東京国際映画祭2018、映画『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』舞台挨拶
福井県の「えちぜん鉄道」を舞台に、新人アテンダントの山咲いづみ(横澤夏子)がふれあいを通して絆を取り戻す、感動の再生物語『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』。この度、第31回東京国際映画祭の特別招待作品として上映されました。遅い時間にも関わらず多数のお客様に鑑賞していただき、上映後には本作の児玉宜久監督と河合広栄プロデューサーのQ&Aセッションが行われました。緊張の面持ちで入場した2人でしたが、観客の温かい拍手に迎えられニッコリ。お客様との心温まる、楽しいひと時の様子を以下にお送りさせていただきます。
監督:本日はお忙しい中本作を鑑賞いただきましてありがとうございます。今回東京国際映画祭で一般公開に先駆けて上映いただきまして嬉しいです。また同時に光栄だと思っております。
河合:私はこの映画の舞台となりました福井県勝山市の出身です。本日の上映が遅い時間だったので心配しておりましたが、たくさんの方にご来場いただけて本当にうれしく思います。
MC:この映画を撮ることになったきっかけは?また福井を舞台にしたのは何か理由があったのでしょうか?
河合:私が福井県出身で、色々な方に出身を聞かれて、「私、福井県勝山市出身です」と言っても、福井県が日本地図のどの位置にあるか皆さんに認識されてないまま終わってしまうことがあるんですね。1つは福井をみなさんに知ってもらいたいということと、福井の人はシャイで、控えめで、本当におとなしい方が多いんですね。ですが、廃線になった鉄道を市民の方々の力だけで復活させるほど心の中は暖かくてあついです。そのことを表現したくてこの映画を創りました。
MC:今回、お笑い芸人の横澤夏子(よこさわ なつこ)さんを主演に抜擢した理由をお聞かせください。
監督:既成の女優さんではなく、映画を観た時の新鮮さがあるかなぁということと、何故お願いしたかというと、本編の主人公のもって生まれたこの明るさ、人を笑わせる能力、そして裏側に持っている翳り、闇とは言わないけれども何かを抱えている人で同時に持ち合わせている人は誰かなと思った時に、横澤さんがいいのではと思いまして、演技力は未知数でしたが、彼女にオファーしました。
MC:実際の演技力はどうでしたか?
監督:とても自然に演技してもらっていて、端々に垣間見える面白さが出ていますので、それを違和感なく演じていただけたかなと思っています。
河合:私は最初から横澤夏子さんだと思っていました。そのポイントは顔ですね!北陸に5人に1人はいる顔ですね(自信満々気に断言)!北陸顔があるんです。
MC:撮影を振り返ってどうでしたか?
監督:地元の方の協力を万全に敷いてもらえました。潤沢な予算があるわけでもなく、河合プロデューサーに地元の方の協力がないと撮影はあり得ないですよと話をしたら、彼女の作品に対する熱量がすごく、そのおかげもありまして、スタッフの日々の食事やエキストラの方もたくさん集まってくれました。またえちてつのスタッフの皆さん、すべてのスタッフが一丸となって力を合わせたことでできたと思います。
河合:実際地元の方がたくさん出ていただいておりまして、例えば本物の消防士の方が出てくださっていまして、事件がなかったので出ていただけました。これがもし火事だーということになった場合は、消防車を走らせなければならないんですよ。
監督:その日は何事も起きないように、事件を起こさないようにとふれ回っていました。平和でないと映画は撮れないんです。
MC:作品は地元の方にはお披露目されたのですか?
