歌が生まれる瞬間に立ち会う至福!映画「シンペイ~歌こそすべて」9月27日(土)第七藝術劇場にて再公開!
「シャボンだま とんだ
やねまで とんだ
やねまで とんで
こわれて きえた」 (作詞:野口雨情、作曲:中山晋平)
中山晋平(中村橋之助)の伴奏で子どもたちと共に佐藤千夜子が高らかに歌い上げる。会場の野口雨情(三浦貴⼤)の目から亡き子を想う涙があふれる。
野口雨情の詩に中山晋平が音律を授ける。歌が生まれ、歌い手が聴く人の心を激しく突き動かす。「シンペイ~歌こそすべて」は、時代を越えてそんな幸せな瞬間に立ち会える映画だ。
童謡、歌謡曲、⾳頭、⺠謡まで幅広いジャンルの約 2000 曲を残した作曲家・中⼭晋平(1887〜1952)。その18歳から65歳までの⽣涯が彼の⾳楽とともに綴られる。

中山晋平の代表的ヒット曲を網羅
企画・プロデュースの新⽥博邦は「⼀般的な伝記映画は、主⼈公のある時代を切り取って描くものだが、『シンペイ』では晋平の時代ごとに作られた歌を、全曲登場させたかった」と語る。
その意志の下、本作には『シャボン⽟』『カチューシャの唄』『てるてる坊主』『ゴンドラの唄』『アメフリ』『船頭⼩唄』『⾬降りお⽉』『波浮の港』『あの町この町』『出船の港』 『東京⾏進曲』『東京⾳頭』といった、中山晋平を知らなくても誰もが一度は聴いたことある童謡、歌曲、歌謡曲、⺠謡といった幅広いジャンルの珠玉の名曲が登場する。
中山晋平の音律の特長はヨナ抜き音階に、伴奏は西洋和声を基盤にしており、「日本人にとっての心地よさ」と「西洋的な近代感覚」を共存させたことにあるという。
『カチューシャの唄』における囃子言葉の追加。
『東京行進曲』の言葉をめぐる創作の裏側など、発見と興奮に満ちた場面が次々に展開する。
また、『ゴンドラの唄』誕⽣の瞬間は、ピアノと笛が競うように変化していく楽曲に心を踊らされる。

中山晋平を演じたのは歌舞伎界のホープ、中村橋之助。貧しいながらどこか育ちの良さを感じさせる誠実でおおらかな人柄に、音楽への熱情を秘めた晋平を体現した。
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仕事仲間で深い友情を結ぶ作詞家の野⼝⾬情に三浦貴⼤。時には決別も辞さず信条をぶつけ合う作詞家・⻄條⼋⼗を渡辺⼤が演じている。
本作を支えるのは約30曲の音楽。新規録音にこだわり、作曲家・田中和音(東京エキゾチカ)がアレンジを担当した。現代を生きる人にも心惹かれる仕上がりとなっている。また、佐藤千夜子を演じる真由子の歌唱は情感豊かで『東京行進曲』『シャボン⽟』『砂山』『⾬降りお⽉さん』など観客を当時の空気へと誘う。

真由子は⽗・津川雅彦の監督作品『寝ずの番』(06)、『次郎⻑三国志』(08)、『旭⼭動物園物語 ペンギンが空をとぶ』(09)等に出演。2019年から 「東京エキゾチカ with 真由⼦」として歌⼿活動を⾏っており、その歌唱力を本作で遺憾なく発揮している。
中山晋平にシンパシーを感じた神⼭征⼆郎

