「怪談の怖さは感覚的なものなんです」WOWOW“最恐”の「特集:にっぽんが怖い、、、」にて、稲川淳二氏の怪談トークもオンエア!
日本の夏といえば、何がなくともやっぱり身も凍るような怪談!WOWOWでは、古典から現代ホラーまで“最恐”和製ホラー作品群を、8月の12日〜16日の5夜にわたって2本立て放映する「特集:にっぽんが怖い、、、」がオン・エアされる。さらに今回の特集では、選りすぐりの10作品に加え、各夜の冒頭及び2本立ての幕間に、好評の“MYSTERY NIGHT TOUR”が今年で10年を数える“怖い話界”の第1人者・稲川淳二氏が登場し、氏自身の恐怖体験に基づく「稲川淳二のほんとうにあった怖い話」が語られ、“最恐”に拍車をかける趣向となっている。
7月14日、御祓いが執り行われたWOWOWのスタジオでは、稲川氏によるトークの収録が行われ、その収録前に稲川氏がマスコミに対し、怪談の魅力等について語ってくれた。怪談を語るのは「好きで話していたら、それがなんとなく気が付いたら…」と答える稲川氏。30年程前にラジオ等で語り始めたのを端緒として、テレビ、レコード(ヒット賞を二度受賞)と注目されるようになり、怪談ナイトツアーを組むようになってからでさえ早くも10年という歴史になる。ツアーでは毎年28くらいの新ネタを披露され、蓄積された続けた怪談ネタは短いものを含めると450篇にも及ぶそうだ。
今回、WOWOWでの邦画ホラー特集のナビゲーター的役割を担う稲川氏、彼が世界に出してもいけるなと思ったのは、幼かった頃に東映が製作した怪談映画だそうだ。「あれは綺麗だった。当時、特撮なんてあまりなかったけれど、凄い幽玄の世界でね。怪談映画って綺麗じゃないですか。綺麗な方、二枚目の俳優さん、ロケーションもいいところで。日本の怪談は感性なんです。じゃぁ、海外はというとスティーヴン・キングの1作目『キャリー』だけは驚いたな。あれは上手いですね。でも、基本的にホラーとスリラーと怪談は違います。ホラーはものや形がはっきりしていて、それが悪さをしたりしてくる。日本の怪談は、もっとシーンの後ろに何かがあって、復讐とかをやらざるをえないって感じで。それを見てると怖いんだけど同情したくなるような。それだけに、優しい人が怒ると手がつけられない怖さなんです。海外のものって、端から化け物見たいに怖いから、私には怖くないですね。映像的にはいい作品はありますが」。様々な作品を例に出しつつ、巧みな話術で怖さとショックの違いを語る稲川氏。それは近づいてくる着物のこすれる音から何かを分析していくような感性の怖さ、怪奇は感覚なのだと。
そんな稲川氏の怪談ツアーは、“稲川淳二の怪談ナイト 2002 10th ANNIVERSARY”と銘打って、今年も7月20日から2ヶ月間、全国22公演が予定されている。初期の見た、聞いたという怖さから、感覚的な怖さへと傾向もシフトしているという怪談ライブだが、今年は北陸・日本海側の話が多いそうだ。「自分がのせるんではなくて、お客さんにこちらがのせられていくジェット・コースターのような感じです」と語る稲川氏、ただ2時間強のライブでは用意した全てのネタが話しきれないのが残念とのこと。なお、ツアーの楽日に当たる9月27日、稲川氏がホームグラウンドともいうクラブチッタ川崎での公演は、深夜スタート始発までのオールナイト・ライブになるため、長い話も語られるそうだ。じっくりと怪談の妙を味わいたい方には、この公演が要チェックかも。
ところで、今回のオンエアで語られる怪談は3分と5分の長さ。ライブでさえ語りきれない部分があるという中で、どのような語りを考えているのだろう。「今、一生懸命焦っていることなんです(笑)。TVでは多いんですが、3分くらいというのは半端になりかねなく、難しいんですよね。勿論、失礼の無いように語りますよ。こういう時は、短い話を伸ばすのではなく、長い話のどこを切って話すかを考えるんです。私は話を絵として覚えているので、これは省いてもいいなと思える絵を省くことで、たるむことの無い話を心掛けるんですよ。そうそう、一昨日富山で体験したことなんですが…」取材はいつのまにか、稲川氏のミニ・ライブの様相を呈し、ライブの会場や旅先で経験した怪異が披露されていく。稲川氏の怪談を語ることが好きでたまらないという、気持ちが全開なのが伝わってくる。今回の5夜にわたる連続放映時、果たしてどんなネタが披露されるのか、オンエアが待ち遠しいぞ。
なお、最後に今回の特集放映のプログラムに関しても簡単にふれておこう。作品タイトル、オンエア予定等の詳細は、下記情報リンクを参照して欲しいが、夜ごとにテーマが設定され“妖怪”“学校の怪談”“四谷怪談”“幽霊”“呪怨”と回を重ねるに従い、恐怖と戦慄の度合いもいや増すプログラムになっている。また、早い夜だからといって侮っていると、これまた冷水を浴びせられるような戦慄が待っているので要注意だ。例えば、第2夜の“学校の怪談”篇は、最終夜“呪怨”の原型となった清水崇監督作品2本をはじめ、黒沢清、鶴田法男、中田秀夫といった現代国産ホラーの潮流を担う4監督作品(“小中理論”でファンには御馴染み、小中千昭氏の脚本作品を多数含む)によるまさに傑作選。また、黒沢監督の「あの子はだあれ?」は、関西テレビでは放映されたが関東キー局では未放映、また未ビデオ化作品というレア・タイトルで、ホラー・ファンには嬉しいプレゼントだろう。怪奇味もあるが基本線はミステリーである『雨の午後の降霊術』を、死生観、罪の意識といった感情をベースに、純然たる心霊ホラーとして仕上げた『降霊』や、まさに昨今の心霊ホラー表現の精華ともいうべき『呪怨』まで、決して“最恐”の名に偽りの無い作品群が揃えられたと言えるだろう。ホラー・マニアにとっても、また一時の戦慄と涼味を求める映画ファンにとっても、必見の好企画なのだ。
(宮田晴夫)
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