映画祭12日目の26日(日)。後は賞の結果を待つばかりとなった最終日。長編コンペティション部門に選出された全20作品が、パレ・デ・フェスティバル内の4会場においてリピート上映された。怒濤の日々も過ぎてしまえば、あっという間たが、昨年に続いて今年も悪天候に見舞われ、1日中晴れ渡ったのはほんの数日。前半が雨続きで後半は低気温&強風の日々だったが、最終日の今日は気温も上昇、やっとのこと陽光にも恵まれた。
 19時から行われた授賞式セレモニーの後に、閉幕作品であるジェローム・サル監督の『ズールー』(南アフリカを舞台にした刑事映画で、主演はフォレスト・ウィティカーとオーランド・ブルーム)が2回上映され、5月15日から12日間にわたって開催された第66回カンヌ映画祭が閉幕した。


◆オドレイ・トトゥが司会を務めたクロージング・セレモニーには、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場!

 オープニング・セレモニーに続き、クロージング・セレモニーの司会をフランスの人気女優オドレイ・トトゥが務めた今年の授賞式セレモニーには、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場し、正装で身を固めた観客たちを魅了した。
 “短編コンペティション部門”のプレゼンターはデンマークの俳優マッツ・ミケルセンで、この部門と学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”の審査委員長を務めたジェーン・カンピオン監督(1993年の『ピアノ・レッスン』で女性監督として初めてパルムドールを受賞!)とともに登壇。部門を問わない新人監督賞の“カメラドール”は審査委員長のアニエス・ヴァルダ監督が、中国の女優チャン・ツィイーを伴って登場し、受賞者を発表した。
 “長編コンペティション”部門の男優賞のプレゼンターはフランスの女優レティシア・カスタ。女優賞は英国の俳優オーランド・ブルーム。脚本賞はイタリアの女優アーシア・アルジェント。審査員賞のプレゼンターとして登場したのはスペインの女優ロッシ・デ・パルマ。監督賞は米国の俳優フォレスト・ウィテカー。グランプリのプレゼンターは往年の名女優キム・ノヴァク。そして、アメリカの女優ユマ・サーマンが、最高賞パルムドールのプレゼンターとして登場した。   
 我々報道陣は、その模様を授賞式会場のリュミエールではなく、ドビュッシー・ホールのスクリーン映像で観るので、賞が発表される度に気兼ねなく歓声をあげたり、ブーイングしたりと喧しいのだが、今年は下馬評の高かった作品に順当に賞が贈られたせいか、反応はかなり穏やかであったが、監督賞に対してだけは不満の声とどよめきが広がった。受賞結果は下記の通りだが、最高賞のパルムドールは、アブデラティフ・ケシシュ監督と主演女優の2人、アデル・エグザルコプロスとレア・セドゥの“3人のアーティスト”による連名での受賞だと言及される異例の扱いとなった。


〈第66回カンヌ国際映画祭〉長編コンペティション部門受賞結果

☆パルムドール:『ブルー・イズ・ザ・ウォーメスト・カラー』アブデラティフ・ケシシュ監督(フランス)
☆グランプリ:『インサイド・ルウェイン・デイヴィス』イーサン・コーエン&ジョエル・コーエン監督(アメリカ)
☆監督賞:アマト・エスカランテ『エリ』(メキシコ)
☆審査員賞:『そして父になる』是枝裕和監督(日本)
☆脚本賞:ジャ・ジャンクー『ア・タッチ・オブ・シン』(中国)
☆女優賞:ベレニス・ベジョ『ザ・パスト』(フランス)
☆男優賞:ブルース・ダーン『ネブラスカ』(アメリカ)


◆授賞式直後の20時15分からスピルバーグ監督ら審査員団の記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

 クロージング・セレモニーの余韻が残るなか、20時15分より長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われた。会見では選考作についての詳細と審議の過程が明かされ、今回のカンヌでの経験についてが審査員の口々から語られた。
 審査委員長のスティーヴン・スピルバーグ監督はパルムドール作品について、「深い愛と深い失意を描いた素晴らしいラブストーリー。この映画は世界中で成功することでしょう」と手放しで絶賛した上で、「2人の女優と監督との繊細な共同作業で生まれた映画。もし2人の演技が3ミリでも違ったら、こんなに傑作にはならなかった。その意味で、彼女たちも監督と同列に称えたい」として、主演女優2人を監督と同格として扱った理由を語った。
 また、最近フランスで合法化されて賛否両論を呼んでいる“同性婚”問題について問われたスピルバーグ監督は、「この映画は同性愛を描いているが、主人公たちは結婚していないし、同性婚の合法化という政治的なものとは関係がない」と前置きしながらも、「それでも“同性愛者の結婚”に対して、とてもポジティブなメッセージを送っていると思うよ」とコメントした。
(記事構成:Y. KIKKA)