現在、新宿武蔵野館にて絶賛爆笑上映中のロック・モキュメンタリー『スパイナル・タップ』。6月16日より、新宿武蔵野館にて日本劇場初公開されると、公開を待ち望んでいたファンにより、たちまち劇場が埋め尽くされ、「バカバカしいのにリアリティがある!」「劇場で観れて嬉しい」と歓喜の声があがった本作は、あの名作『スタンド・バイ・ミー』(86)のロブ・ライナー監督が1984年に手がけた初監督作であり、モキュメンタリーというジャンルにおいては『食人族』(80)と共に草分け的存在として知られ、ロック映画というくくりにおいては映画史上に残る金字塔的作品。当時隆盛を極めていたハード・ロック/ヘヴィ・メタル文化や音楽を風刺し、あのスティングが50回鑑賞し、「リアル過ぎて泣いていいのか笑っていいのかわからなかった」と絶賛(!?)したことでも知られている。
このたび、新宿武蔵野館にて音楽家で弦楽器奏者の高田漣氏と、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKI氏によるトークショーを実施いたしました。

【日時】7 月 1 日(日)17:20~トークショー開始 ※本編上映後
【場所】新宿武蔵野館 (新宿区新宿 3-27-10 武蔵野ビル 3F)
【登壇者】高田漣 (音楽家)、NAOKI (LOVE PSYCHEDELICO)

偶然にも同い年のお2人。本作を最初に観たときの衝撃についてNAOKIさんは「15、6年前、GREAT3の高桑圭君がVHSを渡してくれたんだよね。バンドのミーティングをするときにも『スパイナル・タップ』を流しながらやるから、あれを観ながら真面目な話をしなくちゃいけないの。ミーティングの途中でボリューム11のシーンになったりすると”ちょっと待って!ここ観て!“って止められたりして(笑)」と話し、高田さんは「僕も10数年前。pupaをやっていたときに高橋幸宏さんとかが好きで。で、すぐにDVDを買って観てみたんだ」と振り返った。

バンドマンにとっては本当に身につまされる映画だという本作。高田さんが「全く脚色されてないような映画だよね。普通に楽屋からステージまでの道で迷ったりするもんね」というと、NAOKIさんは「そうそう。ステージに上がる前にメンバーで円陣を組むんだけど、舞台袖でやるとお客さんに聞こえちゃうからちょっと離れたところでやるの。でも、あんまりにも離れたところでやると、ステージに行くまでに冷めちゃったりさ…」と言い、二人で「あるある、だからライブ前に観ないほうがいいよね」と笑った。ステージセットの誤発注のシーンから、「ステージで実際に起きたアクシデント」について話が及ぶと、NAOKIさんが「絶対に名前は出せないある大物ミュージシャンの話だけど…」と切り出し、「ツアーも半分くらいまで差し掛かったところで、ある有名ミュージシャンが地方のリハが終わりそうなときに、ステージの緞帳を指さして”これ動くの?“って聞いたんだって。で、スタッフは”動くけど、もう幕を動かすリハーサルはできません“って止めたんだけど、その大物ミュージシャンは”10曲目が終わった時に幕を一旦下ろして、ほどよいタイミングでまた上げよう“って譲らなかったの。それで本番、10曲目が終わった後に実際に下ろして、1分くらいたってからまた上げたんだけど、思った以上に幕が上がるのがすっごく遅くて。そのツアーを何公演も観ているお客さんなんかザワザワしちゃって(笑)こういうの本当にあるんですよ!」と話すと、高田さんは「やっぱり音楽やる人ってどこか社会不適合者みたいなところあるから、変な演出すると失敗するんだよね」と自虐気味に笑った。劇中で、ライブ中にワイヤレスが関係のない音声を傍受してしまうシーンがあるのだが、それも「バンドマンあるある」のことなのだそう。高田さんは「例えば、外でやってるとアンプが無線を傍受しちゃったりね」と話すと、NAOKIさんは「スパイナル・タップのおかげかもしれないけど、今はちゃんとワイヤレスのチャンネルが何番を使えるか確認してやるよね。リハーサルやってて、イントロを弾こうと持ったら、まだ弾いてないのに『キル・ビル』のメロディーが流れてきて(笑)隣の部屋で布袋さんが練習してたってことがありました(笑)」と笑った。

昨日の30日に発売された公式Tシャツ第2弾の話に及ぶと、Tシャツの裏面に印刷されたスパイナル・タップのキャンセルされた公演も含めた全公演のラインナップを観て、「本当にキャンセルが多いよね~!4公演もキャンセルされてる!よくできてるよね~!」と2人とも大爆笑。

最後に、高田さんは「この映画って1984年に作られていいて、今見ているとこの時代にこうゆうバンドが本当にいたように見えるんだけど、実際はヴァン・ヘイレンがやっと出始めたくらいで、スパイナル・タップみたいなバンドは新しいんだよね。むしろ先取りしてる。だからすごい作り込まれているというか、ディテールまでこまかく作り込んでいるから、34年たっても笑えるんだと思う。何度見ても新しい発見があって本当に面白い作品です。ぜひ繰り返しみてほしい」と言い、NAOKIさんは「まさしくそう。30年たっても、こうやって新しいお客さんが観ても笑えるのは作り手が愛を持って作っているからだと思う。でも、若いミュージシャンは(ショックを受けちゃうこともあるので)観ない方がいいかもね(笑)」と冗談まじりに話した。