数々の映画、ドラマに出演し、名実ともに日本を代表する俳優・山田孝之が、一切出演せずに裏方へ徹した初の全面プロデュースに挑戦し、映画『キングダム』などへ出演する阿部進之介が長編映画初主演を務めた映画『デイアンドナイト』。完全オリジナル作品である本作が問いかけるテーマは「人間の善と悪」。家族のいのちが奪われ、自らの善悪に翻弄される者たちの物語は、混沌とした現代で強く生きることの厳しさをも描き出します。監督を務めるのは、ドラマ「100万円の女たち」や映画『青の帰り道』などを手掛ける若手最注目監督とも呼び声高い藤井道人。山田、阿部と共に同世代のメンバーが熱い思いをぶつけ合い、2017年11月3日にクランクイン。秋田県秋田市・鹿角市・三種町で同年11月末まで撮影が行われ、こころ揺さぶる人間ドラマが完成しました。この度、本作の公開記念イベントが1月13日(土)、プロデューサー・山田孝之の故郷・鹿児島で実施致しました。

映画『デイアンドナイト』鹿児島先行上映舞台挨拶
【日程】1月13日(土)【場所】薩摩川内市国際交流センター 他
【登壇】阿部進之介、藤井道人監督、山田孝之プロデューサー

日本映画界を代表する俳優・山田孝之が完全に裏方に徹した初の全面プロデュース映画『デイアンドナイト』の公開記念イベントが山田の故郷・鹿児島県にある薩摩川内市国際交流センターほか全5か所で開催。山田に加え、主演・企画を務めた阿部進之介、本作でメガホンを取った藤井道人監督とともに舞台挨拶に登壇し、のべ1,500名もの観客を沸かせた。

阿部、藤井監督、プロデューサーの山田が上映終了後にステージへ登壇すると大きな歓声に包まれた。主演の阿部は冒頭「孝之の地元に来て、すごく温かく迎えてくださって感動しております。」と挨拶。15歳まで薩摩川内市で過ごしていた山田はファンらの熱烈な歓迎ぶりに「ただいま!」と第一声。会場から大きな歓声が響くと「こういった形で戻ってこれて本当に幸せです。こんなに集まっていただき、映画を観て頂いて本当にうれしいです。」と笑顔をみせた。

オリジナル作品である本作は、脚本完成までに4年の月日を数え、28稿にも及んだという。阿部は「藤井監督の作品を観ていて、いつか一緒に仕事がしたいと思っていたので、僕から「飲みに行きましょう」と監督に近づいたのが始まりです。お互いのことだったり、好きな映画の話だったりをしていくうちに企画開発が始まっていった。そのあとすぐに孝之が参加してくれた。」と経緯を振り返った。当時、阿部演じる主人公の明石と、それ以外の役柄を山田が演じながら作っていたという特異な脚本の制作過程を藤井監督は「普段、物語を作っているときと違って主演の阿部さんと山田さんとゼロから物語を作ってきているので、撮影中、俳優さんからシーンに対してどんな質問が投げかけられても答えが明確だった。なので、コミュニケ―ションの部分で苦労した点は無く、俳優部さんと高め合って面白いシーンを作ることが出来た。」と本作ならではの作品づくりに自信をのぞかせた。

昨年末に行われた完成披露試写以降、SNSでは「考えさせられた」「正しいって何だろう?」との感想も多くあがっている。本作のテーマは「人間の善と悪」。このテーマは企画スタート時から変わらなかったようで、山田は「『大切な人が目の前で殺められたとしたら、どんな行動をとるだろうか?』とふたり(阿部・藤井監督)に聞いてみると、全員がまったく違う答えになり、『なぜそう考えたのか?』の会話が広がっていった。ということは、こういったテーマの映画を作れば、観た人たちが、自分自身を見つめ直したり、考えたり、友人や家族、恋人と会話するキッカケになると思った。」と語ると阿部と藤井監督は同調するように頷いていた。続けて、「俳優さんの芝居がすごかった」「キャステングはどのように?」との声に対して山田は「脚本を作って、この役に合う方は?とキャスティング会議を重ねた。オーディションで決定した奈々(清原果耶)は、ひたすら待っていた。」とプロセスを披露した。

