映画祭11日目の22日(土)。“コンペティション”部門の作品上映も今日が最終日となり、ロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフ監督の『太陽に灼かれて 2』とハンガリーの気鋭コーネル・ムンドルッツォ監督の『テンダー・サン:ザ・フランケンシュタイン・プロジェクト』が正式上映。
“ある視点”部門も今日で閉幕。アワード・セレモニーに続き、この部門の最高賞である“ある視点賞”受賞作を上映した。

◆授賞式を明日に控えた22日、マルシェ(見本市)関係者がごっそり去り、上映作品も減って、のんびりムードに!

 朝の8時半から『太陽に灼かれて 2』を鑑賞。ニキータ・ミハルコフが監督&主演し、1994年にカンヌのグランプリを受賞した『太陽に灼かれて』の続編で、出品が決まった段階から話題を集めていた上映時間2時間半の大作だ。前作は1930年代のスターリンの大粛清をテーマに、激動の時代に引き裂かれた男女の悲劇を描いた人間ドラマだったが、続編は、第二次世界大戦下を舞台にして描いた同じ登場人物たちの、その後の物語。ニキータ・ミハルコフ監督自身は、あのプーチンと親しく、政界入りを噂されている御仁だが、近年作『12人の怒れる男』でも気を吐いているし、前作『太陽に灼かれて』は名作中の名作だったので、とても期待して見たのだが……。巨費を投じ、自分が演じる役ばかりをフィーチャーしたワンマン映画になっており、唖然としてしまった。前作であれほど輝いていたオレグ・メンシコフも精彩がなく、ラストで、“最終章のパート1の終わり”というテロップが出たことにもビックリだ。
 お昼の12時からは『テンダー・サン:ザ・フランケンシュタイン・プロジェクト』を鑑賞。2008年のカンヌで『デルタ』が国際批評家連盟賞を受賞したハンガリーの期待の星コーネル・ムンドルッツォが監督と出演を兼ねたサスペンスドラマで、東欧の独特なムードに満ちた映像が実に印象的な作品だった。
 14時からはクロージング作品『ツリー』のプレス用試写を鑑賞。オーストラリアの作家ジュディ・パスコーの児童書「パパの木」をフランスのジュリー・ベルトゥチェリ監督が全編英語で映画化。壮大なオーストラリアの自然をバックにして描いた家族ドラマで、夫に突然死され、4人の子どもたちとともに庭の木を通して夫の声を聞く妻の役をシャルロット・ゲンズブールが熱演していた。
 
◆フランスのクレール・ドゥニ監督が審査委員長を務めた公式部門の第2カテゴリー“ある視点”部門が閉幕!

 19時45分から“ある視点”部門の授賞式が行われ、それに引き続き受賞作品『Ha Ha Ha』の上映が行われた。審査員を務めたのは『パリ、18区、夜。』『ネネットとボニ』『ガーゴイル』で知られるクレール・ドゥニ監督ら総勢5名。受賞結果は以下の通り。

●ある視点賞
『ハ ハ ハ』:ホン・サンスー監督(韓国)
 ソウルを離れ、カナダへ移民する決心した映画監督が、友人の映画評論家と会って酒を飲む。互いに海辺の町トンヨンに旅行したことがあることを知った2人は、それぞれトンヨンでの出来事を語っていくと……。独特の切り口で男女の機微を描く韓国の俊英監督の人間ドラマ。

●審査員賞
『オクトーバー』:ダニエル&ディエゴ・ベガ監督(ペルー)
 質屋を営む孤独な男クレメンテは、人とかかわることを嫌っていたが、捨て子の赤ん坊の面倒を見る羽目となり、隣人の独身中年女性ソフィアを頼ったことで……。淡々とした展開にほのかなユーモアを交えて描いた疑似家族物語。

●優秀演技賞
『ザ・リップス』の3女優、エヴァ・ブランコ/ヴィクトリア・ラポソ/アデラ・サンチェス:イヴァン・ファンド監督&サンチアーゴ・ロザ監督(アルゼンチン) 
 今は誰も住んでいないサンタフェの寂れた地区にやってきた3人の女性が、廃墟と化した病院を拠点にして町の機能を再生させようとするが……。超低予算のアート映画。
(記事構成:Y. KIKKA)