日本映画が立て続けに上映された18日(水)。『朱花(はねづ)の月』の正式上映は17時からスタート。園子温監督の『恋の罪』は21時半から“監督週間”で特別上映され、上映後の深夜24時半からは日本人プレス向けの囲み取材をJWマリオット・ホテルのロビーで敢行。また、正式上映が明日の19日に行われる『一命』のプレス向け試写が19時と22時から行われ、21日が正式上映の“短編コンペティション”部門(日本からは田崎恵美監督の『ふたつのウーテル』が出品)のプレス向け試写も11時から行われた。

◆奈良県の飛鳥地方を舞台に、2人の男と1人の女の三角関係を描いた河瀬直美監督の『朱花(はねづ)の月』

 1997年の『萌の朱雀(もえのすざく)』でカメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞、2007年の『殯(もがり)森』はグランプリを獲得。2009年には監督週間の“金の馬車賞”を受賞するなど、すっかりカンヌの常連となった河瀬直美監督。17時からの正式上映(プレス向け試写は17日の17時&22時に2回上映)に先駆け、『朱花(はねづ)の月』の記者会見が昼の12時半より行われ、カンヌ入りした河瀬監督と出演俳優の大島葉子、こみずとうた、小水たいが、明川哲也らが登壇した。
 震災後、世界のはかない美しさを意識するようになったという河瀬直美監督は、朱色が重要な役割を担っていることについて、「朱色は作品のシンボルのようなものです。昔、この色は権力と輝きを象徴していました。また、とても褪せやすい色でもあり、脆さと儚さをも象徴しているのです」と語った。また、映画初出演となるドリアン助川こと明川哲也は「最初は出演依頼を断ったんです。映画とは全く無縁の生活を送ってましたから。でも、ある晩、監督と酒を酌み交わし、彼女の視線、世界観、そのカリスマ性に魅了され、出演を決めました」とコメント。正式上映後は、ハーバー近くで内輪のカクテル・パーティが催され、日本人報道陣向けの囲み取材も同時に行われた。

◆17日に正式上映されたアキ・カウリスマキ監督の
『ルアーヴル』のパーティがビーチで開催!

 2002年に『過去のない男』でグランプリ受賞を受賞したフィンランドの異才監督アキ・カウリスマキが、母国フィンランドではなくフランスの港町ルアーヴルを舞台に選び、題名にもした『ルアーヴル』は、隠遁して靴磨きをするフランス人の元作家とアフリカから不法移民した黒人少年の交流を描いた意欲作で、庶民の哀歓をオフビートに描くカウリスマキ節と独得な映像スタイルが健在だったのが嬉しい。プレベートビーチで行われた『ルアーヴル』のパーティではワインと並んでウォッカが振る舞われ、供された料理も美味で大充実。芋ノコ状態のパーティが多い中、盛大ながら久々にゆったりと寛げるナイスな宴で、“ある視点”部門の審査員長を務めるエミール・クストリッツァ監督もパーティに顔を出していた。

◆異才、園子温監督の『恋の罪』が、
“監督週間”でワールドプレミア上映!

 1990年代に東京都渋谷区円山町のラブホテル街で起きた殺人事件に着想を得て描いた『恋の罪』で遂にカンヌデビューを果たし、3年連続で世界三大映画祭への出品という快挙を成しとげた園子温監督が、公式上映後にJWマリオット・ホテルのロビーで日本人報道陣向けの囲み取材を行った。
 本作は、このラブホテル街で1人の女性が死亡した事件を軸にして、3人の女性、葛藤する女刑事(水野美紀)、体を売るエリート大学助教授(冨樫真)、売れっ子小説家の妻ながら次第に道を踏み外す主婦(神楽坂恵)の生き様を描いた衝撃作だが、観客の反応は上々。ほっとした表情を浮かべた監督は、国際映画祭への出品はどんな意味を持つかと問われ、「日本映画会のメインストリームから浮いてしまう僕のような異端にとっては、逆輸入的な付加価値が必要なので非常にありがたいし、他国のプロデューサーやキャストへのアピールにもなる」と語った。海外セールスも好調な本作は、現時点で10ケ国からオファーがあり、イギリス、香港は既に公開が決定しているという。
(Report:Y. KIKKA)