「セックス・イズ・コメディ」そこまで言っていいのか!?ブレイヤ監督、アンヌ・パリロー、ロクサンヌ・メスキダ、白熱怒涛のインタビュー
ーーブレイヤ監督を彷彿させる女性監督が主人公です。演じるのはアンヌ・パリローさんですが、監督とパリローさんはなんとなく似てますよね。それもキャスティングした理由の一つだったりしますか。
アンヌ・パリロー (わざと嫌な顔をしてみせる)
ブレイヤ監督 似ているというのは多分、後から来たものだと思うの。撮影の間、始終一緒に過ごし、監督の役を演じることによって段々と似た雰囲気になったんじゃないかしら。
この配役に関しては彼女を選んだわけじゃなくて・・・。会ってすぐ彼女が私の映画に出るってことがわかったの。彼女の目を見た途端、この映画が始まったんだと言えるわ。
−−それにしても、パリローさんのイメージを一新するような役どころですが。
アンヌ・パリロー そう、それ!よく言われるのよ。で、今まで聞いたことがなかったんだけど私の今までのイメージってどんな風だったの?
−−日本人観客のイメージはなんといっても「ニキータ」でしょうね。そして、今までの役柄が無機質だったというのではないのですが、「セックス〜」に関しては剥き出しの表情を見せるというか、存在感がリアルなんですよ。体温を持った人間らしい、いい意味で観客に近い感じの存在という気がします。
アンヌ・パリロー なるほどね。私は確かに今まで、繊細さを前面に出したような役柄が多かったかもしれない。というのも内面は弱いのに一見強くみえる女性がほとんどで。「セックス〜」の場合は逆ね。弱そうに見えるのに実際は強い。外側から見て弱そうに見えるのは、彼女が自分に自信を持ちきれないから。演じている最中、魂を裸にされているような、剥き出しの自分を見せているような、そんな気がしてたわ。だから、リアルに感じられたのかもしれない。
−−ロクサンヌ・メスキダさん(ブレイヤ監督来年公開作「ファット・ガール」にも主演)は劇中映画の主演女優を演じてます。相手役のグレゴワール・コランと仲違いしますが、実際の現場ではいかがでしたか?やっぱり仲が悪かったとか?
ロクサンヌ・メスキダ 撮影現場では仲良しだったわ(笑)。でも、撮影が終わって、ホテルに戻ったりすると喧嘩することもあった。というのも撮影中、私は静かでものすごく集中してしまう。グレゴワールは興奮してよく喋るのよ。だけど撮影が終わると彼はエネルギーを出し切ってしまって無口になってしまう。静かになるのね。私はといえば全く逆で撮影が終わると大騒ぎしてしまう。それが彼は嫌だったみたいで時々もめることもあったわ。
−−アンヌ・パリローさんに。ご自身のキャリアに照らし合わせてください。
「セックス〜」のようないざこざ、気の合わない相手との共演などに覚えは?
アンヌ・パリロー それは、たくさん(笑)!!いろんな人がいるんだから。彼らがいる場所には私の居場所がないんだって悩んだ時期もあったわ。でも、本当はそれは逆じゃないかって最近になって思い始めたの。ブレイヤ監督との出会いでどうしたいのか、何をしたいのか伝えることができるようになった。自分自身を見失わずにいられるようになったのよ。
−−監督に。撮影中、仲の悪い共演者をフォローする方法を教えてください。
ブレイヤ監督 それは・・・映画として完成してしまえば、現場の仲の悪さなんて問題ではなくなってしまうとしかいいようがないわね。ただ、今回のロクサンヌとグレゴワールの喧嘩なんてまだ可愛い方で・・・。日本でも来年公開される「ファット・ガール」という映画があるんだけど、ここにも出演したロクサンヌはイタリア人俳優とものすごく仲が悪かったの。私から言わせてもらえば、彼ってグレゴワールよりずっとハンサムで魅力的でもあった。でも、ロクサンヌは彼を「大嫌い!」と言う。一方の彼もロクサンヌを嫌っていて「あの女は僕のことをバカにするから殺してやる!」とまで言っていたのよ。撮影には既に入ってしまっていたから、なんとか2人を説き伏せた。そうして映画は完成したわ。
私はひどい監督だと時々言われてしまうのだけど俳優にも問題のある人はたくさんいるの(笑)。「堕ちていく女」に出演したフランシス・ルノーという俳優は共演女優と寝たり、メイクさんと寝たり、そういった例もあるのよ。
−−すごい話じゃないですか。そんなこと言っちゃっていいんですか!?
