『スカイライン―奪還―』 監督が来日イベントにて、“ハリウッドで成功するVFXの秘訣” さらに、『スカイライン』シリーズ第3弾始動について初めて語る…!!
突如現れた謎の生命体により刻々と進んでいく地球征服の3日間を冷徹なリアリティと最新のVFXを駆使して描き、どこまでも無力な人類の救いのないラストへの衝撃に賛否両論が巻き起こり、スマッシュヒットとなった『スカイライン━征服━』。7年を経て、侵略されるがままだった人類が立ち上がり、地球奪還の激しいバトルを繰り広げる続編『スカイライン━奪還━』が、10月13日(土)より、新宿バルト9他で全国公開されます。
この度日本の公開に先立ち、製作・監督・脚本を務めたVFXスタジオ:ハイドラックス所属のリアム・オドネルが来日し、トークイベントを実施いたしました。本作のみならず、数多くのハリウッドメジャー作品のVFXを手掛けるハイドラックスの共同設立者でもある彼が、『スカイライン━奪還━』について、ハリウッドで成功する秘訣など、デジタルハリウッド大学で、日本の学生の前で語り尽くしました。
【日時】 8月23日(木)16:30~17:30
【会場】 デジタルハリウッド大学 3F 駿河台ホール
【登壇】リアム・オドネル (製作・監督・脚本)
――VFXスタジオ:ハイドラクス設立、参加の経緯と『スカイライン』シリーズ制作の経緯について
2002年に設立され、私は2005年くらいからグレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス兄弟と働いてます。彼ら90年代に『X-ファイル』のTVシリーズでキャリアをスタートさせ、『タイタニック』、映画版『X-ファイル』などに参加してきましたが、地震やディザスター映画で見られる「破壊」を得意としており、『デイ・アフター・トゥモロー』における冒頭の氷が解けるシーンでスタジオは世界的に有名になりました。FOXとも仕事で関わりを持ち、問題を解決するクリーンアップチームという形でいくつもの作品に参加し、その中でも『アバター』が最も有名な作品と言えます。当初、自分たちで映画を作ってはいなかったんですが、それまでメジャーで培った技術を集結し、より規模の小さなインディ系の映画を作るに至りました。
――ハイドラクスの特徴や強みとは?
このスタジオに13年いて思うのは、学んで成長するチャンス与えてくれるということ。私も最初は脚本家としてキャリアをスタートしたけど、グレッグとコリンは自分たちでカメラを持ち、自分たちで全て行うことを大切にしており、その姿勢から学ぶことは非常に大きかったです。
――これまでの印象的な仕事について。
『アイアンマン2』(ビジュアルエフェクト担当)の中の、各国がアイアンマンスーツを作ろうとするも失敗するというシーンの制作を持ち掛けられました。私たちは撮影に関するすべてを所有しており、まだテストだったんですけど、スタッフを連れて砂漠に飛び、自分たちで“失敗スーツ”のシーンを撮影したんです。空を飛んでも失敗して落ちてしまったり、ひとを誤って殺してしまったりというシーンを試しに作ったんですが、それをマーベルに提出したところ、満足してもらい「もうこれ以上作り直す必要がない」と本編でそのまま使われました。試しで作ったシーンそのままが採用されたのは大きな喜びでしたね。
――ハリウッドで成功するために必要とされる能力、求められる人材
自分がどういう人と一緒に働きたいかをイメージすることが大事だと思います。人材で言えば、情熱的で勤勉で、他人の批判を受け入れることができる人ですね。私も最初は、自分が作ったものを否定されるのが嫌でしたが、他人の批判的な意見をイケ入れ、成長する過程が重要です。VFXの世界というのは、パズルのピースを組み合わせて、作品を作り上げていくようなもので、正解はひとつではなく、いろんな解決法があるんです。実際、今回の映画でカッコいいアイディアは、私が考えたものではなく他人から提示されたものも多いです。自分の作品の質をさらに上げてくれる人が求められています。
――日本のアニメや特撮作品で影響を受けたのは?
