様々な“家族のかたち”を描き続けてきた是枝裕和監督が「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」と語る渾身作『万引き家族』が、6月8日(金)より329館334スクリーンにて全国公開いたしました。
第71回カンヌ国際映画祭【コンペティション部門】にて最高賞<パルムドール>を受賞!21年ぶりの快挙を成し遂げた本作は、公開後7日間で10億円突破という、2018年公開の実写邦画の中で最速の記録を叩き出し、14日(木)には来場者数が100万人を突破!さらに、20日(水)には、興収20億円を突破いたしました!

もはや現象化しているといっても過言ではない本作ですが、この度、6月21日(木)に是枝裕和監督登壇のティーチインイベントを実施いたしました。
外国人の方々からのたくさんのお問い合わせを受け、英語字幕版の上映が決定した本作。 当日は6月23日(土)より新宿バルト9にて上映開始となる前に、TOHOシネマズ 六本木で行われる英語字幕版上映回に是枝監督が登壇!是枝作品恒例のティーチインイベントですが、今回の観客は日本人の他に、日本在住の外国人の方たち!既に4回目の鑑賞だというコアファンから是枝作品を鑑賞したのは今作が初めてというビギナーファンまで来場し、様々な質問が飛び交いました。イベント最後には、本作で“家族”を演じた、リリー・フランキーさん、安藤サクラさん他6名と是枝監督のLINEグループの存在を明かし、その中でのやりとりについても明かすなどして、会場を盛り上げました、


<イベント内容>

外国人だけでなく、日本人含め会場いっぱいに詰めかけた観客たちの大きな拍手で迎えられ登場した是枝監督は、「デビュー作からこういったティーチインイベントを実施しています。楽しいから続けていて、本当は何回もやりたいんだけど、明日から上海で今週からフランスに行ってしまう為、今作ではこの一回限りになってしまいそうです。でもロングランヒットになると、夏にまたやれるんですけど(笑)」と挨拶。その後、観客たちとのティーインが始まりました。

Q,家族6人が、縁側で見えない花火を見上げるシーンがとても好きです。6人全員がフレーム内に収まっているのはあのシーンだけかと思ったのですが、その理由を教えてください。

全くないわけではないんだけど、6人全員をフレーム内に収めるのはあのシーンだけにしようと思っていました。でも、あのシーンは最初からあったわけではなくて、ロケハンでこの家を見つけたときに、ここからじゃ花火は見えないよね、という話をスタッフとしていて、面白いなと思って書き加えました。

Q,国内、海外の観客で反応の違いはありますか?また、“家族“とはなんだと考えますか?

反応の違いは、国内、海外共に違いは感じません。もっとドメスティックな、いわゆる日本的な作品であるといえる『誰も知らない』や『海よりもまだ深く』のときでも、何かしら齟齬はあるけど、軸は同じだと思っているので、国は関係なく、そういったものは越えられると確信をもってつくっています。
“家族”とは何かということについては、そういうことを知る為に映画をつくっているわけではないんです。そういった問いについては、登場人物が手探りで探しています。例えば、『そして父になる』では、家族を繋ぐのは血か時間かという二者択一を主人公に課しているけど、どちらが大切かということを示したいわけではありません。今回はむしろ、共に過ごす時間が終わったとき、記憶として残っているものが、“家族”というものなのかなと。離れても見えない形で“家族”という意味が浮き上がってくる。今回はそういう話にしたくて書きました。

Q,初めからストーリーは決めてつくっていますか?

つくっている過程で新たに作り上げていくストーリーというのが一番面白いと思っています。今回も最初に書いていたはなしとだいぶ違うんです。撮影中、(安藤)サクラさんから「リリーさん演じる治は“とうちゃん”と呼ばれることを切望しているけど、私が演じる信代はどう思っているんでしょうか?」と相談されたんですけど、そのときはその問いかけに対して、曖昧な返事をしていたんです。だけど、後から面白いと思って、そのシーンを付け加えたり、台詞を変えたりしました。キャストやスタッフは大変だと思うけど(笑)、そうやって映画をつくるのは楽しいし、それでいいシーンが撮れたときは幸せに感じます。

Q,役者のどういったところみて、配役を決めるのでしょうか?

普段はあまり別の作品をみて決めるということはほぼないんですが、今回、松岡さんだけは彼女の出演しているドラマや映画をみて、素晴らしい女優さんだと思ったので参加してもらいました。この場に来る前に、フランス映画祭に呼んでいただき、開会式で挨拶をさせていただいたんですけど、映画祭のフェスティバルミューズを務められている、女優の常盤貴子さんもその場にいらっしゃったんです。彼女の役割は、同じくミューズを務められている仏女優のナタリー・バイさんの挨拶を日本語で挨拶するというものだったんですが、通訳の方が、ナタリーさんの挨拶を訳してしまって、彼女の役目がなくなってしまったんですね(笑)。そのときに、とても美しい着物でビシっとキメた常盤さんが、大きな口を開けて大笑いしたんです。そういうとこをみると、こういう笑い方をする役を書いたりする。そういった、そのひと自身の何かが垣間見えたときに、書きたいという欲が出たりします。

夜遅くのイベントだった為、「多分、観終わった後に、カップ麺にコロッケを乗せて食べたいという方もいらっしゃると思うので、この辺で終わりにさせていただきます(笑)」といい、この場を名残惜しむ様子をみせた是枝監督は、終わりの挨拶として「またチャンスがあれば、こういったティーチインをやりたいと思っています。日本をしばらく離れますが、僕の新しいチャレンジがもうすぐ発表できるかと思いますので、是非ご期待ください」とコメント。
また、6月21日は佐々木みゆちゃんの誕生日ということで、監督と本作の家族6名のLINEグループでお祝いの言葉などが飛び交っていたそうで、是枝監督は「撮影が終わって、公開記念の舞台挨拶が終わると、この“家族”がバラバラになっちゃうのが寂しいね、と話していたんです。でも、チャンスがあればまた集まりたいと思いますし、離れていると寂しく感じたりするのは、本当の家族のようだなと思っていて。これからも、この関係をずっと続けたいなと思っています」と語りました。

以上。