岸田戯曲賞を受賞するなど演劇界で高い評価を受けているナイロン100℃の主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチが初監督作『1980』をついに完成させた。『クロエ』での演技が高く評価され女優として更に磨きをかけているともさかりえ、『リリイ・シュシュのすべて』などでの好演が光る蒼井優、ナイロン100℃の看板女優であり独特の魅力をもつ犬山イヌコの3姉妹の1980年の12月を舞台にした群像劇である。マスコミ向け完成披露試写では、監督のケラリーノ・サンドロビッチ(以下KERA)、主演のともさか、蒼井、犬山の三人に加え、演歌歌手東馬健を演じる及川光博が舞台挨拶を行った。YMOの「ライディーン」のSEにのって、映画から飛び出したような出演者のカラフルな80年代ファッションでの登場に劇場は大盛り上がり。

KERA「映画は小学校5年生のときから8㎜で撮ったりしていました。映画というジャンルは自分の中で本当に一番やりたいことだったんです。最後の砦、みたいに思っていたのでそれを叶えてしまうのが怖かったんです。演劇のほうでいろいろやってきているので僕のことは演劇の人として認知されているかもしれないですが。芝居は役者さんと一緒に芝居を作っていくものと思っていますが、映画はそこにスタッフとともに作るものというのがあると思います。芝居と違って出来上がったものに直しはできないのが怖いですよね。僕にとって80年代はとても執着がある時代なんです。個人的な偏った80年代になっていると思いますが、僕が感じていた時代の空気を形にしたのがこの映画です。色んな80年代アイコンが映画には出てくるので、楽しんでください。」

ともさか「KERAさんが、丁寧に教えてくださって、KERAさんのやりたいことを明確に伝えてくれたのでとてもやりやすかったです。実演をまじえて演技指導していただきました。」

犬山「KERAとは無名時代から15年もの付き合いだけれど、芝居と映画は勝手が違うと思うけど、KERAの世界はなにをやっても変わらないと思います。」

蒼井「(劇中と同じ聖子ちゃんカットで登場)1980年って私が生まれる前なんです。だからイメージがぜんぜん湧かなかったんです。この髪型も恥ずかしかった。はじめて被ったカツラは今のよりももっとしっくりいってなくて。(笑)」

岡崎京子の80年代を舞台にした傑作漫画「東京ガールズブラボー」に出てくる、主人公に恋するテクノおたく少年そっくりのキャラクター・衣笠や蛭子収能の変なアニメの暴走からはじまる冒頭からぐいぐいとケラ的80年代世界に観客は引き込まれ、しんみりと年末を迎えるラストシーンで映画は幕をとじると場内には拍手がおこった。感想は当サイトレヴューページにて。
(綿野かおり)

☆『1980』は初冬、テアトル新宿にてロードショー!乞うご期待!

■作品紹介
1980