芳根京子×高橋海人、15年の入れ替わり、難役に挑んだ胸中を語る主演映画「君の顔では泣けない」ジャパンプレミア

11月14日公開の映画『君の顔では泣けない』のジャパンプレミアが10月1日都内で開催され、主演の芳根京子、高橋海人らキャストが登壇し舞台挨拶を行った。
『君の顔では泣けない』は君嶋彼方の同名小説を『決戦は日曜日』(22)の坂下雄一郎監督が映画化、高校一年の夏に体が入れ替わってしまった陸とまなみの、切なくもいとおしい15年の歳月を繊細に描き出している。

上映後に行われたジャパンプレミアには主演の芳根京子、高橋海人をはじめ西川愛梨、武市尚士、中沢元紀、坂下雄一郎監督が晴れやかな笑顔で、舞台上でハイタッチをしながら登場、大きな歓声に迎えられた。
陸を演じた芳根は「皆さんに初めて見ていただけるということで、どきどきでした。初めて我が子をお披露目するみたいな気持ち、とても嬉しい」と挨拶。

続いて、まなみを演じた高橋が「毎日集中して頑張ってきた作品なので、やっと皆さんの元に届くんだなと、寂しい気持ちと嬉しい気持ちが半分半分。(観客に)どうでしたか?」と問いかけ、大きな拍手を浴びると「めっちゃ気持ちいい、もう少しもらっていいですか」と拍手のおねだりで会場を沸かせた。
「自分も初めて見た時、どきどきして、今までの役とは訳が違っていて、(皆さんに)どう映っているのかと思っていたので、拍手を貰えて、皆さんに楽しんでいただけたようで安心しました」と笑顔で話した。
脚本も手掛けた坂下監督は原作について「入れ替わったまま15年過ごすという特徴的な部分が目を引いた。ただの入れ替わりではなく、様々な象徴だったり、色々と考えられるところがあったので、映画になったら良いものになるのかなと思った」と話し、映像化については「君嶋先生とも話して、物語の終わりはどちらかに決めつけない、どちらでもいいと思えるようなものにしようと心掛けた。また“二人が恋愛関係になる設定”や“誇張したコメディ”にはしないことは早い段階で伝えた」と制作意図を説明した。
芳根は「脚本を読んだ時『そう来たか』と思った。入れ替わりのゴールって元に戻ると勝手に思っていた、15歳から30歳、人生のターニングポイントのタイミング、果たして戻りたいのか?難しいだろうなと。この作品を乗り越えた先の景色が見たくて、難しそう、だけどやりたいと思った」と出演を決めた経緯を明かした。高橋も「入れ替わりがテーマは初めて。僕にとってはチャレンジングな作品。15年過ごしていく中での心の揺らぎ、どういう選択をしていくか、重たい作品になっている。入れ替わっている誰かの体を借りている申し訳ない気持ち。普通の喜怒哀楽ではなく、二人だけが持っている喜怒哀楽をすごく丁寧に演じなければならない。この作品は生半可な気持ちではでは痛い目にあうと思った」と難役に挑んだ決意を吐露した
二人と関わる同級生、田崎淳一役の中沢は作品について「ずっと切なさ、もどかしさと同時にお互いを思いやる温かさ優しさが流れていて、この作品にしかない色が出ていて唯一無二の作品」と称賛した。
役作りについて芳根は「撮影が始まる前のリハーサルの時に、シンプルに陸として、まなみとして生きればいいんだと気づけた。入れ替わりに引っ張られすぎたけど、それに気づいて楽になった瞬間があって、攻め方が分かった。動きを足すより、引き算をしていった」と説明。高橋は「最初にかたちとして入ってみようとしぐさを強めでやってみたり、身振り手振りをやってみた。ストレートに観てもらう為には気持ち勝負でいったほうがいい、身振り手振りを最小限でいいのかもと。それが分かってからは伸び伸びと現場に向かえた」と話した。

15年にわたる入れ替わりの始まり、高校生の陸とまなみを演じたのは共にオーディションで選ばれた西川と武市。出演が決まった時の気持ちを、西川は「結果を聞いたときは嬉しくて頭が真っ白になった。難しい役なので自分ができることを最大限やって楽しもうと思って、とにかく台本をたくさん読んで、陸の抱えている孤独感や葛藤はどれほどのものだろうかと考え、陸をつくるというよりも、陸が抱えているものを私も一緒に背負おうという気持ちで役に入っていった」と話した。一方、武市は「ライブ後にマネージャーさんに呼び出されて、何か怒られるのかと思ったら、『君の顔では泣けない』出演決定と書かれた手紙を渡された。嬉しいより動揺が勝って、後からじわじわと心が盛り上がった」と振り返った。

印象的なシーンの多い本作の中でも、クライマックスのまなみが思いをぶつける独白の場面は見どころのひとつ。3分間の長回しをワンカットで撮影した高橋は「3分間もあった?いや、3分間だけか?という感じ。もっとしゃべっていた感覚があった。それだけ思いを口に出すってずっと重かったのかなと思った。クランクアップのシーンだったので集中していたし、現場も静かで穏やかな空間の中で演らせていただいて、自分の中でも記憶に残るシーンだった」と振り返った。既に撮影を終えて見学に来ていた芳根も「二人の時とは違う表情を沢山みて、すごく締め付けられるものがあって、すごく引き込まれて『なんだ、このヒロインは!』と思った」と高橋の演技を絶賛した。
上映後のイベントとあって、撮影秘話のエピソードもたくさん飛び出し、イベントは大いに盛り上がり、最後に高橋が「この映画を見て自分の人生を愛しく、唯一無二のものだと気づいてもらうきっかけになればいいなと思います」と締めくくった。
(レポート&撮影:小名美 比呂)

映画 『君の顔では泣けない』公開情報
11月14日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
コピーライト:©2025『君の顔では泣けない』製作委員会