刑事・吉岡(役所広司)の周辺で勃発する連続殺人事件。捜査し犯人を追い詰める立場であるはずの吉岡だが、妙な感情に揺れ始める。自分が犯人ではないのか…? ガイシャの周辺に仄かに残る自分の痕跡、残滓…そして自分自身の記憶すら自らの潔白を何も語らないのだ。そんなある日、第1の殺人現場を、まるで自分自身を確かめるようにうろつく吉岡を不気味な「叫(さけび)」が襲う! 儚くも物哀しい細い女の悲鳴のような「あなただけ許します…」という声。謎が闇を呼び、これは現実なのか、それともどこか別の世界なのか…。濁った水と黒い闇の糸で繋がれた人々の運命の物語は、静かに現在と過去、いや過去と現在間で絡み合い、吉岡は知らぬ間にその秘密に巻き込まれていく…。

本日、『叫』公開初日を記念して舞台挨拶が行われ、黒沢清監督、役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈が登壇した!

まず、黒沢監督は「これまでいわゆるホラー映画と呼ばれるものを何本も撮ってきたんですけども、今回はいわゆるホラー映画とは全然違うものにしようと思っていました。怖いとか怖くないとかはあまり関係ないと思い、もう少し違った観点で、つまり幽霊もただ怖いというだけではないという観点で作りました」と異色の視点を述べた。

今作で監督とは7作目のタッグを組んだ役所は現場について「黒沢組の場合は監督の個性とか雰囲気などが反映してまして撮影の現場としても本当に居心地が良かったです。みんなでそれぞれが考えてひとつの作品を作っていくという楽しさのある現場でした」

小西は「監督がとても穏やかな方で、凄く緊張していたのですが余計な力をいれずにカメラの前に立つことが出来る空気感を作っていただけたという事が本当にやりやすかったですね。また指示がとても的確なので監督を信頼して撮影に臨みました」と初の黒沢組参加の感想を話した。

アカデミー賞にノミネートされた『バベル』に出演した伊原は「ほんとはアカデミー賞に行きたかったんですけども、この作品の挨拶があったのでこっちに来ました(笑)。黒沢さんは細かい指示を出すというのではなく、役者を方向付けて役者にも考えさせるという方法でした。また、監督は普段はおっとりしているのですが、意外にせっかちなところもあり、早く本番に入りたがっていました(笑)」と笑顔で語った。

3年半振りの映画出演となった葉月里緒奈は、今作を選んだ理由について「やはり監督が黒沢監督であり、共演者がこれだけ素晴らしい方々であることが1番大きいですね。私の役は幽霊ですが感情もあり、セリフもあるのであまり幽霊ということは意識しないで1人の女性として演じました」と今までにない“幽霊”を自分のものとしていた。

(oki)