5月25日(金)より全国の劇場201館で公開となり、“衝撃の問題作”として賛否を呼びながらも、各地で満席が出るなど、ヒットスタートをきった生田斗真&瑛太主演最新作『友罪』。この度、TOHOシネマズ新宿にて、本作のメガホンを取った瀬々敬久監督と、キャスト陣を代表して、瑛太演じる元少年A・鈴木に惹かれていく藤沢美代子役に挑んだ夏帆を迎え、ティーチイン形式での公開記念トークイベントを実施いたしました。

上映後の熱気冷めやらぬ中、多数のリピーター鑑賞者の集まる会場に、盛大な拍手に包まれ登壇した夏帆と瀬々。「隣にいる友人が、かつて世間を震撼させた事件の元少年Aだったら」という、難解なテーマを扱った本作に対して、「正直即決で決められた訳ではなかった」と少なからず出演への迷いがあったことを告白した夏帆であったが、瀬々組には以前から憧れを抱いていたようで、「以前、別の作品でご一緒したスタッフの方が、「今までで一番印象に残っているのが瀬々監督の現場だった」と話されていたのがすごく印象に残っていて。初めて瀬々組に参加させていただけるのがすごく楽しみでした」と、役への不安よりも興味が勝ったオファー当時の心境を吐露。現場での瀬々の熱意溢れる演出には沢山の刺激を受けたとし、「(瀬々監督は)誰よりも真直ぐに作品と向き合っていて、熱量がとにかくすごい。私たちもそんな瀬々監督に引っ張られ、瀬々監督のために映画を作りたいと思える現場でした」と述懐しました。

現場では、瀬々から常々「「限界を超えてくれ」と言われていた」と明かした夏帆。壮絶な過去に人生を振り回される美代子というキャラクターに対しては「演じていても、頭では理解できても、生理的に理解できなかった。美代子は、私の日常の延長線上で演じられる役柄ではないと思っていた」と語り、「もし恋人または惹かれている相手が、過去に大きな罪を犯していることを知ったら私自身はどういう選択をするのだろう、と撮影中もずっと考えていましたが、答えはまだ出ていません。理想では一緒に生きていきたいのですが、現実では沢山の障壁があるんだとも思いますし…。撮影が終わった時も、これで終わりかぁといった感じで(笑)。最後まで役柄を完璧に掴めてはいなかったと思います」と役作りへの苦しみを打ち明けました。

一方の瀬々は、「そんな偉そうな言い方してたっけ?(笑)パワハラにあたるのかな…」と苦笑いを浮かべながらも、「いや、瀬々監督は全然偉そうな感じで仰ってはなかったですよ!」とフォローする夏帆に対して、「(美代子を演じるのは)すごく大変だったかと思う。夏帆さんも本当に現場で悩みながら演じられているなと感じました」と労い、「ラストシーンでの、美代子の横顔は素晴らしくて印象的でした」と美代子を見事に演じきった夏帆へ称賛の言葉を贈りました。

イベントの中盤には、観客とのティーチインを実施。「単純な善悪では割り切れないほど登場人物に多面性があって、見るほどに深まっていく映画だった」と、今日が3回目の鑑賞だという男性から賛辞とともに「見ていて心が痛くなるような“被害者”を演じた夏帆さんはどんな心境で演じ切ったのか」との質問が及ぶと、夏帆は「演じていて正直本当にしんどかったです」と改めて告白。「自分の見たくない弱い部分を、見なければならない感じがして…、出口がなかった」と続けながらも、「でも、私自身がそうして悩んでいたことも、役のためになっていたのかなと完成した映画を観て感じました」と振り返りました。続く別の男性からも、「美代子は、夏帆さん以外の女優さんを想像しづらいほどだった」との感想が飛ぶと照れ笑いを浮かべる夏帆だったが、「瀬々監督は、もし次回夏帆さんを主役に映画を撮るならどんな役を演じてもらいたいか」との質問に「『ミスター・グッドバーを探して』(78)のような、“昼は女教師、夜は娼婦”みたいな役とか…」と瀬々が回答すると、「んー…」とさすがに苦笑い。これには瀬々も「まずい!」と焦り、「セクハラだとは思わないでください…!」と懇願し、場内には笑いが起きました。

また、別の男性からは「瑛太さん演じる鈴木に漂うリアリティがとにかくすごかった!」との感想が。主演の生田斗真や瑛太、そして瀬々組常連の佐藤浩市ら錚々たる俳優陣に囲まれた夏帆は、中でも共演シーンの多かった瑛太の演技について「私もすごく圧倒されました。瑛太さんの芝居を、受け止められるのかという怖さはずっと感じていましたね。今でも忘れられない鈴木の表情が沢山あって、本当にすごい役者さんだなと。」と絶賛。瀬々も「夏帆さんにとっても、瑛太さんが横にいたのが大きいと思う。あの独特な空気感で、いい化学反応になったと思います。」と二人を改めて絶賛しました。

最後に、瀬々は、「『友罪』は、僕らも答えを探しながら作った映画です」と前置きしながら、「生田さん演じる益田が鈴木を飲みに誘うシーンで、鈴木が少し嬉しそうに「コンビニでつまみでも買って」と言うシーンは、加害者が何気ない、でもかけがえのない時間を感じる、個人的にも好きなシーンです。こういう宝物のような時間が、犯罪者だった人の何かを解き放ったり、逆にかけがえのない時間を奪ってしまったと気付く、そういうこともあると思います。そして、そういったかけがえのない瞬間を与えられるのは、家族だったり友人なのかなと。僕自身、完成した映画を観て、新たに発見しました」と力強く解説。その上で「千差万別でも良いので、皆さんにもこの映画を通して、何かを感じ取っていただきたいです。」と訴えました。続く夏帆も、「正直、賛否はあるかと思いますが、もし観ていただいた方の心に何か引っかかるものがあれば、家族やお友達にも伝えていただいて、皆さんで話してもらえたら嬉しいです」と監督と共に、アピールしました。