「見まちがう人たち」のゲストをお迎えし、記者会見が行なわれました。

■ 日時・場所 10月20日(火)、17:30〜 @ムービーカフェ
■ 登壇者 クリスチャン・ヒメネス(監督)、パオラ・ラトゥス(女優)

郊外都市の巨大なショッピングモールを中心に展開する、ユーモアと皮肉をビリっと効かせたチリ発の群像劇。
大勢の登場人物の中の一人を演じていたパオラ・ラトゥスさんは3 日前に来日。そして初めて日本に昨日来日されたばかりのクリスチャン・ヒメネス監督に、まずは東京の第一印象について伺いました。

ラトゥスさん: 初めての東京で3 日過ごしましたが、会う人、見るものが素晴らしい限りで、幸せです。
ヒメネス監督: まだ来て1日しか経っていませんが、直線の多い街で感銘を受けました。私は、空間の使い方において、釣り合いが取れていて幾何学的な直線が好きです。

最初の質問は、監督のデビュー作である『見まちがう人たち』の着想から完成までの過程、また見事な編集による非常にスピーディなストーリー展開についてでした。
ヒメネス監督: 着想は5 年前です。ちょうど4 年間イギリスで過ごした後、チリに戻った頃のことです。その時のチリの印象がこの映画のきっかけとなりました。35 ミリ映画が完成したのはほんの数か月前ですから、制作に4 年半程かかったわけです。長編映画としては少ない200ショットくらいしかなく、カット数も各場面で最小限にするといったスタイルに拘りました。編集には8か月程費やしました。できあがった作品の構成は、当初の脚本とは異なります。当初は、ひとつの長いブロックの中にそれぞれの登場人物を描くかたちになっていました。編集段階で、色々な構成を試し、基本的な考え方は予定通りですが、最終的には6 つ大きなブロックにまとめました。

質問: チリとポルトガルとフランスの合作となっています。昨年『トニー・マネロ』というチリとブラジルの合作を観ました。チリでは合作が多いのですが?
ヒメネス監督: 『トニー・マネロ』は、パオラ・ラトゥスも出演している映画ですね。チリでは、資金調達、そして芸術的価値を高めるといった意味においても他国との合作とすることが増えています。本当の意味での映画産業が未開発段階にあります。作品数も増えていますし、芸術性の高い作品も見られますが、まだまだ業界として確立できていません。

質問: 映画の中に出てくる、あまり好意的には描かれていない医療会社ですが、最後のクレジットにも出てきたように記憶していますが?
ヒメネス監督: ビダ・スールという架空の会社です。ジョークとしてクレジットに含めました。その他の企業は、実在するものです。

質問: ヒメネス監督との仕事はいかがでしたか?演技に対する要求やスタイルはどのようなものでしたか?
ラトゥスさん: 私は元々舞台女優です。今回は初めての長編映画だったのですが、ヒメネス監督はいつもそばにいてくれて、映画の舞台となっている地方が私の出身地と違うということもあって、話し方や振る舞い方などについて細かく指示してくださいました。

質問: 映画のテーマは、ショッピングモールで起こるわけですが、近代化が進むにつれて街の個性がなくなって行く。どの国にも共通するテーマになっていると思いますが、均質化している社会に対する危機感というものを意識されましたか?
ヒメネス監督: 社会的な均一化している背景についてはあまり考えてはいませんでした。ただ、変革の仕方が新しい現実を創りあげていて、それが変だなと感じたことが着想点でした。重要視したのは、この状況に対して批判的な位置づけをするのではなく、もう一歩踏み込んでそれをドラマに仕立て、しかもコメディであり、また、美しく、哀しいものにすることでした。

質問: 監督の好きな監督を教えてください。
ヒメネス監督: 難しい質問ですね。一人挙げるのは難しいですし、私の映画作りのお手本となっている監督が、必ずしも私が見ている映画の監督であるとは限りません。『見まちがう人たち』の制作にあたっては、ジム・ジャームッシュやウッディ・アレン、ウェス・アンダーソン、あるいは北欧のカオリスマキやロイ・アンダーソン、ファズビンダーの作品も思い浮かびますし、バスター・キートンのような作品、ジャック・タチの作品も参考にしたと言いますか、映画制作のために観ました。ちなみに次の作品のガイドとしては、小津安二郎の作品に注目しています。