『子どもが教えてくれたこと』 “病気と向き合う子どもの姿から人生を学んだ-” アンヌ監督、来日トークイベント
ジッフォーニ映画祭では作品賞を受賞し、フランスで23万人の動員を記録した感動のドキュメンタリー映画『子どもが教えてくれたこと』が、7月14日(土)よりシネスイッチ銀座他にて公開になります。
本作は、治療と闘いながらも今を懸命に生きる5人の子どもたちの日常を静かに見つめながら、今を生きること、愛することの素晴らしさを描いた奇跡のドキュメンタリー。
この度女性ジャーナリストとしても活躍するアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督が来日し、6月19日(火)に、青山学院アスタジオホールにて、NPO法人 子育て学協会・会長 山本直美さん、青山学院大学の学生とともにクロストークイベントを実施しました!本作製作を通して出会った子どもたちから学んだことなど、まさに生きるヒントともいえる興味深いトークイベントとなりました。
■日時:6月19日(火)
■会場:青山学院アスタジオホール(渋谷区神宮前 5-47 -11)
■登壇者:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン監督
山本直美さん(NPO法人 子育て学協会・会長)、青山学院大学4年 齋藤 友花さん
この日の先行試写会には、子育て中のお母さん世代から、年配の方々、さらには青学生や看護を学ぶ学生など、様々な世代が集まり、上映後の感動冷めやらない中トークイベントがスタート。
まず、本作を観た感想について、子育て学協会会長の山本さんは「この作品を観る前は、ただ泣かせて痛い思いをするだけの映画かなと思いながら見始めたのですが、まず映像がきれいで、最後まで目を覆うことなく向き合える映画だったなと。またあとからジワジワときいてくるんですね、大人が不安にむきあうときに、今を生きる子どもたちのこういった姿に勇気づけられる、と感じました」とコメント。それを受けてアンヌ監督は「誰も自分から好んで病気の子どもの病気の部分をみるために映画を観に行かないと思います。でもこうやって一度映画見てみると、彼らが自分の人生をちゃんと捉えて生きている、そんな姿に私たちは目を見開かせられるのではないでしょうか。お母さんや親の視点で見るだけでなく、自分が子どもだった頃、自分の中に残っている子供心をこの作品の中に見出していただければ。」と続けた。
またアンヌ監督自身が二人の娘さんを亡くした経験を持つが、この作品に込めた思いについては「私は元々ジャーナリストで、これが初監督作品です。ですが偶然に撮ったわけではありません。私の4人の子どものうち、残念なことに二人の娘が重大な病気で他界しました。私は作品をとおして病気の部分をフィーチャーする気は全くありませんでした。私は病気の娘と2歳くらいから10歳くらいまで共に過ごす中で、彼女たちの生き方、病気と向き合いながら生きていく姿をみながら、人生とはどういうものか、そして私自身どう生きていくべきか、どう人生を愛すべきかを彼女たちの姿から学んだんです」と力強く返答。
さらに山本さんからお子さんの病気を知った時、家族でどう乗り越えたのか、と聞かれると、アンヌ監督は「上の娘タイスが2歳の誕生日に病気を知った。途方にくれたが、どうしてこんなことが娘に起こったのか、ではなくHOW、どうやってこれを乗り越えようかと考えたんです。娘のこれからの行く道をどうやって伴走しようか、と。夫からは娘にすぐに真実に伝えるべきだとも言われ、病気を知った当日に娘と、お兄ちゃんである息子にもシンプルな言葉で伝えたのだけれど、私も家族もボロボロ号泣してしまっていたんですね。でも、その涙が枯れたころに、息子がこれからタイスの誕生日パーティをしようと言ったんです。私は初めNOといったのですが“ママ今日はタイスの誕生日なんだから!”と。その言葉をきいて子どもってなんて強いんだろうと思ったんですね。確かに試練は色々降りかかってくるし、その試練は選べないけれど、起きたときにそれをどういう風に乗り越えるか、は自分で選べるんですね。幸せになれる方法は選べるんだ、ということを子供たちに教わったんです」と素敵なエピソードを披露してくれた。
それを聞いた青学生の斎藤さんからは「映画をみて、生き方について考えさせられました。人生の意味を見いだせなくなるような辛いこと悲しいことに出会うこともありますが、そのような困難は人生にとってどんな意味があるのでしょうか、将来プラスになるのでしょうか」という質問が。それについてアンヌ監督は「試練に意味はないと思います。でも、それをどうするかってことだと思います」と断言。「試練が起きたときに、嫌だと思っても試練はすでにあるわけです。本作に登場するイマドは、辛い治療のことを“あなたには(治療は)大変だけど、僕にとっては大変じゃない、だってこれが僕の人生だもん“と話すんです。イマドは、他の人より自分が強いっていっているわけでなく、僕の人生の中でのことだから、僕は対処できるんだ、と。試練が訪れれば、それを受け入れて向き合おう、対処しようということを子どもは自然な形で受け止めるんだと思います。そして人間は思っている以上に力を持っているんですよ」という話には、質問した学生だけでなく、会場の観客の皆さんも大きく頷いていた。
最後に「皆さんに一つ質問があります。子どもにどうして真実を伝えないのでしょうか。この答えを今ここで答えるつもりはありません。どうして病気の子どもに真実を伝えることが怖いのか、どうぞ皆さんそれぞれ心の中で考えてほしい。何がそれを妨げるのか、皆さんに考えていただけたら、と思います」と観客に向け、深い問いを投げかけたアンヌ監督。監督ら登壇者のトークをメモに取る姿もあり、終始熱心に耳を傾けている様子が印象的なイベントとなりました。
【アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン(監督)】
1973年、フランス・パリ生まれ。大学でジャーナリズムを学び、新聞や専門誌などに幅広く執筆。自分の娘を病気で亡くした経験を持ち、病気が見つかってからの日々を綴った『濡れた砂の上の小さな足跡』(講談社刊)はフランスで35万部の大ベストセラーとなり、さらに世界20カ国で翻訳本が出版された。そして自らの経験をもとに、子どもたちの持つ力を見事に映し出した本作はフランスで大ヒットを記録、多くの人々の心を掴んだ。
【山本直美 (NPO法人 子育て学協会・会長)】
1967 年生まれ。日本女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。幼稚園教諭を経て、大手託児施設の立ち上げに参画。95 年に株式会社アイ・エス・シーを設立し、自らの教育理念実践の場として保護者と子どものための教室『リトルパルズ』を開設。08 年にはこれまで研究・実践してきた理論・プログラム普及のため、NPO 法人子育て学協会を設立、キッザニアのプログラム監修や子育て支援のプログラム提供などの実績がある。著書に『できるパパは子どもを伸ばす』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院)、『自走できる部下の育て方』(学研)など。
■監督・脚本:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン ■出演:アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアル 配給:ドマ
2016年/フランス/フランス語/カラー/80分/ヴィスタサイズ/DCP
日本語字幕:横井和子/字幕監修:内藤俊夫 原題:「Et Les Mistrals Gagnants」後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
厚生労働省社会保障審議会特別推薦児童福祉文化財/文部科学省特別選定(青年、成人、家庭向き)文部科学省選定(少年向き)
東京都推奨映画 公式HP:kodomo-oshiete.com (c) Incognita Films-TF1 Droits Audiovisuels
7月14日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開