東出昌大を主演に迎え、濱口竜介監督が芥川賞作家・柴崎友香による同名恋愛小説を映画化し現在、全国にて大ヒット上映中の『寝ても覚めても』。

初日からメイン劇場であるテアトル新宿では立見が出るなど全回満席の大ヒットスタートを切り、世界では20ヶ国以上で公開が決まっている。SNSでも「今年一番の傑作!」「この映画凄すぎ!」「また観たくて身体震える…」などの感想と共に「もう5度目の鑑賞…」といった『寝ても覚めても』中毒者が出るほどの、ファンを作っている。

その『寝ても覚めても』(英語タイトル「ASAKOⅠ&Ⅱ」)のアメリカプレミアが、第56回ニューヨーク映画祭にて、米国現地時間10月6日(土)15:00に行われ、濱口竜介監督が登場しました。

カンヌ、トロント、サンセバスチャンに続き、ニューヨークへ!世界中の映画祭で引っ張りだこの『寝ても覚めても』は、既に20以上の映画祭での上映が決定済み。

同時期に開催の釜山国際映画祭にも招待され、東出昌大、唐田えりかが韓国へと渡り公式上映に登壇したばかりだ。北米最大級の映画祭の一つで、伝統あるニューヨーク映画祭には、数多くの映画人が集うことで知られる。

今年も、俳優では、エマ・ストーン、リーアム・ニーソン、ジェイク・ギレンホール、リリー・ローズ・デップなど、監督では、バリー・ジェンキンス、アルフォンソ・キュアロン、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟などと、ハリウッド・スターから、アカデミー賞、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の常連たちが集結!

2016年に濱口監督の前作『ハッピーアワー』がニューヨーク近代美術館(MoMA)とフィルムソサエティ・オブ・リンカンセンター共催の「New Directors/New Films」で上映され、好評のためMoMAで再上映されるなど、ニューヨークは濱口監督の才能をいち早く評価してきた監督所縁の土地。

監督にとって、自作を携えてのニューヨーク訪問は3度目となる。早めに現地入りした濱口監督は、クレール・ドゥニ監督「HIGH LIFE」や、アルフォンソ・キュアロン監督「ROMA」などを鑑賞し、映画祭を観客としても満喫していた。

★1086席の大ホールが満席に!NYの濱口ファンが熱狂!
日本での”怒る”観客の反応、女性をうまく描く極意を語る!
アメリカプレミアとなる上映は、ニューヨーク映画祭の最も大きな上映会場、リンカーンセンターのAlice Tully Hallにて行われた。1,086席というキャパシティにも関わらず場内は満席!
そしてなんと、会場には、ニューヨーク在住の想田和弘監督やニューヨークにて英語修行中のウーマンラッシュアワー村本大輔さんの姿も!

上映前に、プログラムディレクターのデニス・キム氏より「濱口竜介は5時間超えの記憶に残る映画『ハッピーアワー』で国際的に知られ、数年前に「New Directors/New Films」でも上映されました。
今回はもう少し短いです。」と紹介が始まると、会場からは拍手と笑いが!
その反応からは、場内に熱い濱口ファンがいることを感じさせられた。

続けてキム氏は「本作は、失恋とそのあとの恋愛を描いていますが、一筋縄ではいかない展開が待っています。ロマンス映画のジャンルの枠を超えた新しい映画です」と紹介し、上映がスタートした。

上映後には割れんばかりの拍手の中で濱口監督が登場。
Q&Aでは、冒頭はキム氏からの質問に答えるかたちで、小説の映画化である本作の成り立ちや、監督が原作に惹かれた理由、日本語タイトルと英語タイトルの違い、本作の不条理かつミステリアスな要素について答えた濱口監督。

その中で、本作が、前作『ハッピーアワー』との対比で、2時間という時間の中で早いストーリーテリングをどう獲得できるのかの挑戦だったことを明かした。日本での反応に話が広がり、日本の観客の一部に”怒り”がある理由を問われ、「朝子は180度違う選択を2回繰り返す。それは、人間として整合性がないように見えるんだと思います。これは原作の流れを踏襲しているのですが、僕は読んでいて、驚くと共に深く納得しました。しかし、そのような人間を受け入れられないと人はまず怒る。
受け入れられたとしても、日本の倫理観の中で受け入れられない、ということもまた、起こるのだと思います」と分析した。

また、『ハッピーアワー』の大ファンという男性から、「あまりに女性の描き方がうまいので、監督が女性ではなく男性であることに驚きました。どのように、女性の感覚を得ているのでしょうか?」との質問も、会場を沸かせた。

濱口監督「女性の感覚というのは、全然わかりません」(会場一同爆笑)「ただ、これは他者一般に言えることで、自分も含めて、誰かのことをわかっているとは言えないんじゃないかと思います。
なので、わからないという意味では、男でも女でも変わりません。

重要なのは、他者のことはわからないので、自分がわからない対象について書こうと思ったら、人に聞くこと。女性に話を聞いてみたり、ある職業の人に聞いて見たりと、取材を重ねます。
もう一方で、結局自分と究極的には違わないんだという気持ちで書くこと。
魂のレベルでは自分と同じなんだと思うことが大事だと思います」と語った。

上映後は、会場近くを歩いているだけで、すれ違いざまに「映画素晴らしかったです!」と観客に突然話しかけられて驚く濱口監督。映画祭ならではの、観客と作り手の距離感、観客達のダイレクトな反応を喜んでいた。本作はすでにアメリカ配給が決定しており、来年の前半に公開予定。

<濱口監督コメント>
初めてのニューヨーク映画祭への参加でした。面白い映画がたくさん集まっていて、観客としても楽しめたこの映画祭で、『寝ても覚めても』がメイン・スレート部門で招待していただけたのは、なんて光栄なことだろう!と、とても感動しています。

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