世界24か国語に翻訳され大ベストセラーとなった、アンドリュー・ソロモン著「FAR FROM THE TREE」の原作を、エミー賞受賞監督レイチェル・ドレッツィンが映画化したドキュメンタリー『いろとりどりの親子』。自閉症や、ダウン症、低身長症、LGBTなど、さまざまな“違い”をどう愛するかを学んでいく6組の親子の姿を映しながら、マイノリティとされる人々の尊厳と権利に光を当てた本作は、しあわせの形は無限に存在していることを、私たちに気づかせてくれます。
 このたび映画の公開を記念し、上映後に、精神科医の星野概念さん、そしてタレントの奥浜レイラさんをお招きし、トークイベントを実施。

☆映画『いろとりどりの親子』 公開記念 新宿武蔵野館トークイベント
日程:12月2日(日)/場所:新宿武蔵野館
登壇者:星野概念さん、奥浜レイラさん

 映画を観た感想について、まず星野概念さんが「ひとつは、心の居場所について、もうひとつは優しさについて考えた。」と語り始め「映画では、ダウン症のジェイソンが、『アナと雪の女王』のエルサの格好をして、この瞬間が凄くしあわせなんだみたいなことを言う。個人的な事だけど、自分のなかで好きなことがあることは、心の居場所だと思う。そういうことを追求したりすると、仲間が出来たりもして。あとは、低身長症のロイーニが、低身長の人達が集まる『リトル・ピープル・オブ・アメリカ』に参加して、クラブで踊ったりとか。(その様子をみると)みんな一緒なんだと感じた。」続けて「優しさについては、わかろうとすること、放っておかないことだと思って。特に、自閉症のジャックが初めて、文字盤を指して対話するシーン。親もそれまでジャックの想いをわかろうとして、遂にそれが結実した瞬間。両親も息子とコミュニケーションがとれたことで、それまでの孤独感が緩和したことを感じ取れた。」と精神科医ならではの視点で、親子の姿についての感想をコメントしました。奥浜さんはこのトークイベントの上映回で、再び映画を鑑賞したとのことで「最初に観たときには“障がい”ということに目がいきましたが、2回目は“親子”に目がいった。とくに自分の身近で思い出すと、話が通じない人や、どう対話すればいいか分からないことは意外とある。大人になればなるほど話が通じなく、遮断してしまうけど、この映画はその対話のあり方をみせてくれるところに、有意義だなと感じた。」とコミュニケーションのあり方を学んだと振り返る。星野さんもそれに同意し「日常生活で伝わらなさは誰にでもあって。それについて向き合うことが大事だなと思わせてくれる作品。」と映画の魅力について盛り上がりました。


 一方で奥浜さんは「はじめに観た時、自分では障がいを持っている人に対して、理解していたつもりだったが、自分の中にも偏見があり、かわいそうだと無意識に思っている、“自分と違う人”と思っていたことに気づき、ものすごく失望したんです。」とコメント。星野さんは「仕事のうえで障がいを抱えた家族と接することはあるが、子どもが犯罪を犯してしまった家族については、この映画で初めて出会った。(犯罪を犯してしまうなんて)家族も、本人も、想像もしていなかったこと。わかろうとしても、分かりきれない。そういうことも今後、わかっていきたいことだなと感じた。」と述べると、奥浜さんはレイチェル・ドレッツィン監督が先月、来日した際のトークイベントで、司会をつとめたときに話題に上がった、なぜリースの家族を入れたのか、という話について「監督は、(映画は)先天的な違いの話ではあるけど、誰もがなりうる後天的な違いが起こることもある。(子どもが犯罪を犯してしまった)家族がいるのと、いないのでは、この映画の手触りは違っていたと思うってお話をされていて。」と話していたことを振り返り、それについて星野さんも「監督凄いっすね…。」としみじみと感心した様子でした。
 最後に星野さんは映画について「孤独っていうのは誰にでもあり、それについて、更によく考えるようになった。いろんなことを話したり考えたり、せざるを得ない作品。」奥浜さんは「低身長症のジョセフとリアのカップルが座ってお弁当を食べていて。ジョセフが『これが小人の王国の食事風景です。』と自然番組のナレーションみたいに言うシーン。(その様子を見て)なんだ、自分たちと変わらないんだな。同じところだってあるし、違うところもあるのかもしれないけど、そういうジョークを言って、笑い合ったりしていいんだなと、和んだんですよね。違いを持つ他者についてどう受け入れればいいかについて、沢山ヒントが隠れていて。時間がかかるかもしれないけど、少しずつ速度を一緒にしていくと、わかりあえることがあるんだなぁって思えたのが、この映画が希望だなぁと。」星野さんも「これ、もう僕話すと止まらないですね。(会場にいる)観客全員で、この後カフェとかロビーでもっと語りたいですね。」と述べ、なごやかな雰囲気でイベントが終了しました。

監督:レイチェル・ドレッツィン 
原作:アンドリュー・ソロモン著「FAR FROM THE TREE Parents, Children and the Search for Identity」
音楽:ヨ・ラ・テンゴ、ニコ・ミューリー
2018年/アメリカ/英語/93分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/原題:Far from the Tree/日本語字幕:髙内朝子
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©︎2017 FAR FROM THE TREE, LLC 提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド