既成の概念にとらわれない強烈な作家性を持った作品を紹介する映画祭として内外より高く評価されている東京フイルメックス。この11月から開催される映画祭で、第6回を数える“第6回 東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2005”のラインナップ会見が、9月28日に東京国立近代美術館 フィルムセンターにて開催された。今回もまた、アジア地域を中心に世界各国から選りすぐりの34作品が、1月19日より9日間にわたって上映される。

 アジア地区の才能溢れる新鋭作家の作品を、国際審査員5名が審査を行い最優秀作品賞、審査員特別賞を選出する“東京フィルメックスコンペティション”は、ウィルソン・イップ監督の『SPL<殺破狼>(原題)』、昨年のコンペで審査員を務めたムン・ソリの主演作でもある『サグァ』、今年のカンヌでも話題を呼んだ小林政広監督の『バッシング』等9本の作品がエントリーされている。林 加奈子ディレクターは、「この人でなければ撮れないだろう9本を選んだ。人を探したり、謎を追い求めたりする作品が多く、それらは画面に見えないものを、画面には見せないままで、どう伝えたらいいかを、届いた時の受けての想像力まで計算しながら綿密に撮っている、力強さあふれた作品が揃った。9作の朝鮮を味わって欲しい」とコメント。

 地域には拘らず作家性の高い新作を上映する“特別招待作品”では、ホウ・シャオシエン監督の『スリー・タイムズ(仮題)』、廣木隆一監督の『やわらかい生活』、アモス・ギタイ監督がナタリー・ポートマンで撮った『フリー・ゾーン』等7作品が上映される。今年の特別招待作品に関して市山 尚三プログラム・ディレクターは「イスラエル人のアモス・ギタイ監督がレバノンで撮った『フリー・ゾーン』等、国境を越えた映画製作が行われた作品が多数見られる」とコメントした。

 この他、特集上映企画として、日本映画監督特集は、今年西端百年を迎えた鬼才・中川信夫監督の特集上映“生誕百年特集 映画監督 中川信夫 -地獄のアルチザン-”、国際的な映画製作が行われていたスイス映画を特集する“映画大国スイス 1920’s〜1940’s”が行われる。中でも清水宏、内田吐夢に続いて開催される中川信夫監督特集は、生涯97本の監督作品の中から、傑作怪談『東海道四谷怪談』をはじめ、アクション、青春映画、人情ドラマ、ハードボイルドなど幅広いジャンルからの代表作12本が、ニュープリント(10本)・字幕付で上映される。オールド・ファンは勿論のこと、中川信夫の作品をスクリーンで体験したことのない新しい世代のファンや、海外の映画人には、知られざる巨匠を体験するまたとない機会と言えるだろう。

 また会見には、特別招待作品として上映される『やわらかい生活』の廣木隆一監督、昨年上映された『カナリア』にも出演しており、今年の審査員を務める西島秀俊が出席。廣木隆一監督は「今回が初上映なので、観客とのQ&Aを一生懸命やりたいと思う。作品の見所は、蒲田(の映像)』とコメント。またこれまでも、限られたスケジュールの中でフィルメックスを観に来ていたという西島は、映画祭の審査員は今回が初体験。「説明からも一本一本の作品に監督をはじめとしたスタッフの挑戦的な姿勢が感じられるので、映画体験としてこのフィルメックスで見たということが、生きていく中で衝撃として残るような作品を選びたい」とその抱負を語った。

 なお、第6回東京フィルメックスは、11月19日(土)?11月27日(日) 有楽町朝日ホール、東京国立近代美術館フィルムセンター大ホール、シネカノン有楽町、東京国際フォーラム・ホールCにて開催。全上映作品リストや詳細情報は、概要記事及び公式ホームページを参照のこと。
(殿井君人)

□公式頁
第6回 東京フィルメックス