東出昌大を主演に迎え、濱口竜介監督が、芥川賞作家・柴崎友香による同名恋愛小説を映画化した『寝ても覚めても』。
初日からテアトル新宿では全回立見、満席という大ヒットスタートとなった本作。
世界では20 ヶ国以上で公開が決まっている。SNS でも「今年一番の傑作!」「とにかく普通の恋愛映画だと思って観に行ったら凄まじいものを観せられた!この映画凄すぎ!」「完全に『寝ても覚めても』中毒になった…。また観たくて身体震える」などの大絶賛の感想で連日大盛り上がり!

『寝ても覚めても』公開記念でキネカ大森にて開催中の「濱口竜介アーリーワークス」
9月28日(金)、29日(土)の2日間に渡り濱口竜介監督によるティーチインイベントが行われた。29日(土)は、『なみのこえ 気仙沼』上映後、台風が近づいている足元が悪い中にもかかわらず満席の場内に濱口竜介監督が登壇、ティーチインが行われた。
監督の登壇をいまかいまかと待つファンが詰めかけ、ほとんどの観客が『寝ても覚めても』を観ていた。

★東北記録映画三部作から学んだこと
東北記録映画三部作の制作動機やどのように3部作へとして完結して言ったかを問われ、「単に被災の話というわけではなく、聞くということにまつわる話、人と人との間に生じている何かについての映画を3本作ることで何か1本の串を通れるんじゃないかと思ってやりました」と語る濱口竜介監督。

その後の映画作成について学んだことは何か?という問いに対して、それまで劇映画を撮ってきていたが、カメラの前に立つ覚悟が必ずしもない人たちに対して、一体どうカメラを向けたら良いかわからない中手探りで模索する日々が続いたという。

試行錯誤の結果「聞きたい」という意思を示し信頼関係を築いていく中で、安心してもらった時に出てくるその人の魅力、人間性に気づいたという。「”いい声で話してくれたね”と(共同脚本の)酒井とよく言っていたのですが、聞いているとてもクリアでオープンな声が出てくる。個性豊かな人たちの人間性がそれぞれ出てくると感じたので、そう言った姿勢を劇映画でも持ち込むことができたら、自分がそれまで観ることができなかったことができるんじゃないか、と思いました」

また、当時の経験を振り返りながら、ドキュメンタリーやインタビューの限界を感じたことも吐露。被写体が使ってほしくない部分があれば、使わない約束で撮影、編集していたこともあり、原発に関わる発言やプライベート過ぎる発言は削除せざるを得なかった。

「深層のところはこのやり方では究極的には拾いきれないと思いました。それがフィクションに戻って行った一つのモチベーションです。現実にあるコミュニティの中で暮らしていて、その名前で出ている人に語らせるわけにはいかないこともあります。あくまでフィクションとして別の名前を持った人がそれを語らなくてはならないと思いました」と語った。

声にこだわった演出、役者たちとの信頼関係、フィクションだからこそ迫ることのできる驚くべき人間の姿・・・いかに、これらの過去作を経て『寝ても覚めても』が生まれていったのか、その軌跡に納得するトークに、聞き入っていた観客からは、監督の回答のたびごとに強い頷きや、唸る声が上がった。

最後に濱口監督「『寝ても覚めても』もぜひ観てください」とPR。
MCが場内に『寝ても覚めても』を観た方へ挙手を促すとほぼ全員が挙手!「・・・ではよろしければもう一度観てください」と返す監督に場内の濱口ファンたちが笑顔で頷いていた。

c2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINEMAS
★公開表記:テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、 渋谷シネクイントほか全国大ヒット公開中!