イ・ソンギュンの遺作『大統領暗殺裁判　16日間の真実』、8月22日全国公開

　知られざる韓国現代史をモチーフにした映画が8月22日から日本で公開される。1979年に韓国の朴正煕大統領が中央情報部（KCIA）部長に暗殺された事件の裁判を描く『大統領暗殺裁判　16日間の真実』（チュ・チャンミン監督）だ。混乱した時代の不当な裁判の真実を、魅力的な人間ドラマとして描き出す。

　本作は、逮捕された部長の側近と彼を弁護する弁護士、それに裁判を裏で操る者の物語を、史実を基に一部フィクションを交えて描いたもの。部長の側近であるパク・テジュをイ・ソンギュンが、弁護士チョン・インフをチョ・ジョンソクが演じる。2023年末に亡くなったイ・ソンギュンの最後の公開作品となった。

　朴大統領暗殺事件そのものは『ユゴ 大統領有故』（イム・サンス監督、2005）や『KCIA 南山の部長たち』（ウ・ミンホ監督、2020）などでさまざまな視点から描かれてきたが、暗殺に関わった部下の裁判はほとんど扱われてこなかった。

　パク・テジュのモデルとなった朴興柱（パク・フンジュ）は、被告の中で唯一の軍人であったために単審制が適用され、最初の公判からわずか16日後に判決が確定。チョン・インフのモデルである太倫基（テ・ユンギ）弁護士は彼を救うために奔走するが、死刑判決を止めることはできなかった。裁判を裏で操る合同捜査団長チョン・サンドゥ（ユ・ジェミョン）は、1980年のクーデターで政権を握る全斗煥（チョン・ドゥファン）がモデルとなっている。

　メガホンを取ったのは『王になった男』（2012年）のチュ・チャンミン監督だ。監督は当時の資料を調査し、関係者の遺族へのインタビューを重ねて2人の人物像を再現。激動の歴史に埋もれた人々のドラマをよみがえらせた。

　映画やドラマに引っ張りだこのチョ・ジョンソクが、人権弁護士として知られる弁護士の青年時代を熱演。上官に忠誠を尽くす愚直な軍人の人間的な面を、イ・ソンギュンが完成度の高い演技で表現している。そして作品ごとに全く違うキャラクターになりきるユ・ジェミョンが、本作では完璧な悪役の姿を見せている。その冷徹で計算高いキャラクターも本作の見どころだ。　

（Text:芳賀恵）

【あらすじ】

厄介な事件の裁判を多く担当する弁護士会のエースであるチョン・インフ（チョ・ジョンソク）は、大統領暗殺事件に巻き込まれた中央情報部（KCIA）部長の随行秘書官、パク・テジュ（イ・ソンギュン）の弁護を引き受ける。軍人であるがためにただ一人軍法裁判にかけられ、たった一度の判決で刑が確定する彼のために、公正な裁判を求めて戦うチョン・インフだったが、のちに軍事反乱を起こす巨大権力の中心である合同捜査団長チョン・サンドゥ（ユ・ジェミョン）によって裁判は不正に操られていた――

【作品情報】

『大統領暗殺裁判　16日間の真実』
8月 22日(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開

2024年／韓国
監督・脚本：チュ・チャンミン（『王になった男』）
キャスト：チョ・ジョンソク（「賢い医師生活」）、イ・ソンギュン（『パラサイト 半地下の家族』）、ユ・ジェミョン（『劇映画 孤独のグルメ』、「梨泰院クラス」）
配給：ショウゲート

公式サイト：daitoryoansatsusaiban-movie.jp　＃大統領暗殺裁判
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