メガホンを取ったのは、『ハチ公物語』(87)、『遠き落⽇』(92)、『ひめゆりの塔』(95)などで知られる巨匠・神⼭征⼆郎。2000年に野口雨情の生涯を描いた舞台『枯れすすき』(作:新藤兼人)の演出をしたことで、自分と同じく18歳で上京した中山晋平にシンパシーを感じ、その人生に興味を持った。子どもの頃から歌が好きで、歌⼿に憧れた時期もあったという神山監督。企画・プロデューサーの新田博邦よりオファーを受け「これは私の企画だ」と思ったという。
女性たちの雄弁な余白
本作では晋平の人生に影響を与えた女性たちが幾人も登場するが、印象深いのは静かな強さを見せた女性たちだ。母・ぞうは夫を亡くしながら三人の息子を育て、息子の才能を信じ続けた。土屋貴子の控えめながら芯のある演技が胸を打つ。
また、若かりし頃の晋平が、書生として住み込んだ先の主人・島村抱月(緒形直人)を訪ねて来た松井須磨子(吉本実憂)が訪問したシーンにおける、抱月の妻(⾼橋由美⼦)の一瞬の複雑な反応。
後年、入院した妻・敏子(志⽥未来)を見舞った晋平が辞そうとする際の態度で何かを察した敏子の表情。
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本作は3時間分の脚本を2時間に刈り込んでおり、1つ1つのエピソードが大変短いものとなっているが、それが故にわずか1つの表情で立ち上がる夫との関係性と女性たちの矜持が余白に感じられる。それは夫の心変わりに騒ぎ立てないことを矜持とするしかなかった時代の女性の姿を浮き彫りにしている。
観客を引き込むロケーション

本作のもう一つの見どころは、明治末から昭和の初期という時代設定に観客を引き込むロケーションの素晴らしさだ。劇中の東京シーンのほとんどは長野と岐阜で撮影された。神山監督は30本以上の作品で監督を務めており美術にも造詣が深く、信州に別荘を所持していることもあり、「フィルムコミッションの方よりも詳しい」ロケ場所についての知見が大いに発揮されたという。信州大学や上田城址公園、旧長野県庁舎などが明治末から昭和初期の景観を再現。映像に息づく街並みや風景は、音楽と並ぶ大きな魅力だ。
中山晋平を通して描く「音楽と時代」

本作は中山晋平の生涯を通して描かれた「音楽と時代」の映画ともいえる。
大衆の気分を感じ取りながら、ヨナ抜き音階を特長とする日本的な歌曲の創作に挑戦し続けた中山晋平。大正、昭和のショービジネスの裏側や作詞家と作曲家の攻防、日本初のタイアップ曲の登場など、昭和を知らない世代にも楽しんでもらえるトピックが次々に登場する。晋平が心血を注ぎ、作り上げた名曲の数々を、9月27日(土)から大阪・十三にある第七藝術劇場、10月3日(金)からイオンシネマ須坂でぜひ堪能して欲しい。
(Text:デューイ松田)
公開情報
劇場:第七藝術劇場
日程:9月27日(土)~10月3日(金)まで
舞台挨拶:9月27日(土) 上映後
登壇者:神山征二郎 監督/土屋貴子/新田博邦(プロデューサー)
劇場:イオンシネマ須坂
日程:10月3日(金)~ ※グランドオープン上映
映画『シンペイ~歌こそすべて』作品情報
キャスト:中村橋之助・志⽥未来・渡辺⼤・染⾕俊之・ 三浦貴⼤・中越典⼦・ 吉本実憂・⾼橋由美⼦・酒井美紀・真由⼦・⼟屋貴⼦・⾠⺒琢郎・尾美としのり 川﨑⿇世・林与⼀・緒形直⼈
ナレーション:岸本加世⼦
企画・プロデュース:新⽥博邦
監督:神⼭征⼆郎
脚本:加藤正⼈、神⼭征⼆郎
⾳楽:久⽶⼤作 撮影・編集/⼩美野昌史
照明:淡路俊之 録⾳:治⽥敏秀 美術監督:新⽥隆之 助監督:菱沼康介
装飾:⼯藤秀昭
エンディングテーマ︓『ゴンドラの唄』上條恒彦
後援︓⻑野県 特別後援︓公益社団法⼈ ⽇本作曲家協会
協⼒︓中野市、上⽥市、須坂市、松本市、⻑野市
製作︓「シンペイ」製作委員会
配給︓シネメディア
2024 年/⽇本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/127分
©「シンペイ」製作委員会2024
公式サイト︓http://shinpei-movie.com/
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