グレッグとコリンは日本のアニメファンで、前作『スカイライン -征服-』は『エヴァンゲリオン』や『ガンダム』『アップルシード』などに強く影響を受けています。私は小さい頃から『AKIRA』のファンで、『ゴジラ』も大好きです。大人になってからは『カウボーイビバップ』、グレッグとコリンに勧められて見た作品では『獣兵衛忍風帖』もありますし、うちの子どもはジブリの作品がとか大好きでし。もちろんクラシックでは黒澤明の作品も好きですし、。最近では三池崇史監督の『十三人の刺客』が好きですね。
――――今回は監督、脚本、製作を兼ねたことで仕事に大きな違いは?
いままでと全くプロセスが違って、いわゆる映画のCEO的立場であり、大変でしたが。でも楽しかったです。2013年に脚本を書き始めて、14年の冬に撮影が開始され、いまでもこうやって動き回ってるのが楽しいです。企画開発、ロケハン、撮影…いままで裏方の仕事をしてきて、今回、こうして前に出てカメラに指示出すのは素晴らしい経験でした。特にベテランスタッフに参加してもらい、そこから学ぶことを意識しました。長年のファンだった人々と働けて夢のようでした。
――インディ作品。メジャーとの違いは?
私たちのスタジオは、ちょうどメジャーとインディの間にいると感じています。撮影は効率化を進めていて、前作に出てくるアパートはグレッグのアパートだし、グリーンスクリーンの撮影はわずか1日でした。今回もインドネシアで撮ったことで予算が浮いたし、20日間でグリーンバックでの撮影を終えました。「手作り感」と言える、小さな規模のスタッフでの作るというやり方が気に入ってるし、そこがメジャーとの違いであり、そこにこそ我々のユニークさが出ていると思います。ハイドラックスは常に新しい挑戦をしようと努力し、他社と同じルールでは動かず、自分たちらしいクリエイティブの在り方をと考えています。
――前作と本作では映画のテイスト自体が変わっており、肉弾戦、生身のアクションが増加しています。
もちろん監督が違うのでスタイルは変わります。アクションをもっと増やそうとは最初から思っていました。特にイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンの2人が加わったことで、アクションの幅が広がりました。彼らは自分たちでアクションの振り付けもデザインしてくれました。
――さらなる続編構想はありますか?
この夏に脚本を書き終えており、野心的な作品になってます。今回の『スカイライン -奪還-』の直後から始まり、ローズとエイリアンになったとレントがメインキャラで冒険する物語で、エイリアンの惑星が舞台になっています。シリーズの中では、最もトラディショナルなストーリーになっているように思うし、過去2作の要素も散りばめられてます。映画にならなくとも、ミニシリーズやストリーミングなど何らかの形で世に出したいと思っています。
――「破壊」シーンを大事にしているというハイドラックスですが、その中で特に意識していることは?
CG効果はレイヤーをどれだけ重ねていくかが大切です。でも、やり過ぎると効果が薄れてしまいます。『インディペンデンスデイ』の爆発シーンは、CGを多くは使わず、ミニチュアを使っていますが、リアルに見えるのはバランスがいいからです。現代の映画の爆破、は、破片が飛び交い、煙が出て、実際の(爆発の中心の)現状が隠されて見えなくなってしまうことがあります。私はあえて引き算をして、宇宙船の墜落シーンなどでも、その瞬間を見せたくて、あえて煙を少なくし、観客が見られるように工夫します。それは実際の爆発とは違うけど映画は現実ではないのでそうあってもいいと思っています。先ほども言いましたが、パズルを組み合わせていくというのがVFXの作り方なので、いくつも方法はあるのです。科学ではないので、ひとつの答えがあるわけでもなく、必ずしも正しい答えを導き出すのではなく、バランスを考えてシーンを判断すること大事なのです。
製作:グレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス『AVP2 エイリアンズvs.プレデター』『スカイラインー征服ー』
監督:リアム・オドネル 『スカイラインー征服ー』(脚本)
出演:フランク・グリロ ボヤナ・ノヴァコヴィッチ ジョニー・ウエストン イコ・ウワイス ヤヤン・ルヒアン
VFXスタジオ:ハイドラックス 『アバター』『ジオストーム』
配給:REGENTS/ハピネット
R15 原題:Beyond Skyline/2017年/シネスコ/ドルビーデジタル 5.1ch/106分 © 2016 DON’T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD