現在シネ・ヌーヴォにて公開中のリム・カーワイ監督の新作、『どこでもない、ここしかない』と、2010年に制作、公開されて以来毎年クリスマスの時期に上映されている『新世界の夜明け』。舞台挨拶の様子を紹介したい。

大阪が舞台『Fly Me To Minami 恋するミナミ』、香港を舞台にした『マジック&ロス』など、世界各国で映画制作をおこなっているマレーシア出身のリム・カーワイ監督。

●新作の『どこでもない、ここしかない』は、バルカン半島で暮らすトルコ人夫婦の物語。連日観客と交流しているリムカーワイ監督は、12/22の舞台挨拶にて、物語のバックボーンについてこう語った。

「実はフェデルは、スロベニア人でもないマケドニア人でもない、トルコ系というルーツを非常に大事にしています」

「そういう意味では自分とちょっと似てるんですね。僕はマレーシアに生まれた中国系ですけども、国籍はマレーシアで、でも僕の環境というのは小さい頃から見てるテレビの番組、聴いている歌とか、全部香港とか台湾とか中国ですね。マレーシアのテレビ番組とかも見ないし歌も聴かない、喋る言葉もマレーシア語でもない中国語だったり中国の方言だったりしていて、中国の旧正月とか、中華文化の ルーツを大事にしていて、しきたりに生きている。中国系のコミュニティの絆もすごく強くて」

「最初は自分が 中国人特有かと思っていたんですが、バルカン半島に入って、フェデルというトルコ系の人と知り合って、さらに彼のコミュニティに入って、彼はイスラム教なので宗教を除いてになりますが、文化に対する意識、あるいはアイデンティティーに対する意識、メンタリティや考え方がすごく中国系に似てるんですね」

「国家という考え方を持ってなくて、自分のルーツを大切にして生きている人が世の中にはいっぱいいる。その人にとっては、どこでもない、ここしかないという考え方で生きていくんじゃないかと思うんですね。 この映画のタイトルはそういう意味合いで作ったんです」

●リムカーワイ監督特集上映の『新世界の夜明け』では、北京に暮らすお嬢様のココが憧れの日本のクリスマスでクリスマスを過ごそうと来日するが、思いがけず新世界で冒険することになる。
12/25の『新世界の夜明け』の舞台挨拶では、リム監督とココと交流する小学生役で出演した友長光明さんが舞台挨拶に登場。出演当時は小学生だった光明さんも高校3年生となった。

クリスマスの特別プレミアとしてリム監督の影響で映画監督を目指す光明さんが、昨年初監督作品として撮った3分間の『空港』が上映された。

空港で次々と飛び去る飛行機の姿を見送る高校生の姿を描いた作品。

編集を担当したリム監督は
「1年ぶりに見たんですが結構いいですね。この後が気になる」と期待を寄せた。

撮影時の思いについて光明さんは、
「当時色々やるせないと言うか、どうしたらいいんだろうとか、将来に不安があったので、 それを映像に表せたらと言うことでした。人生を描いていきたいと思っていますが、僕の人生なんで、今後どうなるかはまだわからないです」
と語った。
大学では東アジアの文学について学ぶ予定という光明さん。小学生の頃は中華系の学校で韓国人、中国人など東アジアの人々と学んで来たため、知識をもっと深めたいという。

「リム監督みたいにいろんな知識を兼ね備えて 色々な映画で表現していきたいなと思っているんで、映像学部も一応あるんですけども、映像学部には行かずに知識の幅を広げようと思いました」
そんな光明さんに、リム監督は、
「僕は落ちこぼれだから真似しない方がいいかも(笑)」
と、飄々と笑った。

高校生3年生のお客さん、リピーターのお客さん、Facebookを見て興味を持ったというお客さんと交流を深めた2人。10周年記念には何かイベントを、と山崎支配人と共に宣言した。

上映後に、今回が8回目の鑑賞というお客さんにリム監督作品の魅力を伺った。
「我々にない視点で大阪を見せてくれるところですね」

今後もリム監督の作品に注目していきたい。
『どこでもない、ここしかない』、リムカーワイ監督特集上映は12/28までとなっている。