この度、全米批評家協会賞や、ニューヨークタイムズ紙のベストブックに選ばれ、世界24か国語に翻訳され大ベストセラーとなった、アンドリュー・ソロモン著「FAR FROM THE TREE」を原作にしたドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』を11月17日(土)新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開いたします。
 10年をかけて、身体障がいや発達障がい、LGBTなど、親とは“違う”性質を持った子を抱えた300以上の親子に取材し、家族の本質を探った本書を、これまで数々の社会派ドキュメンタリー作品を手掛けてきたエミー賞受賞監督レイチェル・ドレッツィンが、深い感銘を受け映画化。自閉症や、ダウン症、低身長症、LGBTなど、さまざまな“違い” をどう愛するかを学んでいく6組の親子の姿を映しながら、マイノリティとされる人々の尊厳と権利に光を当てた本作は、しあわせの形は無限に存在していることを、私たちに気づかせてくれます。
 このたび、本作の公開にあわせて初来日したレイチェル・ドレッツィン監督と、ミュージシャンであり、「#こどものいのちはこどものもの」では児童虐待撲滅の声をあげ、本作に向けて応援コメントも寄せられている坂本美雨さんをお招きしたトークイベントを行いました。

11/8(木)開催 『いろとりどりの親子』【公開記念トークイベント詳細】

■登壇者:レイチェル・ドレッツィン監督、坂本美雨さん(ミュージシャン)
■日程:11月8日(木)トークイベント19:00〜19:30
■場所:ユーロライブ (渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)

大勢のお客様に拍手で迎えられ登壇したレイチェル・ドレッツィン監督と坂本美雨さん。はじめに「日本に来られたこと、そして、日本の皆さんに観ていただくのをとても楽しみにしています。よろしくお願い致します。」と挨拶した監督。坂本さんも「わたしが何故ここにいるかというと、この映画のファンだからです。2ヶ月ほど前に、お友達のインスタグラムにこの映画について書いてあり、観たいと思いました。その方にすぐ「観たい!」と連絡し、いち早く観せていただきました。」と続けて挨拶し、和やかなムードでトークイベントが始まりました。
 映画についての感想を聞かれた坂本さんは「“これは、日本の一人でも多くの人に見てもらわなくてはいけない”と、使命感のようなものを感じて、勝手に広報活動をしています。(笑)」と、作品に魅了されたと話した。さらに、ライブでのチラシ配布、パーソナリティを務めるラジオ番組での紹介など、本作を意欲的に応援する理由を「私には3歳の娘がいて子育てに奮闘中なのですが、子育ては、もう一度自分を見つめ直して、向き合い続けることだと思うんです。自分とは全く別の人間である子どもと知り合っていくプロセスによって、写し鏡のように自分のことも教えられる。子どもを自分の分身のように思う人もいるけれど、私は完全に“違う”人間だと感じていて、まさしくそのことがこの映画では描かれていました。映画では否が応でも“違い”をつき突きつけられている親子達がモデルになっているけれど、身近な例はどんな人にも、どんな家庭にも、どんな親子にもあるんじゃないかと思いました。」とコメント。それをうけて監督は「大きなハートを持っているからこそ、この映画にここまで反応してくれているんだと思います。映画のサポートをしてくださって、感謝の気持ちでいっぱいです。」と笑顔で返した。
 また3児の母でもある監督は「子育てというのは、ある種のアートだと思います。皆やり方も違って、それぞれが学びながら、子どもを育てていくものなのではないでしょうか。今回登場する親は、自分の想像とは違った形で産まれてきた子どもたちを前に、手探りでその方法を見つけていきます。この作品自体が私達全員に対して、“子育てとは何なのか?”ということのメタファーになっているようにも思います。私も子育てを始めてから、随分と変化がありました。最初の頃は“自分が子どもたちを形作っていくんだ”“影響を与えていくんだ”と意気込んでいましたが、歳を重ねるにつれて“彼らは自分たちの道を歩いているから、それを尊重しなくては”と思うようになりました。今、自分が親としてできることは逆に一歩下がって見守り、あるがままの姿の彼らを祝福し、受け入れることではないかなと思います。」と話しました。

