映画祭10日目の20日(金)。“コンペティション”部門では、イタリアのパオロ・ソレンティーノ監督の『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス』とデンマーク出身の鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンが監督した米国映画『ドライヴ』が正式上映された。そして、映画祭も残すところ後3日となった今、ラース・フォン・トリアーの舌禍事件がカンヌを揺るがしている。18日の公式記者会見で、「ヒトラーに共感する」と発言したラース・フォン・トリアー監督が映画祭から咎められ、映画祭からの追放処分を受けたのだ。これはまさしく前代未聞の処置で、作品自体はコンペの受賞対象とするが、仮に受賞をしたとしても、トリアー監督は会場に立ち入ることを許されないという。やれやれだ。

◆『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス』は名優ショーン・ペンが、“ゴス”ファッションのロッカー役で主演!

 『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス』は、ダブリンで印税生活を送る50歳の元ロックスター、シャイアン(ショーン・ペン)が、絶交していた父の死に際し、父がアウシュヴィッツでナチの将校に辱めを受けていたことを知り、今はアメリカに隠れ住む当の将校を探し出し、父の仇を討とうとする物語で、イタリアの気鋭監督パオロ・ソレンティーノが初めて米国での撮影に挑み、ケレン味たっぷりの映像で描写した意欲作(英語作品)だ。朝8時半からのプレス試写に続き、11時から本作の公式記者会見が行われ、監督のパオロ・ソレンティーノ、脚本家、ショーン・ペンらが登壇した。パオロ・ソレンティーノ監督とは自身が長編コンペティション部門の審査員長を務めた2008年のカンヌ映画祭の授賞式(パオロ・ソレンティーノ監督の『イル・ディーヴォ』は審査員賞を受賞)で初めて知り合ったというショーン・ペンは、「その時ソレンティーノに、いつでも、どこでも君の都合の良いときに声をかけてくれ。どんな台本でもいいからさと伝えていたんだ。そしたら一年後に話が来た。出演には全く躊躇しなかったよ」と延べ、「監督とは鬱病や、鬱病がもたらすシャイアンの肉体へのインパクトについても、かなり話し合った。彼は非常に明確なビジョンを持っており、それはまるで、監督がピアノを演奏している間に僕が楽譜のページをめくっていたような感じだったね」と語り、ソレンティーノ監督を讃えた。
 一方、ソレンティーノ監督は「偉大な映画の国アメリカで映画を撮影することは実に刺激的な体験でした。撮影場所も容易く見つけられたんですが、私たちはまるで新しい世界を発見した子供のようでしたよ」とコメント。
(Report:Y. KIKKA)