そして、500名の応募の中かからヒロイン・奈々役の座を射止めた清原について山田は、「(藤井監督は)清原さんのことを怖がっていたよね?」というと、「『清原さん怖かったです。』というと語弊なんですが、こんなに芝居の上手い15歳と仕事をしたことがなかったので。日常はいつもニコニコしている女子高生なんですが、『よーい!』の声が掛かり、本番がスタートするスイッチの入った女優モードの清原さんは、まるで大ベテラン女優のようだった。」とその演技力の高さを藤井監督も絶賛。

さらにRADWIMPSの野田洋次郎が作詞・作曲・プロデュースを行った本作の主題歌「気まぐれ雲」に清原を起用したことについて山田は、「キレイな声だった。映画の最後は奈々のシーンで終わるのでもうちょっと、補足というか、奈々の気持ちを聞きながら2時間強の物語でキャラクター達に起こったこと表情や感情を思い出してくれる時間になればいいなと思った。」と明かした。一方、阿部は、奈々の相手役となる男子高校生のオーディション時に、奈々役を山田が演じていたことでオーディションに来た子たちが戸惑っていたエピソードを披露すると会場からは笑いも。すると阿部は「ただ、奈々は一緒に作ってきたキャラクターなので、だんだん芝居する孝之が本当に奈々に見えてきたのがムカついた(笑)」と山田の演技力を物語るエピソードを打ち明けると会場からは笑いが起こっていた。

1月26日の公開を控え、一足先に鑑賞した会場へ「もう一度作品を楽しむため」のポイントについて、阿部が「劇中にニュース報道のシーンが出てきます。何かしらの事件が起こった時、ニュースで知ることが多いと思いますが、そこで報じられていることはひとつの側面で、そこをもうすこし掘り下げたものが今回の映画だと思います。ひとつのニュース報道にはたくさんの人たちが関係している。その人たちに何が起こって、どういう感情だったのか、そんなことを考えながら、もう一度観ていただくと違った見え方になるのかなと思います。」と語れば、
藤井監督は「登場人物がたくさん出てくる中で、「どの人が正しい」とか「この人は嫌だな」という思いを感じた方は、それぞれの“善と悪”の価値観に照らし合わせて観て頂いたと思いますが、逆の立場の人物にフォーカスして作品を観てもらうと、一度目とは見え方が違ってくるのかなと思います。また映像的な話になりますが、風をモチーフに映画を作りました。「空気」とも表現されるかもしれません。「善と悪はどこからやってくるのか」。すなわちどうやって運ばれて来たのか?という疑問を、風車や鳥のシーンなどで表現しました。細かいシーンに色々なヒントが隠れておりますので、ぜひそういうところも注目して観て頂ければと思います。」と続けた。

そして、山田は「基本的には、主人公の目線で物語を追っていくと思いますが、登場人物の様々な感情が複雑に入り混じる作品にはなっているので、次は別のキャラクターに注目して観てほしいと思います。俳優が芝居をする時、「本編には出ていないシーンをその人物はどうやって生きているか?」ということをすごく考えている。その部分を考えることは大変なのですが、そこが楽しい部分ではあります。そういう見えない部分を考えていただくと、よりそのキャラクターのことが見えてきて楽しめると思います。」とそれぞれの見方を指南する場面も。
さらに山田はイベントの最後に「かっこいいですよ、芝居。俳優は誇れる仕事だと思いました。今回、みなさんの芝居を間近で見て、僕も俳優だと、胸を張って言おうと思いました。」と、俳優としてでなく、プロデューサーとして客観的な視点で現場に参加したことで気づいた想いを打ち明けると、会場からは大きな歓声が響き、イベントは幕を閉じた。