第63回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2010】3
◆“ある視点”部門の開幕作品は、ポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『ザ・ストレンジ・ケース・オブ・アンジェリカ』
現地時間13日の19時半より、映画祭のオフィシャル・セクション“ある視点”部門のオープニング・セレモニーがパレ・デ・フェスティバルのドビュッシー・ホールで行われた。登壇したディレクターのティエリー・フレモーは、今回、映画祭の審査員を務める予定だったイランのジャファル・パナヒ監督が、イランで当局に身柄を拘束中であることに対してコメント。そして3年前に逮捕された時の模様を語るパナヒ監督のインタビュー映像を会場スクリーンに映し出し、一刻も早い監督の解放を訴えた。
その後、“ある視点”部門の審査員(審査委員長はフランスの女性監督クレール・ドゥニ)たちと開幕作品の監督&出演者が登壇。マノエル・ド・オリヴェイラ監督の挨拶に続き、『ザ・ストレンジ・ケース・オブ・アンジェリカ』が上映された。
◆101歳、現役最長老の監督マノエル・ド・オリヴェイラの新作はポエティックかつノスタルジックなファンタジー!
杖こそついてはいるが、介助なしでオープニング・セレモニーに登壇し、実にかくしゃくとして挨拶をしたマノエル・ド・オリヴェイラ監督(1908年12月11日生まれ)の新作『ザ・ストレンジ・ケース・オブ・アンジェリカ』は、急死した若い女性アンジェリカ(ピラール・ロペス・ド・アジャラ)の遺体写真の撮影を依頼された青年カメラマン(マノエル・ド・オリヴェイラの孫リカルド・トレパ)が、彼女に惹かれ、死の幻想に捕らわれてしまう物語。主人公とアンジェリカの幽霊が空を飛ぶシーンが実に美しく、監督の衰えぬ創作意欲と瑞々しい感性に感服してしまった。
◆“監督週間”部門のオープニング・パーティでは、開幕作品に出演したバンド“スタッフ・ベンダ・ビリリ”が生演奏!
プライベート・ビーチに設置された会場シェリシェリで、13日の22時より“監督週間”のオープニング・パーティが催された。パーティでは、開幕作品に選ばれたドキュメンタリー『ベンダ・ビリリ! もう一つのキンシャサの奇跡』に出演したバンド“スタッフ・ベンダ・ビリリ”が熱いパフォーマンスを披露し、会場は大盛り上がり。彼らの音楽性と人間性にノックアウトされて映画を共同監督することになったというフランスのカメラマン出身の2人、ルノー・バレとフローラン・デュラテュイエも上機嫌でパーティーに参加していた。
ところで、アーティスティック・ディレクターがフレデリック・ポワイエに交代し、ドキュメンタリー作品が目立つラインナップとなった今年の“監督週間”。特別上映作品の2作品、ローリング・ストーンズが1972年に制作したアルバムの制作風景を収めた『Stones In Exile』(19日上映)と巨匠フレデリック・ワイズマン監督の『Boxing Gym』(20日上映)が話題を集めそうだ。
(記事構成:Y. KIKKA)