新鋭ジャスティン・ティッピング監督の長編デビュー作映画『キックス』(12月1日公開)。このたび、映画の公開を記念して日本ではまだ数少ないHIPHOPムービーを手掛けた2人の映画監督によるトークイベントが行われました。本作の主人公の育ったオークランドの環境や、その成長を描いた本作の魅力について語ったほか、両監督の作品を含む、HIPHOPやブラックカルチャーを描いた作品が、今後国内でどのように受け入れられていくべきなのか、HIPHOPムービーの未来についての考えも飛び出しました。

【イベント概要】
■日程:11月27日(火)19:00イベントスタート
■場所:渋谷シネクイント
■登壇者:三宅唱(『THE COCKPIT』監督)、宮崎大祐(『 大和(カリフォルニア)』監督)
       司会進行:樋口泰人(爆音映画祭、boid主宰)

本作の感想を聞かれた宮崎監督は「最新のHIPHOPのスタイルやファッションが劇中に散りばめられているのがよかった。HIPHOP映画は、豊かではない主人公が高みへとのし上がっていく話が多いが、『キックス』はある種の冒険譚になっていて、新しいHIPHOP映画の形を描いたのではないか。」と物語の展開について、対する三宅監督は「こんな映画もあるんだ!と感じた。今まで観てきた映画とは少し違ったので、面白さと戸惑いがあった。普通は物語を引き立てるために音楽があるはずなのに、『キックス』は音楽がすげー流れる。1枚のアルバムを見ているような作品だと思いました。」と劇中で用いられる楽曲の多さについて触れ、本作を評価しました。

また、本作のもう一つの特徴として「スローモーションの多用」を挙げた2人。宮崎監督は「こんなに多い映画あるかな、というくらいスローモーションが多い。HIPHOPのMVにはスローモーションが多いので、それに慣れていると普通に見えるんですが。アメリカのヒップホップのMVの流行りも取り込んでいると思った。」とHIPHOPのミュージックビデオとの共通点を挙げ、三宅監督は「車のパーティシーンがあって。幸せなシーンのスローモーションなのですが、そのシーンがずっと続けばいいのにと思っていました。」と、本作の好きなシーンとして、スローモーションを使ったシーンを挙げた。また、本作のHIPHOP映画としての魅力について三宅監督は、「HIPHOPって言葉を言い換えるじゃないですか?スニーカーをキックスと呼ぶことで、ただの靴が特別なキックスになる。特別な場所に行ける魔法みたいな力を持っている。」と語り、「それがHIPHOPですよね。」と宮崎監督も同意した。また、三宅監督は「この映画を観る前に、キックスを奪われて取り戻そうとする少年の成長物語なんて、どこにでもあるじゃんと思っていたけど、主人公の住むオークランドという場所がまず新鮮に見えた。

映画とか音楽は、今ここに流れている時間から離れたくて観たり聞いたりするものだと思うので、この映画では違う時間を体験させてもらえたと思います。」と本作の舞台となったオークランドという地についても触れ、実際にオークランドへ足を運んだことがあるという宮崎監督は「(オークランドへは)以前怖いもの見たさで行きました。本当に怖かったです。駅を降りて野球場へ行くまでの道が全て金網で囲われていた。本作でもよく金網が出てくるので、とても印象的だった。」と意外な注目ポイントについても語ってくれた。
最後に今後の日本でのHIPHOP映画の受け入れられ方について宮崎監督は「これからの時代、HIPHOPが世界を支配していくと思う。HIPHOPには意外と保守的なルールがあって、用語やマナーを知って、HIPHOPにおけるリテラシーが深まるとメチャメチャ楽しくなる。見た目と違ってオタクなジャンルだと思っていて、その入り口としてこの映画はとても素晴らしいと思うので、『キックス』をきっかけにHIPHOPへの理解が広まれば、HIPHOP映画のヒットにも繋がっていくのではないか。」と今後への期待を語りました。


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【公開表記】
12月1日(土)より、渋谷シネクイントにてロードショー ほか全国順次公開