1月21日(土)、『ナイフ』や『ビタミンF』などで知られる重松清原作の映画、『あおげば尊し』の初日舞台挨拶が行われた。今回の舞台挨拶には市川準監督(以下I)、主演のテリー伊藤さん(T)、薬師丸ひろ子さん(Y)、麻生美代子さん(A)らが現れ、記録的な大雪の中、たくさんの観客に見守られるように始まった。

今日は初日ですね!
I:今日は雪がとても綺麗で。映画が雪に祝福されている気がしますね。
T:映画館という場所にはもちろんパジャマでは行かないし、服を気にして、しかも今日は濡れながら来てくださって。雪で来るの大変だと思いました。嬉しいです。
Y:天候の悪い中こうして来てくださって、ここでお目にかかれたことは、私の中にも印象深く記憶に残ります。感謝しています。
麻生さんとテリーさんは映画は初めてなんですよね。麻生さんは『サザエさん』のフネさんの声をやられてますが、今回映画に出られてどうでしたか?
A:顔出すの苦手なんですよ。声の仕事が多いので、カットカットで撮る映画は気持ちが続くかどうか心配でしたが、最後までやらせて頂きました。

この映画に参加することをどう考えましたか?
T:普段は情報番組でさわぐイメージを持たれていると思っていたので、声をかけていただいた時は驚きました。父が亡くなったのがちょうど20年前で。病気に倒れて介護をしたんですけど、何を話せばいいのかわからなかった。当たり前のことしか言えず、後悔しました。父に対して感謝の想いを言えずにひきずりました。昔は好き勝手やってましたけど、それは演出家になった時に大きな財産になってますね。母が亡くなる前に、たくさん得るものがあったと言ったら喜んでくれて。こういう気持ちが本とダブりました。
Y:脚本を読んだら、後半ではらはら涙が流れてきて止まりませんでした。死をもってしか心を通わせられない息子と父親の不器用さが心にきました。ホントに胸が締め付けられる思いで。目の前で実際テリーさんが演じられるのを見て、ドキュメンタリーのように、傍観者のように見せていただいて、現場でも泣かせてもらいました。この作品に出会えてよかったです。
A:私も父が18年ほど前に88で亡くなって、最後まで家で面倒をみました。その日に限って録音の仕事が入って、妹に父をお願いして仕事に行きました。着いたら、すでに父は亡くなったという電話が入っていて。でも最後まで面倒をみたのだから、父は幸せだったと思います。この映画に関して言うと、最近の子供たちはケータイなどで死体を見たりもするということを知ってビックリしました。人間の考える力がなくなって、世界中がロボットだらけになって、感情がなくなってしまうんじゃないかと心配しました。

監督から見た出演者の皆さんの印象は?
I:テリーさんにやってもらったのは大成功でした。名優が黙っている名演技というのがありますが、この人の黙っている背中を見ると、いろんなことを考えさせられますね。テレビでは見れないテリーさんの優しさ、昔話、そういうものがナマで出てきたシーンもあって。そういう魅力がある映画です。
薬師丸さんには、他の映画で見れない薬師丸さんを撮りたいと考えていました。ノーメイクで、すさんだ感じを出してくれるように頼みました。最終的には内面的な強さを出してくれました。他では見れない薬師丸さんです。
麻生さんは出会いを感じる人です。長年頑固な男と添い遂げた風情が、お顔の隅々に感じられて、まさにハマリ役です。この3人は似合いですよね。こういう家族が出てきます。暗い話にはなっていないので、是非よろしくお願いします。

出演者の方の昔話では涙ぐむ場面もありました。舞台挨拶は「あおげば尊し」の曲が流れる中、始終あたたかな雰囲気につつまれていて、これだけでどれだけ良い映画なのか伝わってくる気がしました。

(umemoto)

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『あおげば尊し 』