タンゴの革命児アストル・ピアソラの半生を、生前のインタビューや彼の息子と娘の言葉で掘り下げていく珠玉のドキュメンタリー映画『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』がいよいよ 12 月 1 日(土)より公開。これを前に 11 月 30 日(金)、代官山 蔦屋書店にて、日本のピアソラ研究の第一人者で、本作の字幕監修を務めた斎藤充正氏と代官山 蔦屋書店ジャズ・コンシェルジュの及川亮子氏によるトークセッションを開催! イベントの最後にはサプライズで、本作のメガホンを握ったダニエル・ローゼンフェルド監督も来場し、会場は大きな盛り上がりを見せた。
ピアソラを「35年以上も追い続けている」という斎藤さんは、この映画の魅力について「いままでもいろんな映画がつくられてきたけれど、ミュージシャンたちが多角的に語る作品が多かったんです。この映画は、ピアソラの息子のダニエルと娘のディアナの 2 人の言葉とピアソラの生前のインタビューを核に構成されていて、視点は限られているけど、深く描かれている。プライベートや演奏シーンでも、私も初めて見るような珍しいものもありました。ピアソラの生きざまが見えてくるいい映画に仕上がっていると思います」と称賛する。及川さんも「ファンから見た視点ではなく、息子と娘の視点で描かれているところが特徴」とうなずき、斎藤さんも「いいところも悪いところも見ているから、神格化されていない“人間・ピアソラ”がいるところが一番の魅力」と同意する。
この日のトークは、斎藤さんのチョイスによる、ピアソラのいくつかの楽曲を聴きながら進行。ピアソラがタンゴにのめり込むきっかけになったという楽曲「老いた虎」に始まり、“アンチタンゴ”の曲として人々から反発を食らったという「場末」、ピアソラの生涯を決定づけたという「勝利」を全く異なるアレンジ5種を聴き比べた。

また、斎藤さんは映画の中で使われている曲のリストの中で<1 曲だけ聴いたことがなかった>という楽曲で「10 日前に同じ曲の別の音源を手に入れました。ここでしか聴けません!」という貴重な音源による「マンドラゴラ」という曲も流された。同曲は映画の中で、ピアソラが家を出て、家族を捨てるシーンで使われており、ピアソラ自身は最終的にボツにしたという曲だが、斎藤さんは「監督はよくこの場面にこの曲を使ったと思います。さすがです。
これだけで映画の価値がある!」と監督のセンスを絶賛した。
そして最後に、ピアソラの代表曲「リベルタンゴ」の 1983 年のウィーンでのライブでの演奏が流され、会場全体がピアソラの世界に浸った。曲が終わり、トークセッションも終了というタイミングで、来日中のダニエル・ローゼンフェルド監督がサプライズで登場!

温かい拍手で迎えられたローゼンフェルド監督は、覚えたての日本語で「こんばんは。今日はありがとうございます。日本語が話せなくてごめんなさい(笑)。日本に来られて嬉しいです」と挨拶。そして「昨日、映画にも登場するピアソラの息子ダニエルと話をしたんですが、彼も日本でのこの映画の公開をとても喜んでいました。というのも、みなさまご存知のように、ピアソラは東京でもライブを行なっておりますので」と明かした。

さらに、映画について「彼の家族にとっても初めて見るような貴重な資料が使われています。
この映画は、音楽はもちろんですが家族の“愛”を描いた作品です。ピアソラは、音楽を通して“言葉”、自分なりの表現を作ったアーティストであり、彼の音楽を聴けばその人となりがわかります」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。
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映画の初日を迎えた翌 12 月1日、ダニエル・ローゼンフェルド監督は Bunkamura ル・シネマへも舞台挨拶に登壇。
「わたしはピアソラとは、音楽で言語を作った人だと思います。始めの5小節を聴くと、これはピアソラの曲だということが誰でもわかる。そんな音楽を、もはや言語を作り出した人なのです。いま、こんな前衛的な音楽を作る人物は他にいるだろうか?いや、他にいません。自分自身で問いかけながらも考え続けていることのひとつです。製作中、ダニエル(ピアソラの息子)は父ピアソラの肉声と一緒に流れる姉ディアナの肉声を聞くとより感傷的になっていましたね。当時のことを思い出していたのだと思います。」「タンゴは非常に力強い音楽。その力強さを発揮できているのは、アルゼンチンは移民でできた国だから。自分の祖国に感じる郷愁の想いを力強さへ変えているのです。今タンゴを奏でている人々は皆孫の世代で、そのルーツは初めてアルゼンチンへ渡ってきた人々です。ピアソラのルーツを描いた映画であるとともに、この作品は移民の物語でもあります。」と祖国を思うピアソラと重ねあわせた本作への熱い想いを伝え、舞台挨拶を終了した。

●映画『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』 Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開中!
公式サイト:https://piazzolla-movie.jp/
●代官山 蔦屋書店/映画『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』公開記念 Special Exhibition
日時:11/23~12/12 まで
場所:蔦屋書店 3 号館 2 階 音楽フロアにて開催中
詳細:http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2018/11/-special-exhibition.html

監督:ダニエル・ローゼンフェルド 出演:アストル・ピアソラほか
2017/フランス・アルゼンチン/英語・フランス語・スペイン語/カラー(一部モノクロ)/94 分 /配給:東北新社 クラシカ・ジャパン
国際共同製作:クラシカ・ジャパン/後援:アルゼンチン共和国大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京
クレジット: ©Daniel Rosenfeld/© Juan Pupeto Mastropasqua 公式サイト:piazzolla-movie.jp