300以上の多彩なものまねレパートリーで知られるエンターテイナーのコロッケが、本名の滝川広志として初主演を務める映画『ゆずりは』の完成披露試写会が6月4日(月)、東京・有楽町の朝日ホールにて開催。滝川に加えて、共演の柾木玲弥、加門幾生監督が上映前の舞台挨拶に登壇した。滝川にとって、長年の盟友である美川憲一より、完全サプライズでビデオメッセージも到着するなど、会場は大きな盛り上がりを見せた。

拍手で迎えられた滝川は、司会者から冒頭いきなり「武田鉄矢さん、映画初主演はいかがでしたか?」と振られて、さっそく武田鉄矢のものまねで会場を笑いに包む。それでも、その後は壇上でも“コロッケ”を封印。俳優・滝川広志として「38年間、騒ぐことが好きだった人間が、動くのを全くやめて、ちゃんとした役を初めてやらせていただいてます。役者・滝川広志としてのスタートを切れたんじゃないかと思います」と晴れ晴れとした表情で語った。

加門監督は滝川に、真面目な葬儀社の社員・水島を演じるにあたって撮影前に3つのお願いをしたと述懐。「ひとつは、トレードマークのもみあげを短くして、普通のサラリーマンに見せること。ふたつ目はトレードマークの黒縁のメガネを外すこと。三つ目はやせること。死者に真摯に向き合うということで、7キロやせていただきました。また、千葉県の八千代市が舞台ですが、我々は毎日、撮影が終わると東京に帰っていましたけど、滝川さんはビジネスホテルに泊まり込んで、八千代市の住民になり、近所のイオンとかにも行くことで、水島という役を作り上げていっていました」と滝川の役になり切ろうとする姿勢に称賛を贈った。

滝川は、ダイエットからおふざけ一切なしの撮影までを振り返り「ストレスがたまりました」と苦笑交じりに述懐。「もみあげは切ればいいし、メガネは取ればいいけど、やせるのは…。僕はストレスがたまると食べるけど、食べちゃいけないので、余計にストレスたまるし(苦笑)、撮影が始まったら、(演技で)動いちゃいけなくて、余計にストレスが…。とにかく我慢して、夜は食べずに普段の3分の1くらいの量であめをなめたりして、苦しかったです」と明かした。

葬儀社の新入社員・高梨を演じた柾木さんは、この日、いよいよ映画お披露目のときを迎え「やっとこの日が来たと思うと緊張してたまりません」とやや硬い表情。それでも、滝川の冒頭のものまねを目の当たりにし「和らぎました(笑)」とホッとした様子を見せる。その後も、滝川が「好きな食べ物は?」「好きな女性のタイプは?」など、緊張をほぐそうと質問攻めにし、柾木さんもこれに「ラーメンです」「静かな人です」などと回答するうちにリラックスしてきたよう。映画の中とはまた違った2人のやり取りを会場は温かく見守っていた。

また、映画にちなんで、ゆずりはのように、誰かの思いや言葉を受け継いで、生きてきた経験やエピソードを問われると、加門監督は、この映画の準備期間中に、立て続けに両親が天国に旅立ったことを明かし「母からは最後の言葉を聞くことはできなかったんですが、父からは最後の言葉が聞けて、『お前らしく生きろ』と言われました。自分はこの映画をやるべき運命だったんだと思い、真摯に自分らしく作ろうと向き合って来ました。魂を込めて作りました」と言葉に力をこめる。

柾木は、新人時代に、先輩の俳優2人が、柾木の芝居の間が毎回、違うことの是非を巡ってケンカになってしまったというエピソードを明かし、そのとき、一方の先輩俳優が口にした「芝居は生なんだから、間なんて毎回違うもの」という言葉を明かし「その言葉を糧にずっと頑張ってきました」と語った。

そして、滝川はゆずり受けてきたものとして母親が残してくれたという「“あおいくま”――あせるな、怒るな、威張るな、腐るな、負けるな」という言葉を紹介。「何かあったとき、いつもこの言葉を心の中で唱えています。最初は、この言葉を他人に対して思っていたんですが、相手ではなく自分に対してのものなんだと思うようになって、いろんなことが大きく変わりました。この言葉を糧に頑張って生きてきて、こうやっていい役をいただけたんだと思います」としみじみと語った。

この日は、作品の舞台となった八千代市の服部友則市長も来場し、バラの花束を滝川にプレゼント。さらに、滝川には完全サプライズで、美川憲一さんからビデオメッセージも上映。美川さんは「よかったわねぇ。しっかりと努力してきたコロッケが主演。本当におめでとう」と温かい祝福の言葉を投げかけ、これには滝川は「ビックリです! ありがたいです。いろんな方に支えていただいて…」と感激しきり。「さっそく今日の夜、(お礼の)電話を入れようと思います」と満面の笑みを浮かべた。

また、舞台挨拶後の報道陣を前にしての囲み取材では、舞台上での「真面目に挨拶しなくては」という重圧から解放されたかのように、“エンターテイナー”コロッケに戻って、美川憲一、志村けん、田中邦衛などのものまねを交えつつ、映画をPR。

また今後、俳優として希望する役柄を問われ「コロッケとは真逆がいい。邪魔にならない芝居をできるようになりたいし、それができるようになったら、主演ではなくとも何でもやらせていただきたいです」と強い意欲をのぞかせていた。

『ゆずりは』は。6月16日(土)より新宿K’s Cinema、 イオンシネマ板橋ほか全国順次ロードショー。