこの日は「SHOGUN将軍」などで活躍の女優・穂志もえかが駆けつけ花束を贈呈。
「私にとって韓国映画は特別で何度も衝撃を受けて、こういう作品に出てみたいって思い続けているので、今日は来ることが出来て光栄です」と話し、作品について「見終わった後動けない時間がありました。監督の作品は貧困とか差別をまっすぐ見つめて、認めて描きぬく力を感じるそれが映画の力強さとして圧倒された。また、どんな悪そうなキャラクターにも愛情が感じられ、すべてのキャラクターの立場を想像することが出来た」と感想を語った。


監督は「今日はここに来てから圧倒されっぱなし、ハンコのプレゼントも、花束の大きさもそして、今の映画の感想にも圧倒された。本当に映画をよく見てくださってありがたい。これからも一生懸命頑張って、良い映画をつくりたい」と力強く語った。


さらに、穂志から「韓国の俳優は学び続けている印象がある、どのように練習を続けているのか」との問いに、パク・ジョンミンは「俳優によって違うと思うが、僕は日頃からやらないほう」としたうえで、「俳優にとって重要なのは感情の幅を広く使う事が出来るよう、いろいろな感情を自分自身で身に着けておくこと。人間が人生で感じられる感情には限界があると思うので、映画や本など日頃からみて、様々な人の視点からいろいろなものを見るよう心がけている。あくまでも言い訳ですが・・・」と気まずそうに答えた。

さらに「韓国には本当に一生懸命に努力する俳優さん沢山いらっしゃるので、今その質問を受けて自分が恥ずかしくなりました。明日から練習します」とユーモアを交えて返し、会場の笑いを誘うなど、終始和やかで楽しいイベントとなった。上映後には監督とパク・ジョンミンによるティーチインも行われ、盛沢山の内容にファンにとってはとても嬉しい1日となった。

(レポート&撮影:小名美 比呂)