ブレイヤ監督 それに比べると「セックス〜」の撮影は信じられないほどうまくいったわ。スタッフとも俳優ともーーグレゴワール・コランとはちょっともめたけれどーー問題なく進行したの。
−−さて、日本の映倫についてです。「ロマンスX」は女性器にボカシが入ってしまいました。今回の「セックス〜」が日本で劇場公開されるとき、張り型といえど男性器が出てくるあのシーンは規制が入るのではと懸念する声もあるのですが。
ブレイヤ監督 だって、これはニセモノの性器。どうして検閲できるというのでしょう。日本は影武者の国のはず。男性がマスクをつけ、女性の振りをしたり、歌舞伎とかね、そんな文化が発展してきた国なのに張り型を隠すなんて、自国文化の裏切り行為になるんじゃないかしら。ニセモノを隠す?そんな例がこれまでもあったの?・・・・・・(しばし、沈黙して爆笑)ニセモノにボカシを入れるなんて、もう、想像したら、おかしくって。
実はフランスでは「ロマンスX」以来、規制がゆるくなってきたの。それまでは勃起した男性器は「Xフィルム」という制約に引っかかっていたのだけど「ロマンスX」はそこに当てはまらなくなった。16歳未満は入場禁止なんてこともなかったのよ。(取材・文 寺島まりこ)
「スロットマシンのジャックポットは撮影中に本当に出たの」「海のほとり」ビュル・オジェ独占インタビュー
ーーシナリオを読んだ時の感想と、完成した映画を観たときの感想をそれぞれ。
ビュル・オジェ とてもいいシナリオだと思ったわ。でも、映画を観たときの印象とはちょっと違うものだった。撮影に入るまで私はあの町をよく知らなくて、行ってみたら町そのものが主役だってことに気がついたのね。映像になった時、町の存在感がプラスされて、いい意味で最初の印象と変わったの。
ーーローズ役のどういう部分に惹かれましたか??
彼女はごく普通の女性よね。女優という職業はプロレタリアートとは異なるので、そういう普通の生活に興味を覚えたというのがあるわ。同時にローズには正直、驚かされもした。40年間貯めた年金をスロットマシンで使ってしまうとかね。年を取ってお金もない人たちがカジノに行ってスロットマシンをやるなんて、ある意味で自分の知らない世界だったもの。
ーー撮影中、スロットマシンでジャックポットを出したそうですが。?
そうそう!私は勝ったの!でも、初めは誰かが仕掛けたものだと思ったのよ。撮影の前に自分のお金で試してみたんだけど全然ダメだったの。いざ撮影に入ると大当たりになったものだから、スタッフともども大騒ぎしたのよ。
ーージュリー・ロペス=キュルヴァル監督の演出はいかがでしたか。?
若いのに経験のある女性だと思うわ。自分が何を映したいのか、どういう風にしたいのか、そして逆に何をしたくないのか、ちゃんとわかっている人。
この作品はカンヌ映画祭でカメラドールを受賞したのだけれど、私たちはカンヌに出席して、けれど発表を待たずにパリに戻ったの。授賞式の日にテレビをつけたら、彼女が取ったのですごくびっくりして。彼女の才能がこうした形で認められたのは素晴らしいことだと思うわ。(取材・文 寺島まりこ)