河合:はい!お披露目させていただきました。控えめな福井の人ですけれどもクスリとも笑わないんですよ。終わった後拍手が鳴りやまなくって、「すごく感動した!」って言ってくださったんです。福井の方は簡単には笑わないんです。
監督:笑ってましたよ!笑う箇所が何か所かありまして笑ってくれてました。
河合:一番近い所の人々に作品を観られるのはやはり緊張しました。ましてや故郷ですからね。
お客様①:とても心温まる映画でした。時間を何とか作れたので見に来ました。撮影の時期やどうやって車両を実際に使ってアテンダントの撮影をしたのか教えてください。
監督:撮影は11月11日から3週間かかっています。途中横澤さんは他のお仕事もあり行ったり来たりしてもらって。
劇中のお祭りだけは2月末に行われており、今年の2月に行われたお祭りに2日ほどお邪魔させてもらい撮影させてもらいました。車内の撮影に関しましては、1車両が2両編成で、撮影隊が乗ってしまうと、一般のお客様が乗れなくなるため、臨時列車をダイヤを組んでいただきました。組み込んでもらって、4日間で6~7便仕込んでもらい、線路の長さが決まっていて小一時間で往復できる距離。背景にズレが生じないように気を付けながら調整しつつ撮影しました。車窓の景色とストーリーの景色には嘘が付けない。場所によって景色の変化が顕著なので気を付けました。悔いが残らないように頑張って撮影しました。
お客様②母方の実家が福井県なので懐かしみながら拝見しました。本作にかける熱い想いだけではなく、メッセージを感じたような気がします。監督が観る人に伝いメッセージがあるのであれば教えてほしいです。また自分自身が他者にメッセージを伝えるコツを教えてほしいです。
監督:故郷に想いを馳せるということがこの映画のテーマというか、日々忙しいところで働いている人が自分自身の故郷に想いを馳せるということが1つ。私自身がこの作品の核になると思ったことが、原案の「ローカル線ガールズ」にも書かれていますが、2000年の12月と2001年の1月に2回事故を起こしている、それも正面衝突。そのことから復活した電車ということに心を打たれました。市民の代表格、市民の足となり、市民に寄り添って運営されている。事故を起こして運航中止となったものが、今復活して市民と共に生きている。苦境を乗り越えている、運行会社にしろ人生にしろ、苦難は人生の中に必ずありますよね。その時にどう乗り越えるんだということを出せたらなと思いました。いかに押しつけがましくなってはいけないなと注意しました。どのぐらい違和感なく組み込めるか、その人の持っている心からの声にならないといけないと、行動にならないといけないわけで、今回脚本を作る段階で配慮しました。
お客様③お祭りのシーンや直前の駅長さんとのシーンは別日ですか?
監督:お祭りやその前後のシーンは、別の日に撮影しています。天気が悪くてもいいじゃないのと思いました。お祭りのシーンは、いづみの気持ちがポーンと変わったシーンだったので晴れじゃないといけないよねと、自然に逆らわずに撮影しました。最初のシーンもそうです。あの天気の悪さも彼女の心境を表していて、電車を降りた後のシーンで何か彼女に起こるんだろうなと感じるシーンにできました。
『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』
11月3日(土)福井県先行ロードショー、11月23日(金・祝)有楽町スバル座ほか、全国ロードショー
配給:ギャガ ©2018『ローカル線ガールズ』製作委員会
物語
お笑いタレントを目指し上京した山咲いづみ。しかし、コンビを結成するも全く売れず解散寸前に。そんな時、友人の結婚式に出席するため、故郷の福井県へ帰郷。披露宴で出会ったえちぜん鉄道の社長・越智からアテンダントにスカウトされ、新しい道を歩みだす。そして、血の繋がらない兄・吉兵の家族が住む実家で居候を始めるが、いづみは自分が養女だというわだかまりを抱き続けて、吉兵との関係はギクシャクしたまま。職場では、腰掛け的な態度が出てしまい空回りが続く一方、整備士の南部がいづみの心のオアシスに。そんな中、列車内である事件が起きる。その時、いづみがとった行動はーーー。人生の行き先に迷ういづみは、自分の居場所を見つけられるのか?
家族の絆を取り戻せるのかーーー?
監督:児玉宜久 脚本:児玉宜久 / 村川康敏
出演:横澤夏子 萩原みのり 山崎銀之丞 笹野高史 松原智恵子 緒形直人、辻本祐樹 坂本三佳 安川まり 古田耕子
配給:ギャガ ©2018『ローカル線ガールズ』製作委員会 http://gaga.ne.jp/echitetsu/