この度、10月27日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開する映画『嘘はフィクサーのはじまり』の公開を記念しまして、ジャーナリスト/キャスターとしてご活躍の堀潤さんのトークショー付き一般試写会を下記内容で開催いたしました。
 
日 時  10月23日(火) 20:30〜21:00  場所:神楽座(東京・飯田橋)
登壇者  堀潤さん(ジャーナリスト/キャスター)  
 
今回、ジャーナリスト/キャスターの堀潤氏が映画上映後に、トークショーを行い、日本にも実際に身近にいるフィクサーの存在や、政財界にまつわる体験談などを語り、客席を大いに盛り上げた!

「”忖度”は日本の良い文化。ノーマンのような人物は私の近くにもいます」

堀さんご自身もフィクサーみたいない経験があるとお聞きしたのですが、どのような出来事ですか?

以前、待機児童の問題で保育園を作って欲しいと、子育て中のお母さんたちが3万人以上の署名を集めたのですが、「どこに提出すればいいんだ!」と、その後になったんです。私は市民運動を支えるお手伝いをしていて、政治家とかを紹介したりすることがあります。それで、とある議員さんに話をしたら、「私が受け取ります」と言ってくれたのですが、「(お母様方からは)議員さんの手柄にはしたくないです」と言われたりもしたのですが、結果的に「党本部の戦略として受け取ります」と言って頂き、その議員さんはキチンとやってくれて、お母さんたちと他の議員を引き合わせたりして頑張ってくれたんです。そして、その方がつい最近に大臣になったんです。が、いきなりスキャンダルにまみれて、、、、(笑)。この映画と重なるような出来事だなと。政治家の皆さんは大変ですね、本当に!

本作への感想で「私の話かもしれない」とコメントされていましたが、どのような点ですか?

「寄らば大樹」ではないですが、目の前にある権力に、つい気持ちが寄せられてしまうことがあります。自分と少しスタンスが違ったとしても、多数派についた方がいいのではないかと。NHK時代にも、経済ニュースを担当するにあたって、省庁の役人や政務官など政治家の話を聞くときは、情報源を引き出すためにおだてたりするんです。僕は「嫌だな」と思っていました。一緒にやっていた先輩キャスターは経済部出身で、常に政治・官僚目線だったのですが、僕はもっと地場の経済活動を見たいと思っていました。でも、そんな僕でも国会で目の前に先生方がいると、自然と姿勢を正して、「どうもお世話になっています」と(一礼してしまう)。いつもは市井の現場と言っていても、怖い魔力があります。
あと、国会で取材をしていると、自分も権力を握っているかのように錯覚します。偉い人の一員になったかのような。だから映画で描かれているリチャード・ギア演じるフィクサーを観て、「馬鹿なやつだなあ」と笑うことができなかったです。そういう風に思ってしまうのは、誰しもあるんじゃないかなと。なのでノーマンの人生のラストは、あれで良かったのかなと、試写後は立ち上がれずに考えてました。

リチャード・ギアの演技についてはいかがでしたか?

スーツの着こなしがリアルでダサいとか、髪が潰れて脂っぽいとか、うだつの上がらなさとか、とてもリアルに描かれていると思います。監督や製作陣の力量と、リチャード・ギアの演技力が救いだったと思います。

フィクサーという存在は実際にいるのでしょうか?

はい、そうですね。「なんでこの人がここに!?」と違和感を感じる人がいるんですが、「あなたは誰ですか?」と、誰も彼に聞けないという空気感。そうゆう方はどこにでもいますね。

本作のポイントとしてユダヤ人コミュニティや、アメリカとイスラエルの蜜月関係について描かれていますが、そのあたりをご説明いただけますか?

本作を観ると、ユダヤ人のコミュニティの力強さを感じました。ロサンゼルスでUCLAの客員研究員をしていた時代にイスラエルでガザ戦争があったのですが、その前夜に高級ホテルで政財界の人間が集まってイスラエル軍の資金集めパーティーがありました。ホテルの周りでは、アメリカのイスラエル支援に反対するデモが起こっていたのですが、中にいる政財界の人にはその声はまったく届いていないんです。「トランプはダメだ。オバマは良かった」という声がありますが、先日のエルサレムへの大使館移転については、昔からその話はあって、実行したのがトランプだっただけです。またイスラエルへの軍事支援金を最も多く積み増ししたのは、実は核なき世界を訴え、リベラルの騎手だったオバマ政権なんです。

劇中でイスラエル首相の「大使に任命します」という一言で、ノーマンの社会的な立場が一転しますが、このようなことはあるんでしょうか?

首相の脇の甘さが観ていて面白かったですが、最後はドライな判断を下すところは堅実的ですね。人間的には嫌だなと思いますが。先の自民党総裁選挙でも、安倍さんと石破さんが論争を交わして、石破さんが言っていることを取り入れるといいなと思う場面もありましたが、石破派で起用されたのは法務大臣だけです。彼が就任演説で移民政策について語り、外国人労働者の法整備が急務と話す一方で、保守政権は労働移民は支持層からの反発をくらいかねないと思っている。そういった難しい要職に石破派を一人だけ置いて、ほかは安倍派陣営で固めている。なかなかドライな世界だなと思いました。「選挙に出ないか?」とよく誘われるのですが、絶対にイヤですね(笑)。ノーマンがやっていたような根回しをやって生き抜く世界は、どの国でも繰り広げられているんだということが、この映画から透けて見えました。

最後に、本作の見どころについて
昨年の流行語にもなった「忖度(そんたく)」という言葉はイメージが悪くなっていますが、「慮る」とも言い換えられ互いを思い、言葉なくても通じ合える日本の良い文化でもあります。ニュースで出てくるようなことも、自分の外の話ではなくて、自分の身の回りでも起こっていることであって、言葉を飲み込んでしまったことで、不幸が引き起こされてしまうというのが、この映画のメッセージだと僕は思います。

監督・脚本:ヨセフ・シダー 音楽:三宅純 
出演:リチャード・ギア、リオル・アシュケナージ、マイケル・シーン、
スティーヴ・ブシェミ、シャルロット・ゲンズブール、ダン・スティーヴンス 
2016/イスラエル・米/英語・ヘブライ語/118分/ビスタ/5.1chデジタル 原題:Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer 後援:イスラエル大使館 配給:ハーク 配給協力:ショウゲート 
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10/27(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次!