このたび、弊社配給作品『彼が愛したケーキ職人』が、12 月 1 日(土)より YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開致します。
無名の若手イスラエル人監督 オフィル・ラウル・グレイツァが手がけた本作は、低予算映画ながらも 2017 年カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でワールドプレミアされるやいなや、観客から総立ちの拍手喝采で絶賛され、エキュメニカル審査員賞を受賞する快挙を成し遂げた。2018 年オフィール賞(イスラエル・アカデミー賞)作品賞ほか主要 9 部門ノミネートするなど、70 以上の国際映画祭で上映され数多くの映画賞を受賞。世界中で広く受け入れられた。主人公は【恋人】を不慮の事故で失ったドイツ人のトーマスと、【夫】を亡くし女手ひとつで息子を育てるイスラエル人のアナト。【同じ男】を愛し、同じ絶望と喪失感を抱えるふたりは、哀愁漂うエルサレムでめぐり逢い、運命的に惹かれ合っていく―。悲しみに暮れる男女を繊細に描いたエモーショナルなドラマは、ケーキ作りを通して宗教的慣習の違いをあぶり出し、食べること、生きること、そして愛することを浮き彫りにしていく。静かな感動を呼ぶ美しいラストは、国籍や文化、宗教やセクシュアリティといった違いを超越し、単純なラブストーリーの枠に収まらない壮大な人間讃歌として、見るものの心を揺さぶる。

■10 月 26 日(金) /イベント開始 20:24~(18:35 の回上映後)
■TOHO シネマズ六本木 SC8(港区六本木 6-10-2 六本木ヒルズけやき坂コンプレックス内)
■登壇者:イタイ・タミール プロデューサー

第 31 回東京国際映画祭にて 10 月 26 日(金)、イスラエル映画『彼が愛したケーキ職人』がワールドフォーカス部門の「イスラエル映画の現在 2018」にて上映され、プロデューサーを務めたイタイ・タミール氏が舞台挨拶に登壇。観客とのQ&Aを行なった。
タミール氏は 2 人の息子と一緒に舞台挨拶に登場。マイクを向けられた長男のユールくんは「ハロー!」、そして、次男のヤンくんは「アリガトウ」と覚えたての日本語で挨拶し、日本の観客のハートを鷲づかみにする。
タミール氏はイスラエル出身だがフランス在住。この日は残念ながら不在のオフィル・ラウル・グレイツァ監督もベルリンとイスラエルを行き来する生活を送っており、さらに監督は家庭用のイスラエル料理の本を出版している現役のシェフであり、いまも料理を教えているという。
タミール氏は、監督との出会いについて「8 年前に映画祭で出会い、恥ずかしそうに私の元に来て『脚本を読んでほしい』と言ったんです。3 か月ほどして電話がかかってきて、脚本を読んだかと聞かれたので、『とても面白かった』と伝えました」と明かす。
ベルリンでケーキ職人として働く男性トーマスと、エルサレムで息子と暮らす女性・アナト。同じひとりの男性を愛し、そして失った男女を描く本作。監督自身、ゲイであることを公表しているが、本作の着想に関しては、学生時代のある出会いがきっかけになっているとも明かした。

料理のシーンの撮影に関しては、料理人の監督とあって細部にわたるまでリアリティを重視したという。「ものすごくこだわりを持っていましたし、オフィル自身の頭の中に全ての画があり、それを書き留めてもいました。トーマスを演じた俳優と撮影チームは 2 か月もベーカリーで修業をして、パンを練ったり、手の動かし方、切り方などをマスターしました」と語った。
また、映画における LGBT の描き方についての質問には「イスラエルはオープンな国であり、毎月のようにパレードも行なわれていますし、自分を解放するという意味でテルアビブは非常に自由な土地だと思います。ただ、この映画では資金調達に苦労して、一度、ドイツの出資を得られそうだったのですが、LGBT の描写において(本作のように)ゲイの男性と女性のラブストーリーは、ウソっぽいのでありえないということになり、結局、ドイツからの出資は受けずに制作することになりました」と製作の裏側を明かした。

また、映画では随所にユダヤ教の教義や文化、さらにドイツとの間の歴史的な経緯に関する描写が登場するが、タミール氏は「宗教に関する描写は、映画に幅を持たせるため表現であり、同性愛に対する批判のために登場させたわけではありません」と言明。そして「アナトの義兄が『なんでドイツ人なんだ?』と言う場面が登場しますが、ドイツとの間にはホロコーストという悲しい歴史が存在するのは事実です。我々がその歴史を忘れてはいないということも事実ですが、オフィルだけでなく、たくさんのイスラエル人が現在、ドイツに住んでいます。過去の歴史にそこまで深刻に固執しているわけではないが、でも、起きたこととして頭の中には刻まれているというのが、私たちの置かれた状況でしょうか」と語り、トークを締めくくった。