いよいよ大詰めのワールド・カップ。日本とフランスの結果には残念な思いのファンも多いとは思うけど、そんな2002年にジャスト・ミート!ご機嫌なサッカー・コメディがやってきた。『トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代』はプロサッカーの世界を舞台に、それぞれ選手とエージェントを目差す二人の若者と、凄腕エージェントでありながらもスキャンダルに巻き込まれて干された男が、業界のフィクサーである強欲エージェントに勝負を挑む物語だ。
 今回の映画祭では、凄腕エージェント役のジェラール・ランバンさんも、作品上映に合わせて来日が予定されているのだが、映画祭初日から参加されていたファビアン・オンテニエンテ監督と、強欲エージェントとして実にいい味を見せていたが、燻し銀の魅力を放つ俳優ジェラール・ダルモンさんにお話をうかがった。

Q.今回の企画の経緯は?
ファビアン・オンテニエンテ監督——最初からワールドカップに併せてという企画で、間に合わせるには少し厳しいスケジュールでしたが、チャレンジしてみようと思いました。スポーツの中でも、特にサッカーは好きでよく知っている世界でしたし、サッカー・ビジネスというものも視野にいれてみました。

Q.確かに、試合の方だけではなく、むしろ業界の裏側や周囲の人々が描かれてましたね。そういった部分は、かなりリサーチされたのですか?
ファビアン監督——かなり調査はしましたし、何年も前から専門誌を読んでいましたから、想像はつきました。ダルモンさんも、マネージャーの知り合いがいたり詳しかったんですよ。選手だけにスポットをあてると、試合で走り回ってるだけでコメディは作れません。それで周囲の人々をとりあげたというのがあります。それと、マネージャーや選手が、段々お金が入って重要な人物になっていくところを描きたかったんです。

Q.ジェラールさんは、マルベロ役を演じるに当たって参考にされた方などいましたか?
ジェラール・ダルモンさん——モデルはいます。けれども、一人の人間がモデルになっているわけではなく、何人かの人をミックスしてみました。この映画はコメディですので、コメディという見方を忘れないようにしました。現実はもっと暗く重い感じになってしまいますから。

Q.3人の主人公もそれぞれ個性的でしたが、キャスティングのポイントは?
ファビアン監督——脚本の段階からティボール役のロラン・ドゥーチェは決めていました。サッカー選手になりたいと願う若い人たちも増えていますし、そうした人たちも取り上げたいと思いました。若い選手が厳しい状況に巻き込まれていく状況を描きたかったんです。

Q.今回の撮影で苦労された点はどうでしょうか?
ファビアン監督——やはり試合の場面が大変でしたね。プロの選手にお願いして競技場で演じてもらったんですが、そうした方々はかなりタイトなスケジュールなので、時間を取るのが大変でした。5万人の観衆は、勿論デジタルでの処理をしておりますが、それでも大人数のエキストラが必要でしたのでその管理が大変でした。

Q.ジェラールさんは、今回の映画祭では『ル・ブレ』にも出演されていますね。出演作を選ぶポイントはどんな点でしょうか?
ジェラールさん——二つの作品は役の大きさも違うから、ポイントは全然変わってくるんだけれど、すごく重要なことは監督が持っているその世界観を伝えるような話だったら興味がありますね。

Q.監督のフィルモグラフィを拝見しますとコメディ系の作品が多いようですが、拘られているのでしょうか?
オンテニエンテ監督——スコーラ、フェリーニ、デ・シーカほかイタリアの作品を子供の頃から沢山観てきました。それらの作品は、社会をテーマにしながらコメディ・タッチで、真正面から取り上げるよりもエレガントだと思います。私はそうした方法が好きでこれまでもやってきましたが、それに拘っているわけではなく全然別のやり方で表現することもあると思います。コメディに拘っているわけではありません。

Q.最後にメッセージをお願いします。
ファビアン監督——この映画はお金との関係の変化を描いたもので、それをサッカーで示したかったんです。今の社会は、若い人たちが一攫千金を夢見ていますが誰でも成功するわけではない。重要なことは、昔からその世界にいる先輩にあって様々なことを受け取るということなんだ。
ジェラールさん——私は若い人たちにメッセージを送りたいと思います。スポーツがあって、その後ろにはお金があることを知る必要がある。騙されてはいけない。黒幕的な人は、素晴らしいスポーツの足をひっぱるようなことをするんです。スポーツには、対しての愛や自己への挑戦といった重要なことがありますが、同時に金儲けのための騙しや嘘もある。レベルの高いワールド・カップのようなものを観る時には、子供の純真な心を忘れてはならないと思うけど、スポーツに関わる時には用心が必要なんです。

なお、『トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代』は6月21日17時45分よりフランス映画祭横浜2002にて上映!。
(宮田晴夫)

□公式頁
フランス映画祭横浜2002

□作品紹介
トロワ・ゼロ〜サッカー狂時代