渋谷のユーロスペースにおける2週間レイトショー観客動員数、歴代1位という記録を樹立した『わさび/春なれや』DVD・ブルーレイの発売を記念したアンコール上映会が7月30日に渋谷のユーロライブで行われました。トークゲストには『春なれや』に出演する吉行和子さん、村上虹郎さん、そして外山文治監督が出席しました。

映画『わさび/春なれや』アンコール上映&スペシャルトーク
日時:7月30日(月)
上映開始:15:00~(トークは上映終了後から)
場所:ユーロライブ
(東京都渋谷区円山町1-5)
登壇者:吉行和子さん、村上虹郎さん、外山文治監督

この日、上映されたのは、心の病を抱えた父を守るために、実家の寿司屋を継ごうと決めた女子高生の姿を描いた芳根京子さんの主演作『わさび』。「60年前のソメイヨシノがまだ咲いているのか」、それを確かめようとする女性と、彼女を案内することになった青年との交流を描く『春なれや』。そして老老介護の厳しい現状を描き出した『此の岸のこと』の3本。この日は、その3本のうちの一本となる『春なれや』に出演した吉行さんと村上さんがゲストに来場。「この映画ですてきなおばあちゃんをやりました。観ていただいたと思うんですけど、とても楽しい映画になりました。忘れられない思い出です」と吉行さんがあいさつすれば。村上さんも「前回の上映から結構時間が空いているんで、今日はいろいろとお話をしたいと思います」と続けました。

この3本は「映画監督外山文治短編作品集」というタイトルで昨年8月26日から渋谷のユーロスペースで上映。多くの観客を動員し、ユーロスペースでの2週間レイトショー観客動員数、歴代1位という記録を樹立しました。「まだ破られていないんですよね」と村上さんが喜びを爆発させると、吉行さんも「うれしいですね。(記録が)破られないっていいわね。そんな風になるなんて本当にうれしいです。これも外山監督の力だと思います」と外山監督をねぎらいました。

 村上さんと吉行さんは本作で初共演。撮影時を振り返った吉行さんは「わたしが忘れられないのは、自転車の二人乗り。人生初だったんですよ。虹郎くんにつかまってダーッと。テストもなくぶっつけ本番でしたよね。この人を信じるしかないと思ったのが忘れられない思い出です」とコメント。さらに「どこまで行くのかも分からないし。橋の上もずっと走り続けていたんで『まぁ、いつ止まるのかしら』と祈るような気持ちでしたけども。でもこの人を信じるしかないと思って。あんなに男の人を信じたのは生まれて初めて」と付け加えてお客さんを沸かせました。

そして村上さんの印象について質問された吉行さんは「もちろん顔は知っていましたけれども、初めての共演でしたからね。どんなセリフの言い方をするのかしら。どういうリアクションをするのかしらと。ひとつひとつが新鮮で。わたしが今まで知っていたような感じじゃない。それがすごくわたしも刺激を受けて、とてもいい時間だったと思います」とコメント。一方の村上さんは、「僕、吉行さんとは一度、別の作品(『夏美のホタル』)でお会いしているんですけど、その時はほとんどセリフを交わすことがなくて。しっかりとお会いするのは初めてでした」と語るなど、吉行さんとの共演を喜んでいる様子でした。

そんな二人の共演について「面白かったですね」と振り返る外山監督は、「世代が違う交流と言ってしまえばそうなんですが、お芝居の質も違うでしょうし。お互いに刺激し合っているのがスタッフにも伝わってきたので。見ていて本当に楽しかった。カットはかけたくなかったですね」と満足げな様子です。

吉行さん自身は、この『春なれや』が初の短編映画出演作となりました。「いい俳句って100年でも200年でも、ずっと古くならずに残っていますよね。そういう感じの映画になればいいなと思ったんです」と語った吉行さんは、「『春なれや』というタイトルは、芭蕉の『春なれや名もなき山の薄霞』という句からですけど。芭蕉なんて300年以上昔の人ですけれども、本当にいい句だなと思うし、わたしも死ぬときは、かすみのように消えていきたいなと思うわけです」とコメント。「わたしにとっても忘れられない一本になりましたね」と付け加えました。

そんな吉行さんの言葉を聞いていた外山監督は「吉行さんを撮りたい、撮らせていただきたいと思ったのがすべての出発点でしたから。吉行さんに気に入っていただける作品になったのなら、ありがたいなと思います」と感激した表情を見せました。

「わさび/春なれや」Blu-ray(税込み:5,184円)、DVD(税込み:4,104円)は8月2日に発売開始