梅津泰臣によってうみ出された伝説的18禁アニメ『A KITE』を原作としたハリウッド実写映画『カイト/KITE』の4月11日の公開前日、アニメ『A KITE』『MEZZO FORTE』のBlu-rayのリリース記念も兼ねて企画された本イベント。当日は2作品の監督であるアニメーター・梅津泰臣、アニメスタイル編集長・小黒祐一郎によるトークショーを行い、その後、『A KITE〈インターナショナル版〉』と『MEZZO FORTE〈ディレクターズカット版〉』の上映を行いました。

■登壇者:梅津泰臣(アニメーター)、小黒祐一郎(アニメスタイル編集長)
■日程:4月10日(金)
■場所:新文芸坐

小黒(以下K):梅津さんにとって『A KITE』はどういう位置づけにあるのですか。
梅津(以下U):エンターテインメント作品です。ある日、一アニメーターとして何かを表現したい気持ちが高まってきて、その集大成としてうまれましたね。
K:ハードなアクションや、エロティックなシーンもあったのですが、そういうのも描きたいという気持ちがあったのですか。
U:今も当時も個人のアニメーターの企画っていうのはなかなか大変なんです。18禁っていうのはわりと門戸が広かったので、そこで『A KITE』の企画を通したんです。決して僕もエロは嫌いじゃないんで、そういうものはバンバン作品の中に取り入れたいという気持ちはあったんですけどね。
K:そうして出来上がった『A KITE』が、アダルトアニメどころか一般のオリジナルアニメよりクオリティが高かった。それどころか、劇場アニメと言われてもおかしくないくらいのクオリティなのですが、制作費が高いっていうこともなかったのですよね。
U:そうです。普通の予算だったので、みんな大変だったと思いますよ。みんなでひとつの山を目指した、個人個人の努力がああいう形になったんだと思います。
K:その後のメゾフォルテはまた全く違った作品ですよね。
U:『A KITE』の反動ですよね。シリアスなものを作ったので次はコメディ要素があるものを作りたいと思って。もともとコメディ映画が大好きで、70年代に放送していたコメディドラマ、特に久世さんがやっていた「ムー」が好きで、そういう要素もいれたいなと思って。
K:両作ともアダルトシーンを抜いたバージョンも作られましたね。そして本日はそちらを上映する。なぜこの世に18禁版があるのに、本日は15禁版を上映するのか。みなさんも疑問に思われているのでは。
U:『A KITE』も『MEZZO FORTE』もやるからにはエロシーンも手を抜かずにきっちりとやりたいと思ったんです。どうせモザイクが入るんだから、そんなに一生懸命やらなくていいよって周りには言われたんだけど、リアルに描きたいと思ったもんだから。僕、手を描くのがリアルだと言われるんですけど、それは局部に関しても同じなんです。でも後々プレビューで見ると、すごく恥ずかしくて!リアルにやりすぎた!と思いました。それを大画面で見るのは、僕の中で抵抗があったんです。なので本日の上映は15禁版にさせていただきました。
K:本日上映する2本は何か映画の影響をうけました?
U:『A KITE』は『グッドフェローズ』。これ大好きで、いくつかのシーンを『A KITE』にも引用してるんです。あと『ダークマン』『ヒドゥン』『ターミネーター』『ダイハード2』ですね。『MEZZO FORTE』は『キングピン/ストライクへの道』『エンゼルハート』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』。
K:実写版『カイト/KITE』はどうですか。
これも割りと早い時期から話はあったんですけど、なかなか話が進めなくて。脚本も7、8校まであって、途中で話もすごく変わってしまって、どうなるんろうと危惧していたんです。その後、監督に決まったエリスが話を元に戻せといってくれて、でも撮影が始まる1週間前に亡くなってしまったんです。色々アクシデントはあったんですけど、ラルフ・ジマン監督が新たに撮ってくれて、やっと完成したという感じでね。
K:僕も試写で拝見したんですけど、びくりするくらいアニメをリスペクトしていますよね。まるっきり々シーンとかありましたね.
U:実写版には良い印象しか持っていないですね。主演のインディアもとても良い女優で、キャストもよかった。
監督も良いセンスも持っていて、氷室京介のPVもとっている方なんです。映像的にもすごく綺麗な仕上がりになっていますね。
K:映画に関して、「こうしてくれ」とか色々指示をしたのですか。
基本的に映画に関してはあまり口出しをしないという契約だったので、僕は「タイトルだけは変えないでくれ」と言いました。でも向こうも「ここはどうしましょう」とか聞いてくるので、そういう時は口を出しました。女体盛りのシーンは「さすがにやめてくれ」とか。

その後、客席との質疑応答で映画『カイト/KITE』の見所を尋ねられました。
U:アニメ版をリスペクトしてくれているので、アニメにあったシーンが再現されているとかだけじゃなく、どのように彼らがアニメを自分達で咀嚼して形にしたのかというのを意識して観るのが楽しいと思います。大きいテーマは外していないので、アニメ版が好きな人は実写版も好きになってくれるのではないですかね。