ヒーローになりたかったのではない。
ヒーローになるしかなかったのだ。

映画『力道山』。かつて描かれたことのない人間・力道山に迫った物語。
これは、自らの運命を切り拓こうとした一人の男の無垢なる生き様と彼を支えた人々の人生を描いたドラマである。
彼が強くなろうとした理由。強くなくてはいけなかった宿命。いつもカメラに向かって見せる笑顔の奥に、彼が見つめていた夢。
力道山の死後41年を経た今、我々は初めてスクリーンの中で知ることになる。

本日、今年の東京国際映画祭クロージングを飾る、韓国と日本の合作映画『力道山』の舞台挨拶が盛大に行われ、会場には沢山の観客が押し寄せた。
会場に姿を見せたのは主役の力道山を演じた韓国No.1の実力派俳優ソル・ギョング、力道山の妻を演じた中谷美紀、後見人役の藤竜也、マネージャー役の萩原聖人、監督のソン・ヘソン、プロデューサーのチャ・スンジェと河井信哉。

彼らが舞台上に次々と登壇すると会場ではスタンディングオベーションで歓迎する客・客・客!!
監督&キャストは皆和やかなムードで互いの顔を見合い、微笑みながらそれぞれ本作についてこう語った。

ソン・ヘソン監督:このような素晴らしい場にお招き頂きありがとうございます。この作品をこの東京国際映画祭のクロージング作品として皆さんに観て頂くのは大変喜ばしい事です。力道山は日本では伝説の人物として物語られていると思いますが、私はその伝説の中で人生を全力で駆け抜け、時代を席巻しながら生き残るために戦った1人の男を描きたいと思ったのです。本作には故・橋本真也さんも出演していますが、天国にいる橋本さんもきっと本作を気に入ってくれる事でしょう。

ソル・ギョング:私は韓国人ですが、リアリティを出すために日本語の特訓をして、ほとんど日本語で撮影をしました。撮影場所も日本です。とても良い経験ができたと思います。1つの時代を熾烈に生きた1人の男に、皆さんも心に何か通じるものがあってほしいと願います。

中谷美紀:客観的に見て力道山はとても魅力的で、ソル・ギョングの演技も魂がこもっていて素晴らしかったです。でも、個人的には綾(中谷の役名)のように耐え忍ぶような生活は勘弁です(苦笑)。むしろ綾のような人が私には必要なのです!(笑)

萩原聖人:プロレスファン、そして映画ファンとしてこの作品に出会えて本当に幸せでした。

藤竜也:韓国では、日本と違いどんなに撮影が忙しくても食事を大切にするんです。温かい食事はとても嬉しかったですねぇ…。食事を大切にする国と、食事を粗末にする国、そういった事を感じましたね(笑)。力道山は、私にとってもとても憧れと感動を抱いた人物です。あれ程、日本人に夢と力を与えてくれた人はいません。それが、また日本人ではないという事が皮肉と言いますか…。韓国と日本ではこれまで色々な問題もありましたが、こうやって素晴らしいスタッフやキャストと共にいられる事はどれだけ幸せな事かとしみじみと感じます。

1言ずつコメントを終えた監督&キャストの前に、スペシャルゲストが登場し会場全体を驚かせた。
その人物とは百田光雄。力道山の実の子で全日本プロレスの旗揚げに参加した人物でもある。
「父も草葉の陰で喜んでいるでしょう。皆さんもぜひこの作品を楽しんで観ていって下さい。」と挨拶を交わし、監督と力道山を演じたソルに花束を贈呈した。

41年後によみがえった力道山。
ヒーローである前に、1人の人間だった力道山の姿が今ここに…

※映画『力道山』は、2006年3月4日、テアトル系、ワーナー・マイカル・シネマ、ティ・ジョイ他にてロードショー!!

(菅野奈緒美)

◇作品紹介
力道山

■東京国際映画祭
http://www.tiff-jp.net/