新進の30代俳優二人が5年の月日をかけて完成させた映画『足りない二人』のプレミア上映が、2019年2月21日、新宿ピカデリーで行われた。
上映前の舞台挨拶には、司会の高木美佳とともに、本作主演・監督・脚本の佐藤秋と山口遥が登壇。さらに、「自分たちの活躍の場を作るために映画を作った」という佐藤と山口の姿勢を称える映画パーソナリティの伊藤さとりがゲストに駆けつけ、軽快なトークで会場を盛り上げた。
司会者から、劇場初公開を新宿ピカデリーの大舞台で迎えることを想像していたか問われた佐藤は、「上映を願ってはいましたが、こういう風に実現できるとは思っていませんでした。ここに立てているのは色々な人たちの支えがあったからです。本当にありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

山口は、「新宿の大きな映画館での上映を公言してはいましたが、くじけそうになる瞬間も多々あったので、こうして皆さんに映画を見てもらえる機会ができて本当に嬉しいです」と喜びを表現。

伊藤は作品の感想について、「最初は、映画監督をしたことのない人の作品ということで、かなりのインディーズムービー寄りの内容なのかなと思ったのですが、冒頭のシーンから惹き付けられました。本作はある意味恋愛映画で、同じ夢を持つ二人が恋をすると大体うまくいかないことが多いじゃないですか。それを淡々と描きながらも、女心と男心のすれ違いを表現している点が良かったです」と熱く語った。

特に印象に残ったシーンとして、共同で漫画を描いている主人公の小山内(おさない)と楓子(ふうこ)が一緒に入浴しながら仕事の話をする場面だと述べ、「その関係性がリアルで痛々しくて、そのさらけ出し具合が、監督として演出も素晴らしかったです」と続けた。さらに、対話シーンが魅力的であることに触れ、「参考にした映画は?」と、佐藤と山口に質問。
「男女の会話という点では、溝口健二監督の『残菊物語』、ちょっと面白いなと思う会話は、木皿泉さん脚本のドラマ『すいか』ですね」と佐藤が答え、山口が「あとはリチャード・リンクレイター監督の“ビフォア”三部作が好きで、ドラマだと坂元裕二さん脚本の作品には影響を受けていると思います」と明かした。

また、本作のタイトルにちなんで、「日本で俳優を続ける上で自身に“足りない”と思うことはありますか?
また次回も映画を作るとしたらどんな映画作りがしたいですか?」と質問する伊藤に対し、佐藤は「場数が足りないと思っています。映画作りに関しては、今までは選ばれる立場だったのですが、これからは選ぶことも出来る俳優として映画作りに関わっていけたらいいなと思っています」と、思いを述べた。

山口は、「日本で俳優をする上で足りないのは、従順さですね。そこは自覚しています。
映画はこれからも作りたいのですが、作るだけなら色んな人がやっているので、ちゃんとお金に変えていけるようにしたいです」と、今後の展望についても触れた。

「この映画を観て、背中を押される人もいるはず。たくさんの方の協力があって出来た作品だと思うので、多くの方に広まってほしいですね」という伊藤の問いかけに、「まずは北海道での上映を行ってから、全国展開したいです」と口を揃える佐藤と山口。
これまでに、クラウドファンディングでの目標達成、配給会社の設立、そして念願の新宿ピカデリーでの上映を実現した二人の俳優の新たなスタートの日となった。

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