2016 年に日本劇場公開となった傑作サスペンスアクション『ボーダーライン』、そしてイタリアの鬼才ステファノ・ソッリマを監督に迎えた新章『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(11/16 より全国公開)が「丸の内ピカデリー爆音映画祭」のクロージング作品として の“爆音”先行上映&トークイベントが行われました。

■日程:10月26日(金) 19:30~20:00
■会場:丸の内ピカデリー スクリーン3(東京都千代田区有楽町 2-5-1 有楽町マリオン新館 5F)
■登壇者:宇野維正氏(映画・音楽ジャーナリスト)、 聞き手:奥浜レイラさん

前作にあたる『ボーダーライン』のキャラクター、設定はそのままに新たな国境麻薬戦争の闇に切り込んだ『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』。本作の上映前にトークショーが行われ本作をいち早く鑑賞し<2010 年代で最高のシリーズ!>と評する映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏、聞き手として奥浜レイラさんが登壇しました。

「コメントに寄せましたが、2010 年代に入ってシリーズ映画として立ち上がったシリーズものとして最高なんじゃないかと思います。」宇野は前作がとても好きだったと語り、今回続編ということで期待が大きい分、不安要素もかなり大きかったという。「僕はドゥニ・ヴィルヌーヴが現役監督No.1 だと思っていて、世界でもまちがいなく5本の指に入る監督です。『~ソルジャーズ・デイ』はそのヴィルヌーヴじゃなくなってしまったという・・・監督が交代したということ、主役のエミリー・ブラントが出演しない、音楽家ヨハン・ヨハンソンの不在、とめちゃめちゃ厳しい状況だと思ったんです。
でも、観始めたら心配する必要なんてまったくなかった!」と興奮気味に語る。

『ソルジャーズ・デイ』がそんな状況の中、見事作り上げられたのは、前作から引き続き脚本を担当したテイラー・シェリダンの存在が大きいという。シェリダンについて初めて脚本を書いた『ボーダーライン』、アカデミー賞🄬ノミネートを果たした『最後の追跡』(日本では Netflix で配信)、自身で監督も務めた『ウインド・リバー』の3作を<フロンティア三部作>と位置づけ、国境や民族間のボーダーを描き続けることをアイデンティティとした稀有な作家だと分析。「様々な境界をテーマにして、『ボーダーライン』の脚本を書いている時はまだ変わっていなかったかもしれないけど、まさにトランプ政権になってから作られた映画だな、と思えます。」
さらに、今回の爆音上映でより強烈に没入できる音楽を、ヨハン・ヨハンソンの弟子にあたるアイスランドの音楽家・ヒドゥル・グドナドッティルが手掛けたことについても言及。「ヨハン・ヨハンソンが残念なことに今年の2月に急逝してしまったけど亡くなってしまったから交代したのではなくて、続編を制作するにあたり元々、弟子のヒドゥルに引き継いでいたんです。

推測でしかありませんがヨハンソンは1作目でもう十分やり切ったということなのでは。ファンとしてはネタバレになっちゃうから言えないけど、それでも劇中ヨハンソンの存在を否応なしに感じるポイントがあってぐっときましたね。」
ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロ、ジョシュ・ブローリン演じるマットの二人の関係性について「シェリダンはこのキャラをもっと掘っていきたくなったんじゃないか(笑)」とダークヒーローとしての新たな展開によりエンタメ感も増したことを指摘。

国境麻薬戦争を通してのカルテルの新たなビジネスの描き方にも触れつつ、『ボーダーライン』『~ソルジャーズ・デイ』はもちろんのこと、数多くの中南米の危険地帯を描いた作品に必ず携わっていたロケーションマネージャーのカルロス・ムニョス・ポルタルがドラマ『ナルコス:メキシコ』(Netflix11/16 より配信予定)の撮影下見をしていた際、昨年 9 月に殺害されてしまった事件を引き合いに出しつつ「警告ですよね・・・恐ろしい事件ですけど本当にリアルに近いものをみていたんだと思う。」
と述懐。
現代アメリカの抱える闇に切り込み極上のサスペンスアクションとして深化を遂げた本作を「メキシコ麻薬戦争の絶望とエンタメの部分、その両方をこうやって分からせてくれる作品は稀です!」と見どころを語り、トークイベントを締めくくった。