堤幸彦(映画監督・演出家)を筆頭に大根仁(演出家)、平川雄一朗(演出家)、小原信治(作家)といった、気鋭のクリエイターを輩出する映像制作会社オフィスクレッシェンドが、次代を担うクリエイターの発掘・育成をめざして立ち上げた映像コンテスト「未完成映画予告編大賞」=「MI-CAN」。その第1回グランプリを受賞し、群馬県高崎市を舞台に長編映画として制作された「高崎グラフィティ。」が8月18(土)、全国に先駆けて、ご当地の高崎市のシネマテークたかさき、イオンシネマ高崎にて公開を迎えた。

シネマテークたかさきで行われた、記念すべき本作の初回上映後、久々に高崎への凱旋を果たした川島直人監督、主演の佐藤玲をはじめ、萩原利久、岡野真也、中島広稀、三河悠冴が舞台挨拶に登壇し、満員の観衆から温かい拍手が送られた。

客席から熱い歓声を浴びた川島監督は「こんなにたくさんの方に来ていただけて、いいスタートが切れたと思います」と感慨深げ。記念すべき公開初日を迎え「やっと、小さい頃から憧れていた“映画監督”という夢に近づけた日です。まだまだ精進していかないといけないですが、大きな一歩が踏み出せたと思います」と喜びを語った。

佐藤さんが、大学卒業間際に同じ大学に通う川島監督に対し「一緒に何か作ろう」とメッセージを送ったことから本作の企画がスタートしたが、その“言い出しっぺ”の佐藤さんは、長編映画として作品が完成し、こうして公開を迎えたことについて「最初は何をやるのか? 映画を撮るのかどうかも尺も何も決めてなかったんです、1年半くらいかけて未完成映画予告編大賞を見つけてきて、(最初のメッセージから)もう4年くらい経つんですね……。最初があまりにグダグダだったので(笑)、映画を撮ると決まってからはあっという間で、楽しく駆け抜けました」と笑顔で振り返る。

川島監督は千葉県出身だが、撮影監督を務めた武井俊幸が高崎市出身で、彼の勧めでこの地にロケハンに訪れ、ここで撮影することを決めたという。高崎で高校生たちの青春映画を作ろうと思った理由について監督は「僕自身、東京から近い場所にいて、あまり東京に対し夢も何も持ってなかったんですが、大学に入ったら、意外と地方から来た人たちが、東京に夢を持ってて、この差が面白いと思って、関東圏内の高校生たちの話がやりたいと思いました」と説明。「(高崎に)ロケハンに来たら、すごくマッチしていて、ここで撮りたいと思いました」と明かした。

キャスト陣に好きなシーンや思い出深い撮影のエピソードを尋ねると、三河さんは「好きなシーンは朝の川辺のシーン。朝、3時くらいに行って、5時くらいに撮りましたね」と真冬の撮影を述懐。三河さん、中島さん、そして萩原さんの“男子”メンバーは毎日のように撮影について自分たちで話し合いを重ねていたそうで、萩原さんは「秘密の特訓してました(笑)」と明かしたが、中島さんは「当日になって、急にセリフが変わったりもして…」と苦笑いで監督に苦笑いで語った。川島監督は、撮影が進み、俳優陣がキャラクターを自分のものにしていく中で、その人物に合ったセリフを新たに次々と生み出していったそうで「雰囲気を見ながら、だんだんそのキャラクタのセリフが書けるようになっていったんですが、毎朝、(セリフ変更の)紙切れを僕が持って行くのを、みんな怖がってたんじゃないでしょうか」と笑顔で語っていた。

岡野さんは、5人の朝食のシーンを「一番好き」と明かすが「実は5テイクくらい撮ってて、1テイク目が使われているんです。だんだん、みんな箸を運ぶスピードが緩くなっていって(笑)。アドリブも多くて、次に誰がどんなこと言うかと探り合いながらやっていて、面白かったです」と語った。佐藤さんも、この朝食のシーンに触れ「(自身が演じた)美紀はだんだんみんなとまた打ち解けていくんですが、その意味でも、朝食のシーンは最終日の撮影で、(撮影以外でも)みんな一番仲良くなっている時で『やっと楽しいところができるね』という雰囲気でした」と楽しそうに振り返った。

登壇陣はそれぞれ劇場に足を運んでくれた高崎の人々に熱いメッセージ! 三河さんは「高崎で100%撮影してて、すごく面白い映画になっています!」、中島さんも「高崎、群馬の方に愛していただける映画になればと心から思っています」と語る。

岡野さんは「久しぶりに高崎に戻ってきて『ただいま』という気持ちでここにいます。実は、撮影中にこのシネマテークたかさきの周辺に滞在していたので、いまは『私、(撮影期間に)通った映画館にいる!』という感覚です」と高崎愛を熱く語る。

萩原さんは「個人的に映画が公開されて、みなさんの感想を聞けるのが楽しみです!」と地元の人たちの感想を熱望。佐藤さんは「みなさまに支えていただいて、こうして最初にここで上映できて嬉しく思っています」と感謝を口にするとともに「宣伝費がないもので(苦笑)、ぜひみなさん、一緒にこの映画を盛り上げていただけたら」と呼びかけた。

そして最後に川島監督は「本当にみなさんに見ていただけてすごく嬉しいです。このメインの5人が私生活を含めてみんなで仲良くして、青春を作り上げてスクリーンに焼き付けています。100%高碕ロケで、高崎の空気感をギュッと詰め込みました。みなさん、1日1回は『高崎グラフィティ。』を見ていただければ(笑)!」と語り、会場は笑いと熱い拍手に包まれた。

「高崎グラフィティ。」はこの高崎での先行上映のあと、8月25日(土)より アップリンク渋谷、イオンシネマ シアタス調布ほか全国順次公開。