ドキュメンタリー映画『HOMIE KEI~チカーノになった日本人~』 初日舞台挨拶
アメリカ極悪刑務所を生き抜いた男・KEIを追ったドキュメンタリー映画『HOMIE KEI~チカーノになった日本人~』がヒューマントラスト渋谷にて初日を迎えました。
初日舞台挨拶では、主人公・KEI、本作品に出演している元刑事・北芝健、監督・サカマキマサを迎えて、当時のヤクザと刑事の関係や日米の刑務所の違いについてなどについてお話を聞きました。
日時:2019年4月26日(金)
初日舞台挨拶:20:50〜21:20頃
登壇者:KEI、北芝 健、サカマキマサ
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
冒頭登壇したKEIさんは、「(このドキュメンタリーのプロジェクトを)始めてもう10年位経っているので、うちの子供も幼稚園から中学になっちゃいまして、自分も髭も頭も真っ白になっちゃって…。」と挨拶。元刑事の北芝健さんも「皆さんにお会いしたのは大体9年前」と感慨深けに挨拶。
元ヤクザのKEIさんには歌舞伎町時代があったが、刑事側の北芝さんを本ドキュメンタリーに出そうと思ったきっかけを聞かれたサカマキマサ監督は、「僕は中野で育ったんですけれど、当時(1980年前後)小学校後半に『パックマン』などのインベーダーゲームが流行り始めて、僕は6年生位の頃には歌舞伎町のゲームセンターに通っていたんですけれど、その当時は今と全然違って怖かった。ヤクザの人なのか暴力団の人なのか警察の人なのかわからないんですけれど、今とは人種が違ったのを覚えていて、KEIさんと話をした時に、全く真逆の警察の方の意見も聞いたら面白いのではないかと思ったのがきっかけです」と回答。
北芝さんが歌舞伎町について「KEIさんと大体同じ時代に生きていました。当時と今は異質の世界。」と言うと、KEIさんも、「当時は警察の人も持ちつ持たれつで今とは時代が違った。」と付け加えました。北芝さんは、「親分さんが家に来てくれよと言う時は行っていた。いい日本家屋だったり、洋室だったり色々なのですが、部屋住みの青年たちも修練の時代だった。昔のしきたり通りの世界。警察学校も、殴られ蹴られ、唾を吐かれ、一人前なのに一人前じゃないよと警察学校に戻されたり、人間性を踏みつけられる。軍人、ヤクザ、警察は皆同じ体質。同じ人種。痛みに順応しながら下積みを終えて一本になるまではどこも一緒。下積みはかなりの暴力性がある日常だった。」と当時を振り返りました。
KEIさんが、「当時警察にお金をあげて融通を利かせてもらっていた。」と言うと、北芝さんも、「拳銃がものすごく評価される。首なし拳銃が多い。所有者は誰だということになって、突き詰めていくと亡くなっていることが多いけれど、拳銃を手に入れたという評価は変わらない時代があって、今でいう忖度。貸借り。」と説明。KEIさんによると、「親しい警察官の人が点数が足りない時、拳銃が出るとノルマが達成できるから、コインロッカーに入れておいてあげるという時代だった。」とのこと。北芝さんによると、そういう警察はおびただしい数いたけれど、「1992年に暴対法ができて世の中がガラッと変わった」とのこと。北芝さんは、今のヤクザについて、「なり手がいない。あの業界も労働者不足。高齢者ばかり。」と話しました。
日本とアメリカの刑務所の違いについて聞かれたKEIさんは、「何が違うかというと、日本だと刑務官の方が上。囚人は奴隷状態。アメリカの場合は、囚人の方がおまわりより上。おまわりは囚人がいないと飯を食っていけないというのが根本的な違い」と説明。「自分がいたところは、州の刑務所じゃなくFBIの連邦政府の刑務所。毎週土日はロードショーをやっていた。刑務所でも外と同じ作品をやらないと暴動が起きてしまうんで。」と話し、観客は驚きを隠せない様子を見せました。
北芝さんは、アメリカの刑務所について研究したそうで、「刑務所の中でも、ブラックはブラックの一つの集団がある。ホワイトはホワイトだけれど、別枠として、チカーノと呼ばれているヒスパニックの枠がある。『ウエスト・サイド物語』は数十年前の映画ですけれど、あれに出てくるグループ分けと刑務所の中もほぼ一緒。どこかにつかないと死と同じ。」と解説し、KEIさんも「ギャンブルしたり薬でもなんでもできるから、支払いがちゃんとできていれば殺されることはないけれど、支払いができなくなって、結局揉めて殺されてしまう。」と驚愕の事実を話した。
