『恋する幼虫』の井口昇が処女本「恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!」を上梓!
映画監督・井口昇——— スカトロ美少女ものAV監督として巨匠と呼ばれる一方、一般劇場用長編映画では監督2作目になる昨年公開された『恋する幼虫』は、繊細なリリシズムと痛々しい位の純愛をファンタジックで奇想天外な味つけで描き、「天才」としかいいようのない映像的冒険とその豊かさには、多くの映画ファンが舌を巻き大絶賛された。デビュー作『クルシメさん』をはじめ「刑事まつり」での衝撃的人気作『アトピー刑事』など中短編集DVD「愛の井口昇劇場」の発売も話題となり、知る人ぞ知る「鬼才」であった彼だが、今では誰もがその才能を確信するところとなった。
彼の稀有な存在にいち早く気付き、かねてよりことあるごとに大プッシュを繰り広げてきたのはこちらも今をときめく松尾スズキだが、彼が井口推しをすすめるべくして自らプロデュースを買って出たのが、井口昇の処女本である「恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!」(太田出版より発売中)だ。
以前より井口の映画に流れる叙情性は、スカトロというハードでマニアックなものを題材とする彼のAV作品ですらその作風は一貫しており、映像的感動でいえばどちらも共通して多くいるとの驚くべき噂を耳にしていたが、本書を一読してその所以も理解できるような気がした。というのも本書では、井口の自叙伝でありながら、スカトロ、エロティシズムへの思いを中心に語ったものだからだ。「スカトロ」というなにやらわからない言語を「うんち」と解説し、読者を手とり足とり井口ワールドへ誘ってくれる、笑って泣ける優しい井口昇のA感覚の集大成がつづられている。今回200ページ余の執筆にあたった井口は初の著書をこう語る。
「よくあるAVの暴露本や、マニアにしかわからないような本にはしたくなかった。自分しかわからないようなマニアの心理だけじゃなく、スカトロに興味のない人でも、別に実行しなくてもいいから「こういう世界もあるんだ」って理解できるようなものにしたくてそれはすごく心がけて書いたところですね。」
確かにスカトロは井口昇から切っても切り離せないものなのかもしれないが、単に壮絶な趣味をもった人間のレポートというものではなく、題材こそスカトロだが根底に流れているのは井口の愛の渇望とエロティシズムの追求だ。
「僕はべつにうんち単体に興味があるわけではなく、あくま女の子とセットになっていることが一番重要です。すごく可愛い女の子の身体からも汚い排泄物が出てくるっていうのは、当たり前のことだけど一方ですごく不条理なことだと思うんです。そのギャップにすごく惹かれてしまうんですよね。そこにエロスを感じます。」
その感覚は彼の映画にも共通して表れており、服を脱がずとも女性の顔の表情たったひとつからでもエロティシズムを表現してみせるところなどは、裸の女性が淫らな格好をするとか、縛られて責められるというような表面的で記号的なものをエロスとする見方への痛烈な意向返しでもある。
「正直言うと今の映画の中であんまりエロティシズムを感じることがないんですよね。僕が共感できないだけなのかな。でも共感できないからこそ僕は作品を作るのかもしれない。自分で見たい、と思うものを作っているんでしょうね。」
そんな彼の天才的表現の面白さが本書でも思う存分発揮されている。あくまで叙情的かつエロティシズムの愛の妄想世界を描きながら、彼一流のエンターテイナーな素質によってポップでキュートな読みやすい筆致の傑作エッセイとしても楽しめる昇版「青春の門」だ。
4月15日には出版を記念したイベントが新宿ロフトプラスワンで開催され、松尾スズキ率いる松尾部の面々も多くゲスト出演するとのこと。年内公開となる中篇作品『まだらの少女』や現在準備中の『猫目小僧』など楳図かずお原作ものへの挑戦や、7月から大人計画本公演へに出演など多岐にわたって才能を開花させている昇から目が離せない!
(綿野かおり)
—-イベント情報————————————————————-
<井口昇初の単行本『恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!』発刊記念イベント! 「腹痛ナイト」>
■日時 :4月15日(金)18:00開場 19:00開演
■場所 :ロフトプラスワン
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2
tel 03-3205-6864
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/
■料金 :¥1500(飲食別)
※当日受付にて『恋の腹痛、見ちゃイヤ!イヤ!』をご購入の方は、チャージ\500引き&サイン付き
■出演 :井口昇
■ゲスト :刹奈、金紙(枡野浩一)、銀紙(河井克夫)、宮崎吐夢、篠崎真紀、バクシーシ山下、平野勝之、カンパニー松尾、庵野秀明(※ほか特別シークレット・ゲストにあの人が!)
■進行 :山田広野