11/13(土)、シネ・ヌーヴォにて【特集企画 大江崇允、映画の術】の上映が始まった。カンヌ2021において濱口竜介監督と大江さんが共同脚本を手掛けた『ドライブ・マイ・カー』が日本映画として史上初の脚本賞に輝いた。その快挙を受けての大江監督の過去作を紹介する受賞記念凱旋上映だが、企画したCO2事務局長富岡邦彦さんは
「チラシではカンヌの凱旋上映となっているんですけど、10年前からこんな面白いやつがいるんです。10年かかりましたけどもここから大江さんの作品が広がっていくきっかけになれば」と語る。

今回上映される作品は3本。

監督・脚本を手掛けた映画デビュー作品『美しい術』。高校時代からの友人同士で共同生活を始めた女子2人。不倫中・無職&落ちこぼれ公務員という現実と理想とする自分とのギャップに中でもがく。


2011年の第7回CO2にて審査員全員一致で大賞となった2作目『適切な距離』。菊池開人さん・大江監督の共同脚本。主演の内村遥さんは男優賞を受賞。断絶した親子がお互いの「嘘の日記」を盗み読むことでコミュニケーションを紡いでゆく。


CO2のワークショップから生まれた短編『かくれんぼ』。与えられたお題としての桑田由紀子さんの脚本を演出。どこかおかしい山本一家を親戚、市役所職員が次々と訪ねてくる奇妙な一日。37分ワンカットをワークショップ生と共に作り上げた。

今回トークショーに登壇したのは大江監督、『適切な距離』で母親を演じた辰寿広美さん、主人公・雄司を演じた内村遥さん、司会は富岡事務局長。

映画『適切な距離』が生まれたのは、2010年に大阪市が若手の映像作家を育成する目的で助成金を出して映画を撮ってもらうシネアスト・オーガニゼーション大阪(通称CO2)というプロジェクトで大江監督が初監督作品の『美しい術』を持って応募してきたことに始まる。この年大江監督の他、リム・カーワイ監督、今泉かおり監督、尾﨑香仁監督、加治屋彰人監督といった5人が選出された。


●リハーサルに重きを置く

「CO2をやると決まった時点で時間が限られているのはいろんな人から聞いていたので、脚本の時間を削りたいっていうのがあったんです。リハーサルに時間を使いたかったんです。脚本に時間をかけているのはもったいないし、コケる可能性があるなと思いました。『適切な距離』は原作があるので、これを映画に翻訳する感じが一番いいのかなと思ってやりました」

内村遥さん、辰寿広美さんは大江監督がプロデューサーを務めた戸田彬弘監督の映画で面識があり出演をオファーされた。。

辰寿広美さんは『適切な距離』の撮影当時を振り返って
「私も舞台の出身なのでお稽古をしてちゃんと映像を撮るというやり方がすごく助かったんですよ。物語の流れがつながっていかないと気持ちをどうつなげていいのかわからない状態なので。お稽古は2週間くらいキャスト全員でいわゆるワークショップ的なことからやらせて頂いたので、どのシーンを撮るとなっても演技がつながるので、凄くやりやすかったです」

富岡事務局長は持論を展開。
「今の映画やドラマって芝居として形ができているものはほとんどなくてひどいなと思うことが多い。大江さんが助成監督決まった時にこれはちょっと新しい流れだなと思ったんです」


●いかにして舞台の上に存在するか

大江監督と辰寿さんの共通言語としてあったルコック・システムについて、辰寿さんは言葉で説明するのが難しいとしながら、
「体で表現するワークショップがすごく多くて、ちょっとグロテスクなこともやったりするんですけど、どうやったら自分が舞台に立つことができて、どういう存在でいられるかということをきちんと教えてくれる。例えば人物を作るために体を変形させるとか、デフォルメする演技をやったり。自分の知らない究極の部分を出してくれるようなワークショップなんです」

映画の中でも演劇学科の雄司が体験するメソッドとして登場する。

大江監督はこう説明する。
「僕の勝手な解釈ですが、喜怒哀楽についてバラバラに出すものだって解釈をされる人がいるんですけど、ルコックのシステムって喜怒哀楽を一緒に出すんです。観客も喜怒哀楽が一緒に来るから、例えば浮浪者が哀れなことをやっているんだけど、観客はなんか悲しいけど笑っちゃうとか、そういう感覚にさせることが体から出るから俳優はやりやすい」


●身体で演技をする内村遥さんにひかれた
横浜在住の内村さん。奈良の撮影は1日の出演だった。

「撮影が終わってしばらくして大江さんから電話が来て、映画を撮れることになりそうなので一緒にやりませんかって」自身の俳優としての流れについては、「18歳から芝居をやろうと決めてエキストラからいろいろやって行くんですがなかなか道がなくて。mixiで単館系の映画のキャストをよく募集してたんですね。関西で若いチームが制作中だと知って出してほしい頼みに行ったのがその戸田さんの作品で」

内村さんの登場したワンシーンを見た大江監督は驚いたという。

「奥さんが出産するシーンで年下の夫って役だったんですけど、過呼吸になって白目をむいて倒れたんですよ、本番中に。この人すげーなと思って(笑)。ちょい役できてしかもほとんど抜かれてない感じなのに、この人は身体で芝居するんだなーって。そこで興味を持ちました。頭でされる人は見ていて分かるので、越えられない壁みたいなものがあるんです。

『適切な距離』の時もロケ地の門真に2ヶ月も前に前乗りして、大阪の街に生きるところから始めてくれて。そうやって体から入ってくれる人だったので面白いことが起こるんじゃないかなって思いました」

(その2に続く)