また、アメリカの刑務所の長所として、KEIさんは、「大学も卒業できるし、歯医者の資格も取れるし、やる気になればなんでもできる」ことを挙げた。北芝さんも、「アメリカの刑務所では博士号が取れる。自己実現するということが日本の刑務所にはない。」と話した。
更生に関しては、KEIさんは、「覚せい剤に関してはやめる気がないとやめられないと思う。」と話し、北芝さんは、「アメリカは冤罪がめちゃくちゃ多い。日本はアメリカに比べれば50分の1位。出てからも自分の生き方は変わらないと思っている人が多い。シャブやっても、自分だけ体が傷んで終わりだろうと。反省がないからやめない。」と日米の違いを説明しました。
最後に本作の見所を聞かれたサカマキ監督は、「KEIさんは普通の人とかなり違った人生なので、自分たちと似たところなど感じていただければなと思います」と話し、KEIさんは「この映画を観て、日本の良かった時代、バブルの前の義理人情があった時代を思い出してもらえれば」と話しました。北芝さんも、「1989年の前って全然違う国だったんです。日本人自身の情緒が違うんです。バブルの頃に能力主義と言って、『金を儲けない奴はクズ』という風になっちゃった。その前の時代に生きた人たちの情緒を味わってくれれば」と話しました。
■登壇者プロフィール
KEI: 1961年、東京・中野生まれ。中学時代にグレはじめ、暴走族を経てヤクザの道へと進む。ヤクザ時代に大成功を収めるも、ハワイでFBIの囮捜査にはめられ、ロサンゼルスを始め、サンフランシスコ、オレゴンなどの刑務所を転々とし、10年以上服役。出所後は、米刑務所内での経験や勉強を生かし、ボランティア団体『グッド・ファミリー』を設立し、現在はNPO法人化された。青少年育成に関するカウンセラーとしての講演も多数。これまで『KEI チカーノになった日本人』『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人』(いずれも東京キララ社)が出版され、別冊ヤングチャンピオンにて『チカーノKEI』(秋田書店)の原作者として連載を続け、単行本も発売。1~5巻合わせて発行部数50万部突破。「水曜日のダウンタウン」(TBS)「クレイジージャーニー」(TBS)「BAZOOKA!!!」(BS スカパー!)などメディア出演多数。5月上旬、東京キララ社からKEIの歌舞伎町時代を描いたノンフィクション『チカーノKEI 歌舞伎町バブル編』が刊行される。
北芝健:犯罪学者・作家・俳優・元警視庁刑事。早稲田大学卒業後、商社に勤務するも一念発起して警視庁に入庁し、交番勤務の後、私服刑事となる。一方で鑑識技能検定にもパスし、公安警察に転属したが、巡査部長昇任試験を拒否し、巡査のまま退職。ロス市警の捜査に協力したことから、アジア特別捜査隊と懇意になり、犯罪捜査をネイティブレベルの英語で伝える語学力を身につける。現在は現場捜査の経験を活かし、複数の学校の講師として犯罪学を教える。テレビのコメンテーターとしても活躍。
サカマキマサ:ロサンゼルスで映画を学んだ後、NYへ。そしてCMプロデューサーを経て、アメリカの撮影現場で演出や制作など多種なポジションで活躍。帰国後、2003年に日本人写真家、荒木経惟氏についてのドキュメンタリー映画『アラキメンタリ』を制作。この作品は2004年に日本全国劇場公開、続いてアメリカやヨーロッパにおける劇場公開・DVDリリースと展開。ディスカバリーチャンネルにてクリエイティビティブディレクター/プロデューサーを経て、現在は海外作品の制作などをしている。
■映画情報
出演 KEI / 監督 サカマキマサ / 撮影 加藤哲宏 / 編集 有馬顕 大畑創 Travis Klose 音楽 原夕輝 / プロデューサー 中村保夫 YAS/プロデューサー MASA 戸山剛 /原案 東京キララ社『チカーノになった日本人』 『アメリカ極悪刑務所を生き抜いた日本人』 /宣伝協力 秋田書店 /配給 エムエフピクチャーズ /制作プロダクション・配給協力 マウンテンゲート・プロダクション /2019年|日本|カラー|5.1ch|ビスタ|DCP|73分/©「HOMIE KEI~チカーノになった日本人~」製作委員会 HP http://homie-kei.com/