劇場版「神戸~都市が囁く夢~」

1960年(昭和35年)のピーク時、81館。
これが何の数字かピンと来るだろうか。

答えは、神戸の劇場の数だ。
当時は新開地本通りだけで20館、三ノ宮・元町26館、東神戸16館、西神戸19館の劇場があったという。

そんな知らざれる神戸と映画の150年もの歴史にスポットを当てたのが、劇場版「神戸~都市が囁く夢~」だ。

勝海舟の神戸海軍操練所の開設、
キネトスコープやシネマトグラフの輸入、新開地の勃興、
神戸の大空襲、闇市からの復興、阪神淡路大震災を経て
コロナ禍に至るまでの神戸市の歴史。
各年代の映像や写真、文書などの豊富な資料、名作映画の名場面の数々に、ドラマパートを加えて描かれている。

劇場版「神戸~都市が囁く夢~」

監督は、地元神戸で映画制作集団「神戸活動写真倶楽部・商会 港館」を30年間主催してきた衣笠竜屯さん。
脚本・プロデューサーを務めた川村正英さんにお話を伺った。

2021年、元町映画館の10周年を記念したオムニバス映画「きょう、映画館に行かない?」のためにの脚本を書いたが、49ページのボリュームに。これは映画の尺に換算すると40分もの長さになる。短編という条件に合わせて内容を削ぎ落し、18分の短編版として完成させたのが「神戸~都市がささやく夢~」だった。

2023年には、この時の素材を40分の長編版として再編集し「神戸~都市が囁く夢~」として、こうべまちづくり会館で上映を行っている。


2021年の短編版の公開後に衣笠竜屯監督より、「稲垣足穂・横溝正史・小松左京・筒井康隆などの神戸に関する文学の内容も追加したい」と要望が。この文学パートの追加により、脚本のページ数は80枚超えに。

劇場版「神戸~都市が囁く夢~」

そして2022年、姫路市網干区の旧山本家にてヒロインのmayuが袴姿で演じる文学パートの追加撮影を行った。ナレーションや写真などの素材を追加し、77分の劇場版「神戸~都市が囁く夢~」が完成した。

この劇場版は、阪神淡路大震災から30年の節目となる2025年に新開地の映画館・パルシネマしんこうえんにて、1月16日、17日の2日間限定で上映。平日にも関わらず、大勢の観客が来場し好評を得たという。

川村さんは「短編版の上映から約4年。劇場版「神戸~都市が囁く夢~」が元町映画館に帰って来ます。振り返ると、コロナ禍である2020年の秋頃より構想を練り始め、2024年の暮れに完成しました。4年と半年の時間を費やしたことになります」と語る。

劇場版「神戸~都市が囁く夢~」

観客の皆さんに一番観てほしいポイントとしては、

「本作は、神戸の街の歴史を、かつてそこに存在した映画館の歴史という新しい観点でまとめたドキュメンタリー風の作品です。神戸の銀幕を飾った、在りし日の映画館の姿を想い起こすと同時に、大空襲と震災を乗り越えて歩み続ける神戸の都市の姿を見て頂けましたら幸いです」

劇場版「神戸~都市が囁く夢~」撮影の様子

公開は、6月10日(火)~4日間、仕事帰りに立ち寄りやすい19:00からの上映スケジュールだ。オムニバス映画「きょう、映画館に行かない?」で上映された短編版ではやや唐突に見えた歴史的展開が今回の劇場版ではじっくり描かれ、当時の状況がより重層的に伝わってくる。短編版を観たという方も、ぜひ元町映画館に足を運んで頂きたい。


上映情報

■劇場版『神戸~都市が囁く夢~』(2024年/77分/16:9/カラー/2ch)
監督:衣笠竜屯
企画・製作・配給:神戸活動写真商会 港館

■劇場
元町映画館/〒650-0022 神戸市中央区元町通4丁目1-12 電話:078-366-2636
https://www.motoei.com/

■上映日程
2025年6月10日(火)~13日(金) 各回19:00(~20:30)

■公式ホームページ
https://kobe.minatokan.com/

■公式X(旧ツィッター)
https://x.com/kobesasayaku

■ストーリー
世界が流行病に覆われている毎日、神戸の一隅にある映画館を訪れた主人公(高峰節子:mayu)はそこで不思議な映画を観る。それは、神戸という都市と映画の過ぎ去った日々の物語。神戸という都市が憧れ恋をしたのは何だったのか?
当時の貴重な写真と映像のストック・フッテージによる、事実を元にした歴史フィクション映画。

■キャスト
主演 mayu(映画『みぽりん』等)、助演 西出明(声)

■スタッフ
撮影:衣笠竜屯、佃光
編集:衣笠竜屯、金本真吾
衣装:mariko、冨本康成
イラスト:衣笠弓弦音
音楽:shima
脚本・プロデューサー 川村正英

■ロケ地
兵庫県姫路市網干:旧山本家住宅
神戸市内(磯上公園、浜手バイパス、神戸市立博物館、シップ神戸海岸ビル、商船三井ビルディング、JR三ノ宮駅コンコース、阪急三宮駅など

■協力
神戸フィルムオフィス、姫路フィルムコミッション、網干歴史ロマンの会、ジュンク堂書店 三宮店、まち活拠点 まちラ

■資料・写真提供
元町映画館
神戸映画資料館
パルシネマしんこうえん
オーエス・シネブラザーズ映画株式会社
神戸アーカイブ写真館
ジャパンアーカイブズ
神戸市文書館
神戸観光局(港湾振興部)
神戸映画サークル協議会
神戸大学 大学文書史料室
(株)神戸新聞社
(株)毎日新聞社
(特)新開地まちづくりNPO
まち活拠点 まちラボ
インタナシヨナル映画株式会社
筑摩書房
角川書店
中央公論新社
角川春樹事務所
キネマ旬報社
小松左京ライブラリ
アスク・ミュージック
安井喜雄
木村卓司
青山大介

(Text:デューイ松田)