第10回東京フィルメックス:10回記念シンポジウム セッション1<黒沢清(映画監督)、是枝裕和(映画監督)
独創的なラインナップで、国内外の注目も高い国際映画祭 「第10回東京フィルメックス」。初日となる11月21日には、映画祭の10回開催を記念してシンポジウム〈映画の未来へ〉を行い、北野武監督を始め、豪華な顔ぶれによるシンポジウムを開催いたしました。
日時:11月21日(土) 14:30−16:00 観客:約1,000人
会場:明治大学アカデミーホール(千代田区神田駿河台1-1アカデミーコモン3F)
登壇:セッション1 黒沢清(映画監督)、是枝裕和(映画監督)
*セッション1&2ともに司会:林 加奈子、市山尚三(東京フィルメックス)
<セッション 1 トーク内容>
─まずはマスタークラスの感想を
(黒沢)本当に話が上手い。山根さんの聞き出し方も上手い。映画監督であんなに面白い人はいないですよね。
(是枝)面白かったですね。自分がどういう風に映画に向き合うか考えさせられました。
─21世紀になってからの10年、制作状況や現場に変化はありますか?
(黒沢)99年から海外で紹介されるようになり、それによって自分の作品が変わったとは思えないけど、良くも悪くもプレッシャーです。
(是枝)外(海外の映画祭)では厳しい事を言われたりするが、発見できる事がたくさんあるなと思います。
─最近の映画のデジタル化について
(黒沢)デジタルもフィルムも撮影する側からしたら一緒。全てデジタルで撮りながらフィルムの質感を求めているのは、ほほえましい。
(是枝)世界中の大多数のデジタル(映画)がフィルム(映画)を目指しているのはおかしいなと思いますね。僕はデジタルでしか撮れないものを撮りたい。
─ここ10年で映画は作りやすくなった?<明るい未来へ>の動きがあるのか?
(黒沢)自分の経験から感じることは、“娯楽”作品と“作家性”の高い作品との溝を感じる、ということ。昔は“娯楽”と“作家性”が共存していた。今は、新人監督が出てくるには辛い状況じゃないかな。映画ってやってみないとわからないのに、方向性が決まらないと映画が作りづらい。(東京芸術大学の教え子の中に)将来の楽しみな子たちはいるけれど、まだまだ彼らに出る幕を与える気はないよ(笑)
(是枝)自分は作りたいものを恵まれた環境で作ってこられたと思います。今は、“作品であること”と“商売であること”が求められている。それが映画の面白い所でもあり、難しい所でもあるのだけど…。劇場をまわっていても、2か月は観客の興味がもたなくなっているという話はよく聞きます。“商品”としての部分をどうやって届けていくか、どういう風に劇場を再構築していくか、これはこれからの課題だと思います。