国民が国を相手に闘った韓国民主化闘争を描く衝撃の実話『1987、ある闘いの真実』が、9月8日(土)に全国公開される。その公開を前に本作を手掛けた韓国のチャン・ジュナン監督が来日。
7月30日(月)には東京・神楽座で映画『KT』『エルネスト もう一人のゲバラ』で知られる阪本順治監督とトークイベントを行った。

企画意図についてジュナン監督は「韓国の現代史にとって重要な足跡を残す1987年を、これまで誰も語らなかったことにもどかしさを感じていました。そして私自身が父親になったことで、次の世代に語り継ぐ悲しくも美しい物語だと思い、やらねばと決心した」と熱意を明かす一方、映画製作がスタートしたのは朴槿恵(パク・クネ)政権時代ゆえに「表現に対する弾圧が激しく、ブラックリストが存在した時代。なのでシナリオは外部に漏れないよう、秘密裏で行われました。当時を描いた映画を作っているとバレた場合は完成すら危ぶまれるわけですから」と危険と隣り合わせだったことを打ち明けた。

1973年に起こった金大中事件を題材にした映画『KT』制作の際、監視や尾行を経験している阪本監督は、本作について「善悪を単純化せず、伏線も素晴らしく、同業の人間としていろいろ学習させてもらった。涙を流したが、それは安い涙ではなく、今の自分たちの時代に返ってくるような涙だった」との絶賛でジュナン監督を労い、そのジュナン監督は「阪本監督はやはり凄い監督ですね」と唸り「短いコメントながらも核心を突いてくるし、『本質を観てほしい』という私の意図を鋭い洞察力で指摘してくれた。同業者として嬉しい」とエールに返礼していた。

朴槿恵政権時代は弾圧を恐れて投資家も手を引き、映画作りも軌道に乗らなかったそうだが、汚職が発覚して一転、向かい風が吹いてきたという。ジュナン監督は「汚職が発覚し、世の中がひっくり返ったようになり、投資家たちが次々と手を挙げてくれた。キム・ユンソク、カン・ドンウォンら名のある多くの俳優たちも、まだパク政権が完全に終わったわけではないのに、勇気を振り絞って参加を表明し、私と志を共にしてくれた」と韓国の時代の変化を実感。それは人々が立ち上がって巨大権力と戦った1987年の様子とリンクしており「韓国版アベンジャーズ級の俳優たちが参加しているが、それはすべてこの映画の物語が持つ力が動かしたもの。今回の映画作りの過程において、劇中同様の奇跡がありました。まさに一人一人の心が集まって完成した作品です」とアピールした。

1987年当時、高校生だったというジュナン監督は「その時代の私たちは純粋で、真実を追求し、そういった民衆の思いが雪だるま式に膨らんで歴史を変えていきました」と振り返り、「あの時代のスローガンは“あの日が来れば”でした。しかし現在の韓国は果たして“あの日に”向かっているのでしょうか?私は本作を通して、そんな問いかけをしたかった」と改めて本作に込めた想いを吐露。日本の観客に向けては「作品を観て面白かったら、多くの人に伝えてください。つまらないと思ったら、口にチャックをしてください」とユーモアを交えつつ、日本公開に期待した。