一人の天才女子高生を中心とした高校生“犯罪チーム”が知恵と度胸だけを武器に、世界を股にかけた一大“カンニング・プロジェクト”に挑む様をクライム・エンタテイメントに仕立て上げた、映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(配給:ザジフィルムズ/マクザム)を、9 月 22 日(土)より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開いたします。

公開に先立ちまして、7 月 26 日に渋谷・ユーロライブにてトークイベント付き特別試写会が行われました。登壇したのは、37 歳という若さで長編初監督作がアカデミー賞外国語映画賞のタイ代表に選ばれ、2作目となる本作の国内外でのメガヒットでアジアの最も旬な映画監督として一躍時の人になったナタウット・プーンピリヤ監督と、昨年『おじいちゃん、死んじゃったって。』で満を持しての長編映画監督デビューを果たし話題となった森ガキ侑大監督。2 人とも同世代で映画監督として活躍するかたわら、数々の有名企業の CM を手掛ける敏腕演出家として活躍しているという共通点があることから今回の対談が実現。タイ・日本で気鋭のトップクリエイターとして活躍しながら映画監督としても評価されている同世代の作り手同士、本作のタイ映画としての新たなる可能性や、CM 演出と映画監督という二つのフィールドで活動している現状について存分に語って頂きました。

始めにプーンピリヤ監督、なぜこの“カンニング”をテーマに?との質問に、「タイ社会ではよく知られている教育問題だけれど、今まで誰もこのテーマで映画を撮ろうとしなかった。だからこそ、この社会的な問題を完全なエンタメ作品として撮りたかったのです。」と述懐。また森ガキ監督は感想を求められ、「どこのシーンをとってもスタイリッシュな映像美が本当に素晴らしかった!またオリジナルの脚本に社会的な要素も取り込みつつ、ここまでエンタメ作品としておもしろく昇華されていることは本当にすごい。こんな作品を日本でも作りたい!と思って、ちょっと嫉妬しました。(笑)」と羨ましさを滲みませながらも大絶賛!
続けて「カンニングという1つのテーマで 2 時間ちょっとの時間、ハラハラドキドキさせっぱなしにさせる演出と脚本は素晴らしいし、登場する高校生たちがモブキャラ含めて全員、魅力的なキャラクターに仕上がっていた事にも感心した。“カンニング”という悪いことをしているのに憎めなくて、全員を愛おしく思ってしまうのも不思議な魅力。脚本にはどのくらいの時間をかけたんですか?」との問いかけにプーンピリヤ監督は、「脚本を考える人間は自分以外に 2 人いたので 3 人でケンカにケンカを重ねながら(笑)、1 年半かけて練り上げました。」と茶目っ気たっぷりに返答し、キャラクターに関しては「見ているうちに応援したくなって、ずっと見ていたいと思わせるキャラクターにするようにしました。」と当時を振り返った。またこれまでのタイ映画に対するイメージからは想像もつかないエンターテインメント作品となっていることから、プーンピリヤ監督がこれまでどんな映画に影響を受けてきたかに話が及ぶと、「子どもの頃住んでいた祖母の家がレンタルビデオ屋だったことから、ハリウッド作品をはじめとして色んなジャンルの映画をたくさん見てきた。その中で一番パワーをもらって心を動かされた作品が、マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』でした。こんな作品を撮れる映画監督になりたい!と子供の時から思っていたのです。」と語った。MC はこの回答を聞いて、「この『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』にもその影響はあると、やっぱりわかりますね!時間を感じさせない演出は同質のものと感じる。」と納得していた。またお二人の共通点でもある CM 演出と映画監督という 2 つのフィールドで活躍していることにも話が及ぶと、プーンピリヤ監督は「タイと日本の CM 界の状況はかなり似ていると思うが、タイのほうが少しラッキーなのかなと感じます。タイの CM は少し形式が長くて最大 10 分の作品が撮れるチャンスがあるから、新人監督にとってその経験が後の映画作りにも活かせる状況にあります。」と語った。
また上映後には、プーンピリヤ監督が再度登壇してティーチインが行われ、興奮冷めやらぬ観客からのたくさんの質問に真摯に受け答えた、熱い夜となった。