ユ・ヘジン初来日、歓喜に包まれた「コリアン・シネマ・ウィーク2025」
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今年で25周年を迎えた「コリアン・シネマ・ウィーク2025」が10月17日から20日まで、東京の駐日韓国文化院ハンマダンホールで開催された。今年は日韓国交正常化60周年を記念して、日本の小説・映画が原作の韓国映画と、2025年に韓国で公開された日本未公開の作品を特集。田辺聖子の短編小説が原作、2003年に日本で実写化され、2020年には韓国でリメイク映画も制作された『ジョゼと虎と魚たち』、2012年日本で公開された、内田けんじ監督のコメディ映画『鍵泥棒のメソッド』を原案に2016年に韓国で制作され韓国で大ヒットを記録した『LUCK-KEY』、2025年公開の韓国映画『少年テンジャンイ』、『ノイズ・マンション』の4本が上映された。
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18日には『ノイズ・マンション」に出演のイ・ジフン、19日には『LUCK-KEY」に主演のユ・ヘジンが来日ゲストとして登壇、舞台挨拶とティーチイン(観客との質疑応答)が行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。
■待ち望んだファンとの対面「本当に嬉しい」

今回、初めての公式来日となったユ・ヘジンの舞台挨拶は定員の10倍の応募があったという。デビュー以来数多くの作品に出演、悪役からコミカルな役まで、幅広い役をこなし、確かな演技力と個性的なキャラクターで幅広い世代に愛される、韓国映画を代表する俳優の一人といえるユ・ヘジン。この日の対面を待ちわびていたファンの大きな歓声に迎えられ、笑顔で登場し「こんばんは」と日本語で挨拶した。観客の歓迎ぶりに嬉しそうに笑顔で「皆さん、実物のほうがイケメンだと思ったでしょう」とジョーク交じりに話し会場を沸かせた。続けて「韓国では観客の皆さんとお目にかかる機会は多いのですが、今回、日本の皆さんとお目にかかれるのは本当に嬉しい」と日本のファンの歓迎に感謝の気持ちを伝えた。

初来日の経緯について、「今まで映画の関連で何度か(来日の)話はあったが、スケジュールが撮影と重なって、なかなか実現出来ずにいた。今回は韓国文化院の意義深いイベントということで、初めて来ることになった」と説明。プライベートでは「沖縄に旅行をしたり、ランニングや自然が好きなので北海道に行った事もある」と明かし、「今回、東京でも雨の中、さわやかな気持ちで皇居の周りをランニングしてきました」と、東京での滞在も楽しんでいたようだ。

■面白さを感じてほしい
かつては重要なバイプレイヤーとして活躍、近年は主演映画が続いているが、俳優を目指したきっかけについて「中学校時代に演劇の舞台を見て、“これがやりたい”と心から思った。その後、高校に進学して、一般のアマチュアの劇団ではなく、お金を貰って演じる商業劇団に入って、一から俳優業を始めることになった」と説明。また、作品選びの基準について聞かれると「“面白さ”や“面白み”だと思う。とても広い範囲での“面白み”だが、その中には、感動であったり、アクションであったり、コメディだったり、観る人たちに何か面白いと感じてほしい。私自身も台本を見た時に、これは面白いと感じた時、それが基準であり、目的にもなっている」と話した。
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この『LUCK-KEY』はどんなところに面白さを感じて出演を決めたのかとの問いに「コミカルで“面白み”があるところに惹かれた」と答えた。さらに、「最初に原作を見た時、日本と韓国は文化や笑いのコードが少し違うと感じた。面白さをどうやって韓国の人たちに受け入れられるように表現にするかかなり悩んだ。どういった点に悩んだかというと、内容的に現実にはあり得ない奇想天外なことが起きるが、観た人たちが有り得ないと思うのではなく、もしかしたら起こりうるかもしれないと思わせる、そういう表現をしようと悩んだ。映画が浮いているのではなく、地に足がついているような感じ、そういう点でどう表現するか悩んだ」と明かし、「でも、私自身も日本の原作を見た時、日本の方が笑うところで、沢山笑っていた気がする」とも話した。
■日本のアニメが好き

また、日本のドラマや映画を見るかとの問いに「韓国でも韓国ドラマや映画をあまり観るほうではないので、日本の作品もそんなに意識的に観ているほうではない。実は日本のアニメが大好きで、一番好きなのは宮崎駿監督の『紅の豚』。お酒を飲んでいい気分になった時に『紅の豚』を真似てポーズをとったりする。アナログ的な感性がいい。『となりのトトロ』も好き、他にも『名探偵コナン』や『銀河鉄道999』をよく見ていて、とても親近感を持っている」と話し、『紅の豚』のポーズをしてみせたり、『銀河鉄道999』の主題歌を口ずさんだりとお茶目な一面も披露し、会場を沸かせた。
■今後について

そして、今後の作品については「アイドルグループ『Wanna One』の元メンバーパク・ジフンと共演した『王と暮らす男』(原題)をすでに取り終えていて公開時期は未定だが、来年劇場公開予定している。今は近代史の作品を撮影中」と今後も公開作品が控えていている。
■観客との質疑応答でサプライズ

ファンと直接対話のティーチインでは、『フクロウ』(22)の悪役の演技をみて今までと違う感動を受けたというファンから“今後挑戦したい悪役”を問われると「特別に悪役だからやりたいとか善人だからやるということは考えていない。いい役なら何でもやりたい。悪役も面白みがある役、演じるうえでエネルギーが必要な悪役もある、特別こういう悪役だからやりたいという基準のようなものは決まっていない、どんな作品でも魅力的な役柄だったら演じてみたい」と役柄についての考えを述べた。また、「LUCK-KEY」の撮影で大変だった事について聞かれ「ラストの廃工場でのシーンは冒頭でも話したように、現実ではありえない内容をいかに浮いた感じにせず、地に足がついたような、本当にあるように思わせるかが、一番大変だった。その次にアクションシーンが大変だった」と振り返った。
ここで、突然ユ・ヘジンが観客に向かって「ずっと長く応援をしてくれていて、毎年誕生日には欠かさず手紙をくれるファンの人がいる。実は今回日本に来ることが決まった時、その人に会いたいと思っていた。もしかしたら、会場に来てくれているのでは」と呼びかけ、対面を果たすという心温まる一幕もあった。観客の見守る中、短い時間ではあったが、二人だけの会話を楽しんだ。ユ・ヘジンの人柄もあり、会場は終始温かい空気に包まれた。

最後に「こうして公式に来日して観客の皆さんにお目にかかって、皆さんの前でお話することが出来て本当に嬉しかった。私に寄せてくださった関心に心から感謝申し上げるとともに、これからも韓国文化にもさらに関心を寄せてくださいますようよろしくお願いします」と挨拶して締めくくった。別れを惜しむ多くのファンの声援に応えて、ひとりひとり、握手でお見送りというサプライズ付き、ファンにとっては忘れられない一日となった。

(レポート&撮影:小名美 比呂)