ハンチントン舞踏病の保因者でありながら、遺伝子解読という神の“楽譜”に取り組む女性リン・マグヌソン博士を中心に、遺伝子が生み出す科学の進展と、彼女を取り囲む人々との間に生まれる人間味あふれるストーリーを描いた秀作。

舞台挨拶には、リン・マグヌソン博士を公私ともに支えるベニーを演じ、本作の脚本も手がけたジョナサン・ヤングさんが登壇した。ジョナサン・ヤングさんはキム・コリアー監督、そして演劇学校をともに卒業した仲間とエレクトリック・カンパニー・シアターを設立。本作は舞台でも上演されており、科学の善悪を問うた高尚なテーマと普遍的に人々が感じている問題を扱っている作品でもあるため、数々の賞に輝いている。
『ザ・スコア』はカナダで行われた遺伝子会議に出席していた、マイケル・ヘイドン氏から、遺伝子をテーマにした舞台を作ってほしい、と依頼されて製作にあたった、とのこと。映画で扱われたフランスの研究所に研究情報を盗まれた、という事件は実際に起こったことでもあったそうだ。「製作にあたり情報収集のために、彼にはたくさんの協力をしてもらいました。彼の協力のおかげで素晴らしい作品をつくることができました。ただ、低温室での愛のいとなみをするシーンはフィクションです(笑)。」と会場をわかせた。
また、監督のキム・コリアーさんはジョナサン・ヤングさんのパートナーでもある。「彼女にとっては初めての長編でした。3週間という短い製作期間でありながら、クールにスタッフをリードできる素晴らしい監督です。」と、彼女に対する暖かい眼差しを感じるコメントをした。

Q:「人類に希望をもたらす一方で悪をももたらす科学の発展について、ご自身の考えをお聞かせください。」
A:「大変難しい質問だと思います。私たちが作り上げようとしたキャラクターは自分を遺伝子で定義しようとする女性でした。リンは人々に苦痛をもたらす病気を克服するために勉強しました。しかし、一方で彼女は彼女自身の向き合わなくてはいけない真実から目を背けていました。本作のテーマとして自然の力や神秘に畏敬の念を持つこということがいえると思います。そして私は誰なのか?という問いに対してバランスを保つということ重要だと考えました。ラジオでリンが問われていたように科学に対してだれが責任をとるのか、誰の命が生きるに値するのか、しないのか、という問題は科学に関わる人々だけでなく、私たちも考えるべき問題だと考えています。」

Q:「映画には、ロック・クラッシック・現代舞踊など様々なものが取り入れられていて、非常に面白かったです。」
A:「音楽まで想いを馳せていただいてありがとうございます。タイトルが楽譜という意味なので、音楽がどのように影響するのか、非常にバランスの微妙な問題でした。私たちは、舞台上では意外性に重点をおいているので、映画でも音楽をミックスしました。また、歌詞が入っている曲は舞台からもってきたものです。舞台では、主人公がお風呂に入ってくるシーンで、配達人が歌っていた曲を流しました。チュチュをきたダンサーも登場します。映画ではそのシーンは変更しました。」

Q:「列車から降りるお母さんが笑顔を浮かべていたので、リンの未来に希望を感じました。」
A:「彼女の笑顔で、暗に「人生は病によって定義はされない。」ということを表現できたと思います。ハンチントン舞踏病は神経が劣化してコントロールできなくなる病気です。私たちは映画にあえてダンサーを登場させ、意思で体を動かせる人と動かせない人を提示しました。映画に登場するカウンセウリングをうける男性は、実際ハンチントン舞踏病の患者さんです。」

Q:「次回作は決定していますか?」
A:「まだはっきりとは決まっていないですが、2つの脚本をエグゼクティブ・プロデューサーに提出しているので、今返事待ちをしているところです。」

(ハヤシ カナコ)

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