 最後に、これから映画を鑑賞する観客に対し監督は「この作品はエモーショナルであると同時に政治的、時事的な側面も持っています。ご存知のようにアメリカでは色々な葛藤が起きていて、その核心にあるのは社会がこれからどのくらい包括的でありたいのか、どのくらい多様性を持つ社会にしたいのかということだと思います。日本での滞在は数日ですが色々な方からお話を聞いて、様々な問題に向き合っているんだなと感じました。何が「同じ」で何が「違う」のか、そのふたつの関係性はどうあったら良いのか、何が「普通」で何が「普通じゃない」のか、誰がそれを決めるのか、何かに属することはどういうことなのか、それらを問いかけている作品だと思います。」とメッセージを送った。
 坂本さんは「「FAR FROM THE TREE」という原題もすごく重要だと思っています。「りんごの木の実はそんなに遠くには落ちない」ということわざを逆説的にとったもので、「遠くにも落ちる場合もあるよ」という意味合いのタイトルだけれど、「“遠くに落ちた理由”の責任は親にあるわけじゃない」というのも大きなメッセージのひとつだと思いますね。日本の文化では“子どもが何かしたら親のせい”というのがあると思います。映画では先天的に障がいがある場合も、また後天的に子どもが何かしてしまったという親子もでてきます。その全ての原因が親にあるわけじゃないということを、多くの人に知ってほしいですね。」と作品への想いを語り、イベントを終了しました。

【坂本美雨さんプロフィール】
5月1日生まれ。9歳の時に家族でニューヨークに移住。97年、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義でデビュー。映画「鉄道員」の主題歌、フルアルバム「DAWN PINK」をリリース。ソロ活動に加えシンガーソングライターおおはた雄一とのユニット「おお雨」や、haruka nakamuraと共演するなど歌い続けている。
最新アルバムは「Sing with me Ⅱ」(坂本美雨 with CANTUS 名義)、また、「かぞくのうた」は配信限定でリリースされている。音楽活動に加え、ナレーション、ラジオのナビゲーター、詩・エッセイ・映画評・翻訳本等の執筆等幅広く活動している。2015年第一子出産。育児と仕事と奮闘中。

【レイチェル・ドレッツィン監督プロフィール】
1965年生まれ、現在53歳。イェール大学卒。長年にわたり、アメリカの公共放送サービスPBSで放送されている有名なドキュメンタリーシリーズ「Frontline」を制作。エミー賞、ピーボディ賞、デュポン・コロンビア賞、ロバート・F・ケネディ・ジャーナリズム賞などのドキュメンタリー映画賞を多数受賞。彼女の夫であり映画製作者のバラク・グッドマンと、ブルックリンを拠点とする制作会社Ark Media を共同で設立し、エミー賞、ピーボディ賞、デュポン・コロンビア賞受賞作品「The African Americans」などを含む、PBSの4本の主要シリーズのシニアプロデューサーを務める。ヒラリー・クリントンと同級生のウェイズリー大学を卒業した女性たちを取材した「Hillary’s Class」や、中年期のセクシャリティを扱った「ニューヨークタイムズ」紙のショートフィルム『Naked』など、時事性の高い社会派の作品を多く手がけており、本作が長編映画デビューとなる。現在、彼女はマンハッタンの4年制美術学校「スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツ」で、講師としてソーシャルドキュメンタリー・プログラムを担当。ブルックリンに在住し、3人のティーンエージャーの母親でもある。

監督:レイチェル・ドレッツィン 
原作:アンドリュー・ソロモン著「FAR FROM THE TREE Parents, Children and the Search for Identity」
音楽:ヨ・ラ・テンゴ、ニコ・ミューリー
2018年/アメリカ/英語/93分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/原題:Far from the Tree/日本語字幕:髙内朝子
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©︎2017 FAR FROM THE TREE, LLC 提供:バップ、ロングライド 配給:ロングライド